第21話 検証お披露目会(回)
「たしかに魔力が減ってない気がしなくもないけど減ってるか?どっちだ分からん」
分からんのかいッ!
ゴニョゴニョ言った割りには、分からんのかい。
「間違いないですよぉ。ビリガンギルドのギルマスから、お墨付きはもらってますからぁ」
「ビリガン……あの、腰振りビリガンか?」
「はぁい。魔力が必要ない念話ですぅ。国を越えても声が届くのですよぉ?」
「それはそうだが……。有用性を見出だせんな。そもそも思念通話の魔力消費は微々たるもの。その一因は物理的に身近な人や、特定の集団内だけで使うものだからだ。遠方と意思疎通を図るなら、手紙で十分だろう?」
「お父様ぁ?お母様のお声、聞きたくないですかぁ?」
「……まあ、聞きたいが、出張中なのだ。わがままは言うまいよ」
「お母様は国外にいるから、念話できないんですよねぇ?」
「はあ、アドミラ。言いたいことは分かるが、有用性を見いだせない。いや、コストが高すぎて有用性が霞んでしまうのだ」
「……手紙のほうがいいのですねぇ」
あれ?
あれれれれれれ?
おっかすぃぃぃぃなぁぁぁぁあぁぁ!?
しょんぼりちてるぞ?
アドミラたんが、しょんぼりしてるうぅぅぅぅ?
俺はここぞとばかりに満面の笑みを作って、アドミラをガン見してやった。
ムハハハ。目を伏せたなお主。
ムハハハ、吾輩の勝ちじゃ!
……ん?
いや勝ってなくね?
勝つっていうか、あー、今はアドミラは俺の代理人みたいなもんか。
俺のスキルの最強さを推してくれてるわけで、一方で俺は「言い負かされてやんのぉぉ、ザマア乙」とキショい顔をしてたと。
俺キモくね?
我ながらキモさを実感してる今日このごろ。
だからといって、弁が立つわけでもないしな。息子は勃つけど。
「お父様ぁ?」
「なんだいアドミラ」
「お願い♡」
ムハッ……くぁっ、な、なんて威力なんだ。
くぁぁぁわいい。クソッ、ドS大魔神のアイツが、懇願するだとぉぉぉ!?
卑怯な奴め。
なんて可愛いんだ。
ドSでなければ、俺の息子は……っておいおい。
もう反応しちまってるぜ。
まったく呆れたハハハハ。
「ふぅむ。可愛いなアドミラ。でも承認はできん」
「厳しッ」
「うんッ!?なんだね?何か言ったかね!?これは娘との大事な話なのだが?」
娘との大事な話か知らんけど、俺のスキルの話だぜ。
アドミラに頼りっぱなしというわけにもいかんから、ちょっくら頑張りましょうか!
「……俺のスキルには隠されし力があります」
「ふんっ。嘘をつけ」
「いやマジなんですって!うーん、説明が難しいんですけどね?日本にあるコールセンターと、スキル【コールセンター】には、かなりの相違があるんですよ」
「……続けたまえ」
「日本のコールセンターになくてはならないシステムが俺のスキルには備わっていません。だから現状の、スキル【コールセンター】は、不完全なんです」
「今の説明では、納得しがたい。私は、日本に存在するコールセンターについて知らん。すなわち、システムの具体的な内容も知らん。だからスキルから欠如しているものを端的に言ってみなさい」
「……それは、振り分け機能ですね」
「振り分け?」
「コールセンターには数名のオペレーター、つまり職員がいるわけですが、1件の電話を取り合うことはしません。ある基準で自動的に、とある職員へと振り分けられます」
「……基準は」
「いろいろです。会社えーと、商会や上司の判断で基準は変わります。
えーと、基準は大して重要ではなく、振り分けられるという部分が肝なんです。
職員が汗水流して振り分けずに、自動で振り分けてくれるシステムが存在してるんです」
「今のところ、そのシステムが、スキルには見られないと」
「はい」
「……少し待ってくれ」
そう言って、自分の顎に手を当て、天井を見つめ始めた。
時々目をつむり、時々ブツブツと何かを言って、視線を彷徨わせる。
それから数十秒後、真っ直ぐに俺の目を見て言った。
「スキルの検証には、どれほどの時がかかると思う?おおよそで構わない」
「……このスキルの存在意義が、この世界で日本と同じようなコールセンターを作ることである。という仮定をもとに言いますね?」
「ああ」
「あと100日はかかるかと」
「はっきりと言うのだな。根拠は」
「今日一日で知ったスキルの姿が、100分の1だからです」
「……なるほど。スキルの全貌を知った暁には、コールセンターを作れるということだな」
「はい。あくまでも仮定ですけど」
「……そうか。100日程度か」
「え?」
「
「ああ、確かにそうですね。
「フッ。分かった。アドミラの話に乗ろう」
「ふう」
あー疲れた。
もーやだ。
この役目ってアドミラ担当だよな?
俺のキャラじゃないって。頑張れよアドミラッ!
後でオカズもらうからな!
「ありがとうお父様ぁ!」
「それで?」
それで?
ソ連で?
何かあるってのかアドミラよ!まさか結婚報告か?俺との?おいおい勘弁してくれよ。
「今の話はただの営業だ。ウチの商会が、スキルを使ってやるというだけで、投資する話は別件なのだろう?」
ああ?そうなの?
もう頭パンクしそうで、ワケワカメなんですけど。
両隣の子たちも、眠そうにしてるし。
「まずは試験運用が必要ですよねぇ?」
「ああそうだな。まずはテストしなければ、従業員が性能を知れんからな。従業員がよく知らない製品を、顧客に売ることはできん」
「そのテスト部分をビリガンギルドで承りたいのですぅ。従業員さんにも分かるようにぃ、性能の利点と欠点をまとめますよぉ?」
「それではただの、外部委託だな。投資ではなく発注だ」
「テストされるのはジュンさんですよぉ?
ジュンさんがスキルを使って試験運用すればぁ、並行してスキル検証もされますよねぇ。検証の後に新しい発見があればぁ、この商会の新しい事業として採用しますよねぇ?」
試験運用としてスキルを使いまくれば、おのずとスキルを検証することにもなる。
で、検証して商業利用できそうな発見があれば、商商会は最高っしょ?
要するに、プロジェクトに金を落として、成長させるんだから、投資やんけと言いたいわけだ。
そして、アドミラの言葉は、俺にも向けられている。
運用しながら、自分で自分のスキルをフィードバックして、検証しろとな。
まあ、金もらって検証させてくれるんだから、最高だな。
お互いに悪くない提案ではないだろうか。
「……まあ、投資になるな」
「だったらぁ?」
「フッ、アドミラは頭が良いなあ。よしよし」
「フフフ。ありがとうお父様ぁ」
ということで、検証結果お披露目会は終了となりましたとさ。おしまいける。
――――作者より――――
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