◆感想3

 私はここでいささか動揺した。実在の新聞記事のスクラップが、資料の中に入り込んでいたためである。

 

 新聞名と日付、および「川田卓治」の名前で検索すると、同新聞社の運営するネットニュースサイトがヒットした。記事と同じ内容が記載されており、これ以降の続報はないようだ。

 

 この事件が実在したことに動揺して――はたと気づいた。おそらく、これらの資料の作者はこの新聞記事を先に見て、そこから音声データのシナリオを思いついたのであろう。

 

 火災の死亡事故と、不審な訪問者。そのキーワードから発想を膨らませ、夜中に訪れるセールスマンという筋書きを作ったのだろう。

 

 悪趣味極まりないが、これまでの内容からして今更だ。トリックがわかってしまえばなんてことはない。――ほっと胸を撫で下ろした。


 ――ただひとつ、不可解な点がある。

 音声データの保存日付だが、新聞記事に記載のある火災発生の日になっている。火災の日時はネットニュースにも掲載されているのでこれには間違いはないはずだ。

 

 日付に間違いがないのであれば、新聞記事を読んでからシナリオを作り、音声を録音した――という私の仮説は成り立たない。

 

 とはいえ、データの作成日を修正するなんて、パソコンに詳しい人であれば簡単にできることだろう。私は詳しくないのでわからないのだが。


 できるはずだ。


 できますよね?

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