第17ー1話 宣戦布告

「すまない遅れた!状況は!?」


「だ、大丈夫か?歯が、欠けてるけど」


「ああ、気にするな。金が貯まったら歯医者で治してもらう」


ニコリと笑うと、欠けた前歯がキラリと光る。

意外と忘れがちだが、レイアはなかなかの美女だ。

だがどうだろう。前歯一本欠けただけで、ひょうきんな女性に早変わりしてしまった。


「……ブハォッ。お、おう。早めに治してもらえ」


「笑うなジュン!敵の前だぞ」


「おめえの顔のせいだわ!」


「あ、ああそうか。すまないな。しかしこれは……勝ったも同然だな」


違いない。

何もしてないのに、ベンジャミンは唇を紫色にして、膝をついてしまった。たぶんブールが冷たかったんだろう。


「ぴょーんと。アドミラたーん!終わったぴょん!」


「はぁいお利口さん」


ウサギというよりは忠犬。

タタッとアドミラのもとまで駆け寄ると、はあはあと息を荒くさせて、アドミラの匂いを思い切り吸い込んでいる。


「ちょ、ちょっとだけ触っても――」


「ダメですぅ!本当に反省してますぅ?」


ふっ。しょんぼりしてやがる。

クソザマァ。


ガスッ――。


「プゲッ!?」


「死ねッ」


八つ当たりで蹴られた冒険者の彼には、ドンマイと言ってあげたいよ。

まあでも?そこにいた君が悪いんだからね。

そもそもプリケツギルドなんかに所属してる君が悪い。


「召喚勇者様に喧嘩を売ったのが間違いなのだッ!ムハハハッ!」


カツカツカツ――。


勝利の余韻に浸っていた俺は、ギルドから聞こえた足音に身構えた。


やって来たのは一人の女性。

ファーコートを肩に掛け、タイトなカクテルドレスと、清々しい春の匂い。


ぷるんと潤いたっぷりの唇が、艶めかしく、そしてねっとりと言葉を紡いだ。


「一体なんの騒ぎだい?」


組んだ腕――。

深く吸い込まれるような双丘――。

そして……長い耳。


「好きです」


俺に春を感じさせた彼女は、エルフだった。


告白するのは必然だろう。


「ああそうかい。それで?ウチのもんに手を出したのかい?」


「……はい。あなたを奪うため、仕方なく力を使ってしまいました。さあ、共に参りましょう。二人の楽園へ」


「タマを潰されたくなかったら、ふざけるのをよしな。どういう了見だい?」


なるほどそう来るか。


「すぅ~はあ~」


マンガから知識を吸収し、部屋での鍛錬を行った、一子相伝の技を披露するときが来たようだ。


俺は深く呼吸をして、己の肉体と対話した。


三戦さんちん――。

空手における基本であり、真髄ともいえる構えを取り、下腹部に意識を向ける。

そして、金玉を収納した。

これぞコツカケである。


このエルフ姐さんに筆下ろししてもらうまでは、タマを失うわけにはいかないのだッ!


正直、タマがぶらぶらしてんのは分かってる。

10分の練習でタマタマが引っ込むわけないのも知ってる。部屋でもできなかったし。

でもさあ!こうでもしないと怖くて、エルフの姐さんを見れないんだよ!


「なにしてんだい?蹴り上げてやろうか?」


「あ、ごめんなさい。えとー、我々は――」


直立になり、すべてを包み隠さず話した。

全部スカムが悪いこと。スカムさえいなければ、また違った形で出会えたこと。


好きであること。


「なるほどねえ。アンタらビリガンとこの……」


「あの、お返事は」


「ああ?嫌いだね。ウチのもんに手えだす奴は特に」


「……」





――――作者より――――

最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。

作者の励みになりますので、♡いいね、コメント(ふきだしマーク)をいただけると助かります。

お手数だとは思いますが、☆マークもついでにポチッとしていただけると、本当に嬉しいです!

(目次ページ下辺りにあります。アプリ版はレビュータブにあります)

よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る