第4ー1話 レイア・スタルトスという不運
騎士風の女性がやって来た。
金髪のポニーテールを揺らし、扉と俺を見比べる瞳も揺らし。
まさにヒロイン。
きっとアレだ。
チートスキル持ちの俺と張り合う、超強い現地人だ。
互いに強さを認め合い、それからいい感じの雰囲気になって……。
ハイ卒業。
アザした!
「どうぞー。冒険者登録ですよね?登録証ならいくらでもありますよー」
もはや無料のポケットティッシュ状態。
冒険者って簡単になれるんだな。
「あ、ああ。スキルの鑑定はいいのか?」
「んまあ、一応やっときますかあ!」
一応仕事だし、本人も協力してくれるというのだ。断る理由はないだろう。
鑑定板の上に置かれた手には、努力の跡があった。
分厚い皮膚と、ゴツゴツした指。
あんだよ。努力家ね?そのパティーンね?
俺はアレよ。
女の子っぽい見た目じゃなきゃヤダとか、指が細くて手が小さい子じゃなきゃ嫌!みたいなゴミ思考の男とは違うから!
君のその手は、見ないようにするぜッ!
「……終わったが、どうだろうか」
「はいはい。見てみますねー。ふむふむふん?」
「私は、剣に生きる女だ。スキルだけでなく――」
ゴニョゴニョと何か言ってるが、彼女のスキルは意外なものだった。
――――――――――――――――
一般スキル
【徒手格闘術】
特殊スキル
【処女の祈り】
種族スキル
――
神託スキル
――
――――――――――――――――
まず、騎士風の見た目をしてて、本人も「剣に生きる女だ」とカッコつけているが、スキルは【徒手格闘術】とな?
名称的には、素手の戦闘スキルじゃないのか?
まあ、それはいいや。
問題というか、一番興味をそそられるのが【処女の祈り】だ。
あんだこれ?
一応俺のスキルには【童貞】なんてのはなかった。
あったとしても、何に使うんだって話だ。
「あのー、お名前は?あ、俺は
「私はレイア・スタルトスだ。では冒険者登録完了ということで――」
「ちょいちょいちょい」
焦りなさんなよ。
なんかにおうぞ?
これを突かなければならないという、神のお言葉的なものが聞こえるぜ。
「【処女の祈り】ってスキルなんですがね?どういったものなんですか?」
「……ただの治癒系スキルだ。問題があるのか?」
「ほう?」
処女の祈りねえ。処女が祈るんだろ?
だから効果が表れるってんだろ?
ほう?
ほう。
なんだ同志じゃないか。
たぶんお前、いい奴だろ。
「問題はまったくないです。ただ一つ!レイアさんに聞きたい!」
「な、なんだ」
「彼氏はいないですよね?」
「……いたらどうなんだ?まさか、冒険者になれないとでも?」
「ええ無理です。我々ビリガン冒険者ギルドは彼氏彼女とかいう浮ついた存在にうつつを抜かし仕事を仕事とも思わない連中のせいでここまで寂れてしまいました。分かりますね?言ってる意味分かりますよねッ!?」
「……そういうことか。ああもちろんだ!私は結婚するまで操を立てると誓っている。彼氏彼女とかいうそんな浮ついたものに時間を割く暇はない。そんな物があれば剣を振るいたいッ!分かってくれるよな?」
「……ちっ」
「え?今……ちっ、て」
「まあいいっすよ。はい。冒険者おめっとー」
「ど、どうしたジュン」
あんだよ。
彼氏いらない宣言ですか。
操を立てるだ?てめえいつの時代に生まれたんだ!
別にいいさ。そういう信条があるのは、俺も否定したくはない。
だけど!俺が主人公で、お前はヒロインだろうがっ!
ここってハーレムのない世界線なの?
おいおい勘弁してくれよー。
どこぞのラノベみたく、転生者ハーレム作らせてくれよー。
俺は召喚されただけですよ?その違いだけでイジメてんのん?
ありえねって神よ!
転生も転移も、ほぼ同じでしょうがッ!
「……ところでだな、そのー。アレはどうしたらいい?」
「あん?ああ。扉っすか?適当に避けといてくださいよぉぉ。俺は今、精神統一で忙しいんで!」
「あ、ああ。すまない。何か気に障ることを言ったなら」
「今度は下の方を触って欲しいもんですよ。まったく」
「下?床が何かあるのか?」
「……もういいから!扉どかしちゃって!」
おとぼけドジっ子属性の騎士風美女ですか?
キャラ詰め込みすぎて、太ももがパンパンになっちゃってんじゃないの?
いや、それはそれでいいんだ。
健康的な体が、色んな意味で一番いいからな。
「よいしょ……あ!」
バギッ――。
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