繋がる過去と過ぎ去りし思い出
第40話 天才ピッチャーとの出会い
☘上杉 side
彼女を始めて見た時に、胸が高鳴った・・全身の血液が逆流してる様な感覚・・首筋がザワザワする感覚・・どれも初めてだった
彼女の名前は瀬川 愛 ボブカットが可愛らしい元気な美少女だった、彼女は今年入部してきた織田 信一の幼馴染だと言う
始めて女性に恋を覚えたが、愛君の横には常に信一が居た二人の空間は独特だ・・決して切れない絆がそこには有った
俺は惨めな敗北者になるつもりは無いので、この想いを胸に仕舞い込んで気持ちを振り払うかの様に野球に没頭する
しかし、ここでも信一が邪魔をしてくる・・・監督が俺と信一を含め5人の投手のピッチングを細かく確認する
「誠也ぁ!30球全力で投げ込めぇ!」「はい!!」【パシュ、パシュ、パン】持ち球の変化球を含め全球種投げ込み小気味のいいミットの音がグラウンドに響く
「おし、次・・・奥村ぁ全力で30球いけ!!」「おっす!」他の3人のピッチャーも次次投げ込む
「よし、最後に新人の織田ぁ全力で30球投げ込め!!」「あ、あのぉ~監督・・俺全力で投げると誰もキャッチできないんですけど・・・」
するとキャッチャーをしていた3年の先輩が明らかに不機嫌そうに信一に近づき
「おい!1年が舐めてんじゃねぇ~ぞ!ゴタゴタ言う前にとっとと投げろや!」
信一はちらっと監督にアイコンタクトを送るが首をクイっと動かし早く投げろを急かしている
ゆったりした動きでミットとボールを握る手を頭の上に伸ばす、所謂ワインドアップというやつだ・・・そのまま足を蹴り上げ上体を後ろに捻る織田の目線は鋭くキャチャーミットを睨み付ける
そして一気に蹴り上げた左足を前にスライドさせると同時に体重も移動する・・・【ブンッ】そんな風の音が聞こえるかの様な鋭い腕の振りから放たれたボールはシュッと風の音だけ残して俺達の視界から消えた
【カシャッン~】
ミットを構えていたはずの先輩は情けなく倒れ込み恐怖でメットの奥の目が泳いでる、織田の投じた球はキャチャー後方のネットに挟まっていた
「あ、あのぉ~大丈夫ですか?」
心配そうにキャッチャーに駆け寄る織田・・・
「織田ぁぁ何してる!まずは変化球からって言っただろうがぁぁイキなりストレート投げる奴がいるか!!!」
監督の怒号が聞こえる・・・いや・中学生のしかも1年の投げる球じゃない・・去年まで小学生だった奴だぞ・・
「すいません・・・今のはシュートです・・・遅い方の・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
監督は織田を呼び寄せる
「織田・・ちなみにお前の球種を教えてくれ・・・」
俺はグラブを外すと両手で何やら数えだした・・・
「あれと・・あれも・・えっと・・8・・9ですかね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「シュート・・高速シュート・・スライダー・・カーブ・・・縦スライダー・・・フォーク・・スプリット・・チェンジアップ・・あとストレートです!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
監督は3年の先輩達を集めて何やら話を始めた
「上杉先輩!待ってる間少し受けてくれませんか?」
ちらっと監督と先輩達を見るが何やら話が長くなりそうだ・・・「まぁ話が終わるまでな」そう言うとキャッチャー用のミットとメットを付けてホームベース後ろに構える
「では!先輩シュートから行きますーー」
織田のオーソドックスなフォームから投じられたストレートと見間違う程のスピードだがその球はベースの少し手前で鋭く小さく左側に曲がる
【バシッ】
俺は何とか反応して捕球する事が出来た
「おおおおおっ先輩スゲー初見で俺の球捕れる人久しぶりに出会った!!」
「次から全力で投げますね!高速シュート行きます!!」
今度は明らかに早さが違う!?あいつ!ストレートを投げ・・・しかし先ほどと同じ場所でさらに小さく左に曲がる
【バシッ】
「次・・・」「次ぃ」織田の投げる球は全部本物だ・・すべてが一流でウイニングショットと呼べるモノだ・・・
「最後渾身のストレート行きます―――!」
正に火の吹きそうな球だった・・低めから少し浮きあがってくる様な速さと威力・・【バシィィィ】受けた手が痺れる・・・
「上杉先輩マジ凄いっす!!俺の持ち球初見で全部捕れた人初めてです!!」
「あ、ああ・・・」
コイツは本物だ・・・俺達とは次元が違う・・この時既に信一と投手の恪の違いを感じ目の前で俺に向け目を輝かしている信一に対し敗北を自覚していた
結局その後も信一の球種を全球種捕球できる上級生は居なかった、信一は練習試合でも中々登板できず肩を落として落ち込んでいた・・そんなある日の部活終わりで俺は監督に呼ばれた
「上杉・・・・お前キャッチャーをしてみないか?」
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