第7話 信一と市江 兄妹朝の一幕

♠信一side



「お―――――い!おに~ぃぃ起きろぉぉぉ」


朝から布団を剝ぎ取られ、乱暴に起こされる・・・・


「ああぁん・・市江・・・もっと普通に起こせないのかぁ?」


織田 市江(いちえ)大和高等学校 1年 水泳部に所属する俺の一つ下の妹だ身長は1年にしては結構あると思う確か160cmだったか・・茶色がかった少し癖っ毛のショートヘアーで、切れ長の大きな瞳で顔立ちが俺と良く似てると言われる

しかしスタイルはスレンダーというか殆ど膨らみが無い・・・男勝りの性格だが男女問わず人気で愛の妹の優と二人、1年の美姫と美王子と呼ばれてるらしい

王子と呼ばれるのはコイツが男性から言い寄られる数の3倍近く女性にも告白されてるかららしい・・


「おまえなぁ・・・優ならもっと女の子らしく優しく起こしてくれるぞ・・・そんなんだから・・」


「はぁぁ?何でここで優なわけぇ?引き合いに出すなら、ここは恋人の愛姉じゃないの?・・・おにぃまさか・・・」


「はいはい・・お前の妄想には付き合ってられない・・着替えるから部屋から出てってくれ・・・」


「ちっ!起こしにきてやったのに・・・礼もないしかよ・・・」


俺は部屋で着替えをしていると・・・・


「おい・・・俺の妹は実の兄の裸を盗撮するのを趣味の日課にしてるのか?」


部屋の入り口を見ると僅かな隙間でスマホのカメラを構える市江の姿があった・・・


「にひひぃ、お兄の裸の写真クラスで欲しがる女子が多いんだよねぇ♪」


どうやら俺の妹は実の兄の裸の写真を友人にバラまき僅かな小遣い稼ぎをしてる様だ・・


「あ、ちなみに一番のお得意様は優だよぉ~♪」


「はぁ―――全く・・・お前、何時か捕まるぞ?」


今度こそ部屋のドアを閉めて着替えを済ますとリビングに降りテーブルに座る


「父さん母さん、お早う」


「おはよう」「おはよう信一、ここ最近、市江に起こされてばかりね」


「・・・・・・・・」市江は目を瞑り澄ました様子でご飯をかき込んでいた(朝から盗撮された身になって欲しいもんだ・・)


「そうはそうと・・信一、もう野球はしないのか?」


(またその話か・・俺の野球は中学の時に終わったんだ・・今更・・・もう二度と野球はしないと誓ったんだ・・)


「ああ、もう野球熱は中学で燃え尽きたよ・・・」


「そうか・・・お前の人生だ後悔の無いようにな・・」


「ああ、有難う父さん」


それから他愛もない話をしながら朝食を採り終わり


「行ってきまーす」「行ってらっしゃーい」


父さんは仕事で俺より早く出社する、市江は優を迎えにいく為、すこし先に家を出る


家を出て瀬川家の前を通ると、玄関に愛が立っていた


「おはよう、愛、珍しいな?誰か待ってるのか?」


すると、あまり表情を崩さず此方を見ると


「おはよう信一、たまには信一と一緒に行こうを思ってね・・」


「そうか・・まぁ偶には良いんじゃないか?」


どういう心境の変化なのかいつもは、俺より先に学校に行って図書館で借りた本を読んでる愛が、何故か今日に限り俺を待ってる


しかし登校してても会話が続かない


「今日は晴れみたいだな」


「そうね・・」


「きのうの宿題終わったの?」


「ああ・」


「「・・・・・・」」


苦痛とは言わないが、お互いを知りすぎているのか相手の興味を持ちそうな話題が思いつかない


俺は何時も通り空を見上げ、愛はスマホを弄りだした


「おはようーー信一ぃ」こいつはサッカー部の武田 勝(たけだ まさる)イケメンな上2年でエースストライカーという事で良くモテる


「おはよう、勝」「おはよう 武田君」


勝は俺達を交互に見ると「はぁ~恋愛が充実してる奴は羨ましいぜぇ」そういうと頭を抱えてイヤイヤのポーズをした


「勝は凄くモテるじゃないか、俺なんか全然だぞ?」


「おい信一・・・一回殴らせろ!!」


勝は俺の脇をコツコツと加減して殴る「信一・・私先にいくね・・武田君もまたね・・」


校舎に入ってく愛の背中を眺めてると、急に勝に肩を組まれた


「ギャハハ、つれない態度っ ついに信一も捨てられるのかぁぁ・・アーメン・・」


勝手に捨てられる話になってしまったが・・・・確かにここ暫く愛の家にも遊びに行ってないしな・・たまには遊びに寄るか・・


俺はクラスの自分の席に着くと、スマホのゲームツールアプリでフレンド欄を開く


(ラブは・・・まぁ居ないか・・当然だよな高校生って言ってたしな・・)


『ラブ、今日はログイン出来る時間が分からないので家に着いたら連絡します』


そうゲーム内の奥さんにメッセージを入れると直ぐに返事が返ってきた


『了解!ノブ―今日もレアモン頑張ろうね♡』


スマホの返事の画面を見ながら少しほっこりする、無事授業を終えると愛がいつも通り迎えにきてくれた


「愛、お待たせ・・・帰ろうか」


「ええ帰りましょう」


相変わらず俺達を遠目に見ながら、色々なネタにして盛り上がる生徒達「また明日ね」「またな」「有難う、お疲れ様」「また明日です」


反射的に愛と挨拶を返して行くが校門から出ると、途端に笑顔が消えお互いに無表情になる


「「・・・・・・」」


そして変わらずの会話の無い無言の帰路、瀬川家の前の十字路で愛がスマホを見ながら声を掛ける


「今日は?どうする?」




「ああ、それじゃ今日はお邪魔しようかな・・・」


「あっそ、それじゃまた明日・・・・え?」


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