第5ー1話 俺はギルド職員のはずだろぉぉぉぉ!

腰振りビリガン――。


こんな名前が世間に浸透していいんですか?

教育上良くないんじゃない?


「腰振りビリガンさんのギルドとは」


「ああ、知ってるやつがいて安心したぜ。ところでジュン。これはどうなってんだ?」


どう、とは。


「おめえに受付を任せたってのに、この有り様か。言ったよなあ?義理と人情ってよお?」


いやおかしい。

二つ名通り、裏で地ならししてたおっさんが、俺のせいにしてるー。


「い、いやこれは!」


そうだぞ。レイアが全部悪いんだ。


「待ちなッ!これはギルドの問題だ、悪いが黙っててくれや」


は?


「ジュン。こっちを見ろジュン!」


「……なんすか?」


「てめえは、お茶の一つも出せねえのか!」


「え?そこ?」


「客が来たら茶を出す!ったりめえだろバーロー!」


「ぇぇぇ」


たしかに、そうか。

いや、そうなんだけどさあ。


えええ。今そこ?

こんなにギルドを壊されて、お茶?


「悪いな。ちと、狭えがその辺に座っててくれや、アイシャ!茶、頼むわ」


「あいよ」


はああああ?俺が悪いんか!

なんだシェリスッ!その目つきはよお!ざまあみろって言いたげだなあ!やんのかコラ!


俺は仕事してたぞ。

冒険者登録させたし、なんなら今日で3人増えた。いいじゃん!最高の結果じゃないの?

コイツらの依頼料から中抜して、ギルド運営に当てる気なんだろ?

冒険者が増えたんだから、俺の仕事は上出来だろッ!


「ったく。どいてろジュン」


「……はぁ」


納得できない俺は、腰振りビリガンギルマスに端へ追いやられて、ぼーっと突っ立っていた。

何回か首を傾げてみたけど、誰も助けてはくれない。

レイアは気まずそうにしてるだけ。

アドミラはお茶を美味しそうに飲み、シェリスはお茶をすすりながら、俺を鼻で笑った。


「ウチの職員が悪かったな。んで、冒険者志望か?」


「は、はい!先ほど登録しました!ジュンはいい仕事をしています!」


おお?レイア……お前はやっぱりいい奴だ。ありがとな。


「いい、いい。気は使わなくていいぜ。んで、3名でパーティ組むんか?」


「そうだぴょん。稼げる依頼がしたいぴょん」


「稼げる、かあ。稼げるってえと、討伐系の依頼だがよお……戦えるのか?」


シェリスは怪力とカマトトぶりっ子があるから、魔物にもぴょんぴょん言って、うまく立ち回れるだろう。

レイアも、戦闘スキルがあったし、剣も持ってるからイケるはず。

問題はアドミラだ。

散歩に来たどっかのご令嬢みたいな格好で、戦うのは無理がある。

まあでも、スキル次第か?


「私は戦わない依頼がいいなぁ」


「……戦わないってえと、採集やら調薬やら、あとは何でも屋みたいな仕事だぜ?単価も低いが、いいのか?」


採集とかもあるのか。

アドミラは、最初からそっちをするために冒険者になったわけだな。はなっから戦う気はなかったと。


「稼げる仕事がいいぴょん。アドミラーお願ーい」


「うーん。シェリスは戦えるのぉ?」


「うんうん。戦えるぴょん!」


「それならいいけどぉ……」


ほお。シェリスは金が入り用なのか。

採集でコツコツよりも、大金をドカンと短期間で欲しいってことは、何かあんだろうなあ。

借金とかかな?


「んじゃあ討伐か。ちと待ってろ」






――――作者より――――

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