第2話 プロローグ②
「もう知らねーや」
俺は、雪に埋まり身動きが取れなくなっている女を横目に街中へ買出しに向かった。
回復魔法を使えるぐらいの女だ。雪を溶かして出てくるなんて、造作も無いだろ。
「さてと……」
一息つき、さっと買出しの品を思い出す。
ポムと呼ばれる赤い拳サイズの果実・ドポールと言われる4足歩行で牙のある動物の赤身肉・レと言う動物の乳・ブロッコリと言う花の蕾が集まった野菜。後は、木材ぐらいか。
街中は活気があるとまでは行かないが、人々によって雪が踏み固められ歩きやすくなっている。
エルフといえど、顔の形は少し耳が尖っている意外は人間と殆ど変わりがない。フードを被っている今の状態では見分け等つかないだろう。
ひっそりと暮らしている俺にとっては、フードが被れるというのは目立たず暮らすための必需品なのだ。
最初は人間と沢山関わっていた。しかし、大抵の生物が自分より先に死んでしまう。沢山、泣いた。親しくしていた友人達が次々と老いて死んでいったり、俺の事を忘れてしまう。
俺は、段々と人間と関わらないようになっていった。ただ、親しく話しかけられたら話すし、人間が嫌いって訳でもない。
小一時間程、買い物を行い帰路についた。
「よかった」
女が埋まっていた辺りに差し掛かったところ、女の姿は無く、子供が作ったような雪だるまがその場所にできていた。要素通り、魔法で雪を溶かしたのだろう。
「ん゙……ん゙……」
「……」
ホラー映画に出てくるような女の声が微かに聞こえた……気がした。
「気の……せいだよな……」
「だ……ず……げ……でぇ……」
雪だるまに近づき耳を澄ますと助けを求める声が聞こえた。
「ショッフェ」
雪を溶かすと中から女が出てきた。
「お前……何やってんの?」
「え゙ぇ゙ーーーーーん゙。ありがどぉーー」
余程、心細かったのだろう……女は、顔の全体を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら抱きついてきた。でけ……厚着だが確かに感じる胸の感触に頬を赤くしながら女を引き離した。
「とっ……とりあえず落ち着け!何があった?」
温かいお湯の塊を2つ、維持し手を温めるように促し聞いた。どうやら、雪に顔が埋まったせいで声を発する事ができず、脱出できなかったらしい。その後、面白半分で子供に雪で肉付けされ雪だるまとなったらしい……
息は?小一時間もどうやって生き延びた??
えーっと……
考えると怖いから、細かい事は気にしないことにしよっと……
数分後、女は落ち着きを取り戻した。
「2度も、助けて下さって本当にありがとうございます。お詫びに、何かさせて下さい!ついでに何か御飯を恵んで下さい!!」
「はぁ……」
開き直りやがった!!しかも、このまま見捨てるなんてできないだろうみたいな状況で……
「なんか腹立つし、ヤダ……」
「なんでよー!この人でなし!!」
「だって、俺……人じゃねぇし!」
「あぁ……もう、うるせぇ男だな」
その1秒後に俺は宙へ投げ飛ばされていた。
その後、また俺は、街中へ戻り食材を買わされる羽目に……
そして、この後この女は図々しく……居候になる。
「食費が……やべぇ……」
ここから、エルフの俺と玲瓏な女との奇譚が幕開けていく。
雪月花のグラス 玲瓏な華との奇譚 水無月さつき @Satsuki0531
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