第26話 元カレの親友
♡愛side
帰りの廊下を一人で歩いていると、信一と一緒に居た時に感じた憧憬の視線では無く、興味と憶測で私と信一の事をあれこれ詮索する様な内容のヒソヒソ話が聞こえてくる
私はなるべく平常心を装って挨拶をくれる人には笑顔で返し、居心地の悪かった廊下を抜け、下駄箱で靴を履き替えてると
「お、愛ちゃん、今帰り?」
振り返るとサッカーのユニフォームに着替えた武田君が立っていて「よっ」と軽い挨拶とウインクをしてきた
「ええ、武田君は今から部活?」
「そそ、大会も近いからね~1年の連中もレギュラー取りに必死だし、いい意味でチーム内は競争だよ」
そう爽やかな笑顔で話す武田君は本当にサッカーが好きな様だ
「良い事ね、武田君も練習頑張ってね」
そう言い靴を履き替えたので帰ろうと、下駄箱の扉を閉めようとしたとき
「あ、ちょっと待って!」下駄箱の扉は武田君の手によって止められた
「え?どうしたの?私に何か用事?」
振り返り武田君の顔を見ると、いつに無く真剣でどかか緊張してる様子だった
「そ、その部活まで少し時間あるから愛ちゃんと少し話したいと思って・・・」
武田君は信一の親友で、前は何度か一緒に遊んだこともあるから知人と言えば知人だが
「え、えええ、武田君が私に話とか珍しいね、それで何なの?」
「あ、ここじゃ何だから校庭のベンチで話さないか?」
何時もと様子の違う武田君に少し違和感を感じたので
「ここじゃダメなの?ゴメン悪いけど私帰ってから用事があるから・・・」
これは本当だ、今日はエターナル キングダムに2日ぶりにログインしてノブ―に彼氏と別れた事を報告するつもりだった
「そっか・・・実は朝に俺、信一から話を聞いてて・・・その気になって」
そうだよね・・信一の一番の友人と言えば武田君だもんね・・
「わかった・・・あまり時間は取れないけど話聞くわ・・」
「で、武田君の話って?」
ここは校庭の隅の花壇の周りにあるベンチだ、天気の良い日は、お昼をここで食べる生徒が多数いるが今は放課後で私達以外に誰も居ない
横を見ると、武田君はベンチに腰掛け前かがみになり自分の膝に肘をついた状態で何やら考え込んでいた
「武田君?話無いなら私帰るけど?」
「・・・・・」
「なんか言いにくそうだから・・・また時間有る時に話聞くね・・それじゃ部活頑張ってね」
そう言いスカートを払いながらカバンを手に立ち上がろうとした時
「待ってくれ!」
武田君に腕を掴まれた
「え?ちょっと・・離してよ!?」
「良いから俺の話しを聞いてくれ・・・」
武田君はそう言いながらも此方を見ようとしない、私は仕方なくもう一度ベンチに座り直すと、武田君も腕を離してくれた
「愛ちゃん、俺信一から愛ちゃんと別れたって聞いた・・・間違いないか?」
「ええ、昨日放課後に二人で話して恋人関係を解消して幼馴染に戻る事にしたの」
相変わらず前かがみで何やら難しい顔をしてる武田君の様子に疑問を感じながらそう答える
「愛ちゃんはもう信一の事好きじゃないのか?」
「そんな訳ないでしょ?今でも信一の事は大好きよ?」
「じゃ、なんで別れた?」
「人に言っても判って貰えないでしょうけど、私達って幼馴染と恋人の境目が無かったの・・だったら恋人って枠で付き合うより幼馴染って関係の方がお互いに楽だって思っただけよ」
「信一に好きな人が出来て君との距離を取るような事になっても?」
「前にも他の人に同じような事聞かれたけど、例えそうなっても幼馴染という関係は変わらないでしょ?」
「君はどうなんだ?」
突然の愛ちゃんから君呼びに、違和感を感じた
「私?どういう意味?」
「君に好きな人が出来ても、信一と変わらず幼馴染として関係を維持できるのか?」
あまり深く考えて無かった・・確かに信一と別れた時に好きな人が出来たからとは言ったがその時は、応援してくれると言ってくれた
でも、本当にノブ―と付き合う事になったら・・信一とはどうなるんだろう?バレンタイン、ゴールデンウイーク、夏休み、祭り、クリスマス、正月・・・優先順位は信一では無くなる・・
「君たち二人があまりに完璧なカップルだったから、あの上杉先輩も、美空先輩ですら君たちの間に割って入る事は出来なかった」
「それは・・周りがそう勝手に祭り上げただけで・・・」
「でも、今信一と君との間に、大きな溝が出来た・・・この機会を見逃す者は居ない・・・・俺も・・」
「え?」
武田君はそう言うと急にベンチから立ち上がり私に向かって手を差し出す
「愛ちゃん、君の事が好きだ・・・だから俺の彼女になってほしい」
、
高校生になって初めて告白された相手は、元彼氏で幼馴染の親友からだった・・・・
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