第4ー2話 レイア・スタルトスという不運


「ジュ、ジュン。あのー、これって」


「……」


扉が壊れました。

板チョコみたく、パキッとね。

あー、俺にも分けてほしいよ。どこかの世界線では、高校時代の俺も、そんな青春があったのかもなー。


はあ。

どうやったら扉が割れるの?

まさか、シェリスと同じ怪力のキャラも持ってんの?


「そ、そんな目で見ないでくれ。べ、弁償するから!」


「もう、何も触らずそこに座っとってくださいよ。ギルマスは裏で取り込み中なもんで。聞こえるでしょう?ペットをしつけてるんです」


「あ、ああ。分かった。ペットにあんな鳴き声をさせるとは……ちょっと不安だな。厳しいお方なのか?」


「あーまあ、どうすかね。を見たことがないし、見たくもないんで知らないっす」


「ジュンは職員だろう?」


「はい。1時間前ぐらいに職員になりましたね」


「そうか。大変だなあ、では失礼」


バギッ――。


「あでっ」


「……」


ソファの脚が折れたのかな?

レイアが転げ落ちたわけだが……こいつぁ、面倒くさそうな奴だ。


パーティを組む奴もしんどいだろうな。


あ。


そういやあのウサギ、パーティ組みたいとか抜かしてたな。


ふっふっふっ。いいよ。僕ちんが組ませてあげるおー。


「レイア?」


「あ、あの、これは……いくらだろうか」


「あー、後で聞いとく。それよりもさあ、パーティ組みたくない?」


「ああ!それは望むところだ。ひとりでは何かと不便なことが多い。冒険者と言えばパーティが醍醐味みたいな――」


「オッケー。仲間呼ぶわ。おーい!シェリス!アドミラ!」


アドミラは雑草茶が飲めないと知り、俺に罵詈雑言を吐きかけた後、外でシェリスとイチャイチャしていたはず。


ほーれ来た。


「なんだぴょん?」

「……もう騙されませんよぉ。ジュンさん!」


「お前たちの仲間が、そこにいるぜッ!」


視線を一身に浴びたレイアは、臆することなく立ち上がった。

堂々たる、まさに騎士といえる居様だ。


「レイア・スタルトスだ。二人共よろブハッ」


ソファから立ち上がり、シェリスたちの所まで3歩だ。

たったその距離をコケるって……。

よくここまで来たな。

道のりという意味でも、人生という意味でも。


「大丈夫かぴょん?」

「大丈夫ですかぁ?」


「あ、ああ。問題ない。よろしく」


気を取り直して立ち上がったレイアは、堂々たる……。

これであの態度を取れるのは、逆にすごいな。

ドジッて慣れると、あそこまで貫禄が出てくるのか。


ふむ。

関わらんとこ。

見た目はいいし、悪いやつではないはず。

だが、があるとは思えんし、俺の身にあのドジの災いが降りかかるのも避けたい。


「シェリス・マイザル。よろしくだぴょん」

「アドミラ・チェレーブロですぅ。よろしくぅ」


うむうむ。

シェリスもきっと感謝してるだろうな。

アイツにしてみれば、獲物が増えたわけだ。

早速手をスリスリしてやがる。

男なら犯罪だぞ?


……クソッ!


TSもありだったな!神よ、TSスキルくれ!ライナウッッ!


「なあジュン。ギルマスはいつ来るんだ?早めに謝罪をさせてほしいんだが」


「あー壊しまくったもんなー。そろそろ来るんじゃね?地震も変な鳴き声も止んだし」


「ああ、たしかに。調教が終わったのか……ふう、少し緊張するな」


「調教て……」


「あれ?違うのか?」


「いや、まあある意味合ってるなって、なんだアドミラ!文句か!」


俺はなーんにもしてないもんね!

変態を見るような目で見られる筋合いはないもんね!


「レイアさんはもう仲間ですぅ。ジュンさんは、余計なことしないでくださいねぇ」


「ああしない。任せろ!お前らとはもう関わらん!もっと清楚でクソエロいヒロインを、その辺に転がしてもらえるよう神に祈るわッ!」


「……終わってますねぇ。ねえ?ウサちゃん」


「うんぴょん!」


うんぴょんて。

無理しすぎて語呂が悪いぞシェリスよ。

辛そうだなー。キャラ崩壊の危機じゃねえのか?


ザマァみさらせ!

そのままキャラ崩壊して、ヒロイン候補から外れてしまえ!


ドタドタ――。


おっ?

ビリガン夫妻のが終わったようだ。


「悪い悪い。って、あん?人が増えて……ギルドがぶっ壊れてらあ」


「……す、すみません。私、が。あ、あなたは!」


ん?なんだ?昔に尻でもなで回されたか?


「腰振りビリガン!?」


「そんな有名なの?」







――――作者より――――

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