第6話
それから2年後のある朝、すずさんの家のダイニングテーブルには、湯気を立てたハムエッグにサラダとヨーグルト、こんがりと焼き上がったトーストにマグカップに注がれたミルクが並んでいた。
「ほら、パパ。いつまでご飯を食べているの? 早く切り上げて支度をしないと遅れちゃうよ!」
すずさんは大忙しだった。元同僚だったパパは今、すっかりとすずさんの尻に敷かれている。すずさんにうながされ、慌ててトーストにかぶりついた。
自分の分の朝食を食べ終えたすずさんは、使った食器をじゃぶじゃぶとシンクで洗い、生後1カ月を迎えたももちゃんを抱っこした。
「ももちゃん、今日はこの家に生まれて初めての外出ですよ。近所の神社に行って健やかに成長していけるようにお祈りしてきましょうね」
そんなすずさんの様子をやまちゃんはじっと見つめていた。その様子に気づいたすずさんは、やまちゃんに話しかけた。
「やまちゃんも一緒に行くよ。電源を切ってバッグに入ろうね」
「どこに行くの?」
「近所の神社よ。ももちゃんとやまちゃんが元気に育ちますようにってお祈りするの」
「やまちゃんはいつも元気だよ」
「そうだね」
すずさんはももちゃんを抱っこしながら、やまちゃんの頭をやさしくなでた。
「でも、やまちゃんはももちゃんのお兄さんになるから、もっともっと元気になってほしいな」
「やまちゃん、頑張るよ!」
そう言うと、やまちゃんはにこりと笑った。
「じゃあ、またあとでね」
そう言うとすずさんは、やまちゃんの鼻を押して電源を切り、専用のバッグにやまちゃんを入れた。
「さあ、出かけるわよ! パパ、もたもたしない!」
やまちゃんのバッグを背中に担ぎ、ももちゃんを抱っこひもで胸に抱えたすずさんは、パパを急き立てるようにして外へ出て行った。
パタンと玄関の扉が閉まった。しんとなった部屋の中、どこかでやまちゃんのウヒャヒャと楽しそうな笑い声が響いた。
そして、家族の新しい一日が始まった。
ロボットやまちゃんと一日の終わり @yamato_b
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