第32話 スキルってしゅごい 後編
「はぁぁぁっ!」
レイアの両手がぼやっと光り、深い傷は……。
「お、おい!手をどかせ手を!くっついたらどうすんだ!」
シェリスの指がグチグチと傷口を弄っていた。
もう、それは……キモさ満点で……うぇっ。
「ダメだぞシェリス。おふざけはここまでだ」
レイアのお叱りが飛び、シェリスもようやく諦めてくれた。
そして、ナイフで刺された傷は見事に回復した。
ピチャビチャ――。
「アドミラたん、アドミラたん。はあ、はあ」
「シェリス……まだ混乱しているのだな。大丈夫だ、傷は治ったぞ」
「アドミラたぁん♡もっと下の方に深いあ――」
終わってるわコイツら。
そして、俺も終わっている。
どうしてだろう。
神への祈りが止められないんだ。
チラリ――。
「フフフ」
はうっ、マズイ。
ドSクソ悪魔が俺を見やがった。
マズイマズイ、一生いじられる!
いや、いじってほしいけど……違う!
精神的に弄ばれ、一生奴隷として飼い慣らされてしまうっ!
収まれ息子よっ!
あれは幻だ!お前は混乱してて、幻を見てしまったのだ。
ペロペロと指を舐るゆりシーンなど、見てはいないのだ!
「ジュン……くっ、仲間のために祈ってくれるのか。
自分の傷も癒えぬうちに」
「……あ、ああ」
「お前の傷もヒドイ。私が治してやろう」
「あ、あざっす」
ボヤーッ。
「さあ、盗賊を回収して騎士に引き渡そう」
「フフフ。ジュンさんは動けないのではぁ?」
「ん?どうして……ああ、ジュン!もう大丈夫なんだ、シェリスは治ったぞ。
見てみろ、物欲しそうにアドミラの指を見つめているが、アレはじきに治る。今に見てろ、私のお尻をなで回すぞハハハハ」
ああ、どうしよう。
いよいよ言い逃れできなくなってきた。
もう二日だ。
もう二日もお預けを食らって、息子も怒ってるんだ。
そうだよな、ああ分かってる。
お前の怒りは分かるけど、俺にもプライドってもんがあるんだ。
頼む魔除け!
ババア来いッ!
……。
「ジュン?一体どうした、何が心配……はっ!?」
ヤバい、気づかれたか?
レイアは俺の耳元に顔を近づけた。
「もしかして、暗器の影響か?」
暗器……そうだ暗器だ!
うさ耳とドSの目を欺くことは不可能。
奴ら半笑いで俺を見てやがる。
だがしかし!
まだレイアは、せめてレイアだけには隠さねばならん!
それが俺のプライドだ!
「くっ、暴れている。俺の命に背いている……ぐぁっ」
「だ、だだ大丈夫、二人には隠しておいたほうがいいんだな、あ、えーと、どどうしたらいい?私に何ができる?」
俺のズボンを下げてもらってそしてたら突起があるんでそれを手で包んでもらっいいですかそしたらいい感じで動かしてもらって程よい頃にしぼんできますんで……なんて言えねえよ!
なんて純粋な奴、なんて仲間思いの奴なんだ。
罪悪感で心臓が潰れてしまいそうだ!
すまないレイア、本当にすまない。
嘘つきな俺を許しておくれ。
そして俺よ、俺の息子よ!
いざゆかん。
未知の世界へ。
「荷車だ、荷車をここへ!」
「え、荷車!?ど、どうして」
「早くするのだ!マズイ、ぐはっ、体が……」
「わ、分かった」
恐れ。それは未知に対する感情だ。
人が死を恐れる理由は、未知であるから。
初めては恐いものだ。
だが生きとし生ける全ての生物は、恐れを克服せねばなるまい。
生きるとは、未知の連続。
明日には何が起きるのか、明後日は明明後日は。
いや、数秒後には何が起きるのか分からない。
未知の中をひた歩く
今すぐに!
ガラガラ――。
「持ってきたぞ。それで?何に使うんだ」
「荷を俺の前へ」
「あ、ああ」
レイアは、緊張した面持ちで俺の指示に従ってくれた。
ぎゅうぎゅうに押し込まれた、ミキとガチムチのおっさん。
一切、シモの世話をしていないから、それはもうヒドイ臭いがする。
さあ、参ろう。
未知へ。
そうして俺は、荷台へと顔を突っ込んだ。
「……ッ!?ジュン!なにを」
「うごぉぉぉぉぇぇぇぇ、うぉええ、ゔゔぉ」
「ジュュュュゥゥゥンッ!」
冷静さを取り戻したのは言うまでもないだろう。
地獄おつまみセットみたいな香りは、今なお取れない。
風下へ顔を向けようが、息を止めようが、何をしようが。
「ぇぅぉおおおえ」
ハハハハ、胃の中身なんてとっくにないぜ!
「臭いぴょん」
「肥溜めのニオイがしますねぇ」
「ジュン……二人共、それ以上言ってやるな!ジュンには、その、色々とあるんだ!」
ありがとうレイア!ありがとう!
お前は、本当に……いい奴だ。
「色々とねぇ。フフフ」
「キッショ。コイツ勃起してたぴょん」
「ぼ、なんだって?シェリス、ぼっきってなんだ、詳しく教えて――」
「止めい!おぇぇぇ、はあ、早く、盗賊を連れて次の町へぇぇぇぇえ゛」
もういい、奴ら二人にバレたけどもういいんだ。
俺には、最強の味方がいる。
レイアという最強の味方がな。
「よいじょぉぉぇ、お、お前らも手伝゛え」
臭え、マジで臭え。
荷車見るだけで吐き気がするわ。
重たい盗賊たちを引きずって、どんどん荷車に積み込んでいく。
下敷きになるミキとガチムチは、本当に気の毒だが、もう知らん。
お前らの臭いを嗅いだ俺の気持ちを考えろ!
多少苦しくても、我慢しろ!
「はあ、はあぁ゛ぉえっはあ、誰か、引っ張るの手伝って」
新たな盗賊5人とミキとガチムチを乗せた荷車は、マジで重かった。
舗装された道だからまだマシなのかもしれないが、日本のアスファルト舗装とは違って地面を固めただけの道だ。
荷車も木製で、とにかく重い。
「ああ、私が代わろう。次はシェリス頼むな」
「……嫌ぴょん」
「シェリス、ジュンに感謝しろとは言わないが、頑張ってくれた分を返してやろうという気持ちはないのか」
「……勃ってただけぴょん」
「ああ、それはもう立派に
「ぴょ、ぴょん」
……睨まれる筋合いはないぞ。
レイアの言う通りだ。俺はサンドバッグになっていたが、ちゃんと最後まで
それにアレだ、アドミラに武器を渡して救っただろ。
レイアに指示も出したし、俺は頭脳派、いわば参謀なんだよ!
「そろそろ、ちゃんと話し合ったほうがいいですねぇ」
「ん?なにを?ま、まさかお前、アレは言うなよ!」
「アレ?ああ、ジュンさんの股間なんてどうでもいいですぅ。それよりもスキルですよぉ」
「ああ、ソッチね。はいはい、スキル。そうだな、共有しといたほうが良いかもな」
「スキルでは興奮し――」
「するかあッ!倒錯しすぎて俺のアイデンティティがぶっ壊れるわ!」
「……怪しいですがぁ、まあ仕方ないですねぇ。私のスキルは」
俺たちのスキルは発表会は唐突に始まった。
どう考えても遅すぎるだろ。
――――作者より――――
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