第17ー2話 宣戦布告
一世一代の愛の告白だった。
やっぱりスカムが悪い。あのウンチさえいなければ……あの、髪色がムカつく。M字なのがむかつく。
今からでもマルコメにしてやりたいぜ、クソッ!
「どう落とし前つけんだい?」
「はぁ。オバさぁん?お話聞いてましたぁ?スカムが悪いって、ジュンは説明してましたよねぇ?」
ぶっ倒れてるスカムを睨みつけていると、ヤンキー座り継続記録更新中のアドミラが、会話に割り込んできた。
しかも……オバさんて。
ナイスぅぅぅ!もっと言え!
「オバ……。ションベン臭いガキが偉そうに。証拠もなく好き放題やって、ただで済むと思ってんのかい?騎士を呼んでやろうか?」
「アドミラたん、殺っちゃっていい?あのババア」
おお!シェリスまでやる気とは。
アドミラが貶されたからだと思うけど、出会った頃のキャラは、どこいったんだ。
従順な狂戦士になってやがる。
「ダメよぉ。生い先短い命なんだから、殺さないであげてぇ」
「はぁい」
「……私が誰だか知ってて、その態度なのかい?」
ん?おめえ誰だ。
水商売してるエルフじゃねえの?
「プリッケ冒険者ギルド、プリンチピウム王都支部支部長さんですよねぇ」
ううっ、分からん。
なんだって?
プリプリウンチで嘔吐した支部長?
ただのスカ◯ロ女じゃねえか。
なーんだ、ギルマスではないのか。
まあとりあえず偉いんだろうが……。
なんでここに拾われなかったんだろ。
なんでうちのギルマスは、ゴリラなんだろ。
心優しいモンスターなんだろ。
ついてねえよ俺。
「宣戦布告、でいいわねお嬢ちゃん?」
「解釈はご自由にぃ。あなたは必ず奴隷にしてあげますぅ。ウヒヒ」
「……イカれたガキが」
は?アドミラ?なんだよ宣戦布告って!
「ちょ、ちょっと待った!そ、そうなんすよ。アイツ、イカれてるもんで。俺がギルド職員ですから、話は俺と――」
「その高慢ちきな口が開けなくなるまで、調教してあげますからねぇ。オバさん」
エルフさんの顔が、ヤバいぐらいに歪んでいる。
さっきまでは引きつった笑顔だったけど、もう笑顔すら浮かべてない。
眉間のしわが、ハリセンぐらい深く何重にもなっている。
「帰りな。この借りは必ず――」
「その年だとぉ、子宮も腐ってるんですよねぇ?だったら、発情期の獣人たちに……」
「ア、アドミラ!もう止めてくれ!怖い!もう怖い!煽りが、俺の心まで抉ってるんだよ頼む!」
さすがに止めました。
もうコイツ、ドSとか超越してるわ。
イカれたサディストじゃねえか。
サイコパス?ソシオパス?いや、よく分からんけど、敵に回したら絶対アカン人やん。
カツカツカツ――。
無言で帰ったぁぁぁあ。
これは勝利というより、イジメだろ。
はっ!
ちゃうちゃう!あのエルフがどうとかよりも……。
「宣戦布告ってなんだよ!盗人の指示役を懲らしめて、ウチに盗みに入ったら、ただじゃおかんぞ!って知らしめるだけだったんじゃないの?」
「え?それの何が面白いんですかぁ。どうせなら戦いましょうよぉ」
「……おめえは戦わねえだろうがっ!つーか、戦うってヤバくね。プリッケは三大ギルドの一角だって、戦力的に無理じゃん」
「何が無理なんですぅ?チェレーブロの本気と、召喚勇者の本気、レイアさんの男気で勝てますよぉ」
「えぇえ?アドミラたん、私は?」
目を潤ませて自分を指差すシェリスであったが、アドミラはフルシカト。
お前のターンだぞと言いたげに俺を見ている。
哀れなりシェリス。
そのまま、調教されてろい!
「あ、あのなあ、戦いってのはな?数が物を言うんだよ。質が高くたって、数には勝てないの!」
「ん?戦いって……殺し合いをするわけではありませんよぉ?」
「はあ?宣戦布告だろ?」
「ああ、召喚勇者だから知らないんですねぇ。ギルド戦争はぁ、ギルドポイントを競うゲームなんですよぉ?」
へえ!面白そう。いかにもファンタジーじゃん!
って数時間前の俺なら思ってました。
でも今なら騙されん。
コイツは控えめに言ってキチゲエだ。
ゲームというオブラートに包んではいるが、内実は血みどろの……的なことだろ。
「数百人単位の死者はでますけどねぇ」
ほれみろ!
――――作者より――――
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