第3ー2話 アドミラ・チェレーブロという狂人

パチパチ――。


本当に見事だ。

今後死ぬまで、オカズに困ることはないだろう。


「ジュンさん?シェリスさんて冒険者さんですかぇ?」


「あ、はいそうです。コイツは冒険者。俺はギルド職員です。したがって、俺がスカートの中を――」


「キモいんで黙っててくれますぅ?」


「ぇぇえ」


辛辣すぎる一言で、俺は撃沈した。

なぜシェリスはよくて、俺はだめなのか。

まさかアドミラも、そちら側の人間なのか!?


「シェリスちゃん?可愛いからさっきのは許すけどぉ、今度からは、無理やりはダメだよぁ?分かったひとー?」


「はーい!無理やりじゃなかったらいいぴょん?」


「うんいいよぉ。それと、ぴょんは可愛いから続けてねぇ?」


「はーいぴょん」


「よーしよし」


なんて奴だ。

あの、恐ろしい女シェリスを手懐けただと!?

見かけはぼんやりしてる、常識も知らなそうな女だが、やりおる。


そしてなぜ俺はキモイと言われたのか。

なんかしたっけ?いやしてないぞ。

まだなにもしてないのに……ああ。


顔ですか。はいそうですかぁぁぁぁぁ。


「ジュンさん?」


「はい喜んで!」


「この辺にお茶できるところはありますかぁ?」


「お茶?はっ、まさか俺を――」


「違いますよぉ?シェリスちゃんと行くんですぅ」


ちぇぇぇぇっっっっっ!

女同士でイチャコラですか?ここに童貞が一匹余ってますよぉおおおお!

興味もないっすか。はいはいそうですか。

お茶できるところ?適当に答えてやるか。


「お茶っすか。その辺に草が草生えてるんでそれをすりつぶして飲んでください苦い場合は近くに肥溜めがあるんでその真横で飲んでください。ういっす以上サイナラ」


「……早口なのにすごぉぉい」


「すごぉぉい。ういっすどうもさいなぁぁぁら」


「うーむ、なんだか怒ってますねぇ。でもありがとうございましたぁ。また来ますねぇ」


ガラガラ――。


「もう来なくていいぞー。俺の顔はキモいからなあ!死ねっ!」


このぐらいの文句は言わせてくれ。


確かに俺はキモかったかもしれん。

もしもあの場で、黄金の右手を発動していたならば、キモい!

だがしかし!

激エロゆりシーンを目撃して、息子起き上がるのは罪なのか!?

俺に非があると!?ただの生理現象なんだよ!


終わってるよまったく。

キモイと言われて、傷つかない人類がいるわけ無いだろう。

俺は傷ついてるよ。息子はどうだい?

ああそうか。むしろ最高ってか。


……はあ。キモッ。


キレ散らかし、自虐していたら、ドタドタと走る音がして乱暴に扉が開け放たれた。


ガラガラッ――。


「お願い、助けてぴょん!」


「シェリス?なんだよ、二人で貝あ――」


「マジでやろうとしてるぴょん!」


シェリスの異常な剣幕に、俺もふざけるのを止めた。


「どゆこと?」


「そのへんの雑草を摘み始めてるぴょん!これを飲むんですぅって!」


「……いやアレは、冗談ていうか。普通に分かるでしょ」


「分かるけど、あの子には通じてないぴょん!」


「あそ。で?」


「ネタバラシしてぴょん!」


「はあ?なんで?イチャコラする仲なんだから、シェリスが説得しろよ。俺はヤだね」


「……くっ」


はーん。

分かったぞ?

俺ひとりを悪者にして、アドミラとの距離をもっと縮めようって魂胆だな?

だが俺には、な~んにもメリットがねえや。


やる気が起きまへんなあ。


「あー。やる気がねえや。鼻くそでもほじっとこー」


鼻くそを丸めてピンッ!

ちょーどシェリスの前に落下したわ。


いやーヒヤヒヤするね。

あの怪力で、タマごともぎられてケツの穴にぶち込まれるかもと思うと、ヒヤヒヤするねー。


どうせできねえんだろ?

少なくとも今はよお!?


ピンッ――。


「分かった。望みは?」


「ヤラせてください」


「お前を殺す。それからアドミラを拐って調教するって手もあるぴょん」


「……尻尾!尻尾もふもふ」


「お前、尻尾が弱いって知ってて言ってるぴょん?」


「弱いって……まさか!ソッチの意味?マジで?じゃあなおさらお願いします!」


「だからこそダメなんだよ!早くしろって、アドミラが雑草汁を飲むかもしれない」


んだよ。コイツわがままだなあ。

でも殺されたくもないし。

あー、いいや。アレができればいいや。


「じゃあオカズにします。めちゃくちゃオカズにして二次利用も三次利用もして、無限に利用し続けます!これ以上は譲れません!」


「……ちっ」


そんな目で見られても怖くないもんねー。

むしろそれすらもオカズにしてやるわボケ!

俺そっちのけでイチャコラした罰じゃい!


「分かった。一生マスかいてろ童貞」


「は、はあ?童貞ちゃうし」


こうして、オカズにする許可を得ることに成功した。

それと同時に、大切な何かを失った気がした。

童貞を看破され、微妙に傷つき、アドミラに冗談だと伝えたら、もっと嫌われ……。


本当にクソだわ!


俺は主人公だぞ、ヒロイン寄越さんかいッ!


ガラガッシャーーン!


「は?」


扉が開いたと思ったら、枠から外れて倒れただけだった。

まあ見事な風邪通しで。


「も、申し訳ない。ち、力加減が下手なものでな。えーと、冒険者登録――」


「いらっしゃいませい!」


とうとうヒロイン登場か。

あざっす神!






――――作者より――――

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