第15話 ギャングスタ
「なんか、ごめんな」
俺含めて、全員が謝った。
「う、うん」
少女を完全に置いてけぼりにしていたからだ。
俺たちはスキル検証に集中し、シェリスはソファでうとうとしてて、レイアは俺たちのスキル検証を羨ましげに見つめていた。
少女一人、どうしたらいいか分からず、受付前で呆然としていたのだ。
普通に悲しすぎる。
グループ作ってくださーいと言われ、取り残された悲しき生徒のように……くっ、俺じゃねえか。
泥棒だからって、さすがにハブる気はなかったんだよ。
だからといって、帰すわけにもいかんし。
ということで、ちゃんと会話に混ぜてあげよう。
「えーと、君に指示をしたのは、どんな奴だったか覚えてるかな?」
「……スカムって男の人。ウンチみたいな髪の色してる」
「う、ウンチ色の髪。臭そうな奴だね。ソイツはパーティ組んでたかな?」
「うん。【スカムカムカム】ってパーティだよ」
「スカムカム……なんだその、アホがつけた名前は。そ、そうなんだ。もしも、秘宝を手に入れたら、どこに持ってく予定だったのかな?」
「プリッケ冒険者ギルドの、一階の端っこ」
「そうか、うん分かった。ありがとねえ」
おっさんの持つ秘宝が、奪われてしまうパターンは三つある。
おっさんが倒されて、正々堂々盗まれる。
ビリガン夫人の拉致されて、身代として要求される。
ギルドが攻撃されて身代として要求される。
パターンのうち二つは、腰振りビリガンがついてるので、だいぶ安全。
ただギルドはな……。
どんな方法で攻撃してくるかわからんし。
物理的にドカーンとくるかもしれんし、経済的にネチネチやるかもしれん。
もしかしたら、ウンチ色の髪を軒先に撒き散らして呪いだとか言いまわるかもしれん。
あー、それならウンチを撒いたほうが効果的だな。その方が臭えし、汚えもん。
まあとにかく、どんな攻撃をしてくるか分からんから、こっちから叩く。
ギルドがなくなって困るのは、おっさんではなくて俺たちや、ちびっ子冒険団の浮浪児たちだ。
やるしかねっしょぉぉ!
スカムのウンチ色の髪を剃り落として、元ウンチ君のツルピカマルコメうんち君にレベルアップさせてやらあ!
「プリケツはどこにある?」
「それならぁ、シェリスちゃんのお尻が……」
「プリッケギルドです。すんません、冗談はやめます」
「王都ですよぉ」
「王都だって!?俺、入れねえんだけど」
「すぐに退散すればいいのではぁ?」
……俺は今から、プリッケギルドのスカムに、話をつけに行くわけで。
間違いなく揉めます。
ウンチ色の髪のスカムが、騎士呼びます。
俺たち逃げます。
スカムと騎士から狙われます。
ホーリーシッッ!
「やっぱ止めるかー」
シコって寝るのが一番だろうな。
よーし、それじゃあ本日獲得したオカズコレクションから、一本を再生して……。
「なにが問題ぴょん?」
すぅーはあ。
もっとぴょんぴょん言ってくれー。今、コレクションに音声を足してるから……もっとプリーズ!
「王都に入るなと言われたのなら、やはり入ってはダメだろう。騎士の指示には従わないとな」
「……うん?秘宝は、プリッケギルドと国からも狙われるぴょんね?今さら日和ってなにか変わるぴょん?」
「たしかに!すごいなジュン!君は過酷な道を歩むのが好きなのだな。敬虔な信徒なのも頷けるよ」
……。
このままレイアに喋らせるのは、マズイ気がする。
俺のオカズコレクション、略してオカコレもストリーミングを止めちったし。
奴にはこれ以上喋らせるなと、本能が叫んでるな。
それに、シェリスの指摘には一理どころか七味も効いてる。
よし!今度はマジで、行きまぁぁぁあす!
「っしゃあオラ!ありがとうシェリス!お前の言う通りだな。じゃあ行くぞッ!」
「なんだか楽しくなってきましたねぇ」
「わ、私も楽しいぴょん。アドミラたん!」
「あ、剣が……まあいいか。この拳で――」
っとその前に……。
「おっさん!これ借りるぜい!」
「お、お?何に使うんだそんなもん。あ、おい!思念通話器も持ってけや!なんか使えるかもしんねえだろ!」
「おけい!」
さあやってきました、プリッケ冒険者ギルド。通称、プリケツ軍団の巣窟だ!
プリプリのケツを自慢してくるんだろうが、俺は屈しないぜ!
こちとら気分はギャングスタ!
おもちゃ箱から拝借した、グラサンもキマってるぜい!
「……ジュン、そのポーズは?ま、まさか、
「戦いの前の儀式、神の祝福をいただいている」
「く、くぁっこいい!わ、私もいいか?信徒ではない――」
「信徒か否かなど、下界が決めた愚かな区別!ただ神を信じろ」
「そ、そうだな。腕を組みばいいのか?」
「腕を組むってか、肘辺りを抱くってか。そうそう、で、背を反らして、いいね!片足出してみ!完璧や!」
ここで効果音とかあれば良いんだが。
ドーンとか、バーンとか。
背後で爆発とかあってもいいな。
いや、それよりもスモークをちょっと炊いて、怪しげな雰囲気を……。
「ジュンさぁん?これであってますぅ?」
「あ、アドミラ!?まさかお前もこのカッコよさが……」
「いえまったく意味がわかりませんけどぉ。でもぉ、面白いのでぇ」
「よ、よし!アドミラは、ウンコ座りが良いな。スカートが長いから、パンツは見えんだろ。そそ、でグラサンをちょびっとずらして、鼻にかけてみ……いいねえっ!」
「……わ、私もやるぴょん?」
「シェリスちゃん、ヤろぉ?」
「ぴょ、ぴょん!」
っしゃあオラ!
キマったぜ。
……。
……。
「ジュン、いつになったら祝福がくるんだ?」
「しばし待て」
やっべぇ、このあとの展開考えてなかった。
これじゃあ、変な集団が変なポーズしてギルド前で佇んでるだけだ。
ヒップホッパーのデモ?いや、コンビニ前のヤンキー?いや違う。
俺たち何してんだ。
「……え?なにこの人たち、ああっ!勃起してた変態だ!」
「は、はあ!?してねえし。てか誰だお前は!」
「森で会ったでしょ!」
プリッケギルドから出てきたのは、陽キャ女だった。
また勃起とか言ってら。ホント下品ザマスわ。
「うっさい死ね!お前に用はねえ!」
「はぁぁあ!?私は――」
「どしたー?っておい!アンタは
陽キャ女の背後から出てきたのは、彼氏かなにか、そんな感じの役割を担ってそうな、ノリの良い謎のキャラ、陽キャ男だった。
なんか知らんけど、あんま関わらんほうが良い気がしてきた。
信者のフリとかも良くないかな。
「スカム、という男を知っているか」
「スカム……ああ知ってる。ちょうど今――」
陽キャ男が何か言いかけたところで、またその背後からやってきた一人の男。
「にゃんじゃにゃんじゃ。オイラを呼んだかい?」
「キャッ!触らないでよ変態!」
「ミャハハハ。良いゃじゃなあかぁ。減るもんじゃないのだしょおお」
それは、ウンチ色の……M字の髪型をした、小柄な男だった。
陽キャ女のケツをペロンと撫でて、エロい視線で全身を舐め回している。
くっ、いいなあ。
俺もあんなのやってみたいよ!
「ちょ、ちょっとスカムさん。俺の女に止めてください」
「調子にのるなし!ザコ冒険者のくせに殺すじょょ!」
「……もう行こう。すまない
そう言って陽キャたちは、逃げるように去っていった。
残されたのは、ウンチビのスカムと俺たちのみ。
「お前ら、オイラになにか用きゃ?」
陽キャだけにな……。
おいおいスベってるぞスカム。
お前の薄ら寒いダジャレと頭皮はおいといて!
さあついに、俺の
「ビリガン――」
「ビリガンギルドの冒険者、レイア・スタルトスだ!お前に決闘を申し込むッ!」
「俺のセリフを取るなぁぁぁあ!」
――――作者より――――
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