第三十六話 入手 柄付手榴弾
「四つ目の百は、一体どこにいるんだろうな」と、フォノンが少し焦り気味に尋ねた。
「戦車に乗っているのは確かだと思うけど、巨大な戦車があと何台残っているのかも、紅色の霧がどこに現れるのかも、全然わからない」と、ニックが冷静に答えた。
「闇雲に紅色の霧を探すのは無駄だよね」と、クラヴィスはため息をつきながら言った。
その時、ルキアが思い出したように口を開いた。「ねぇ、ニック。前に、金属の都の近くのバイオプラントに紅色の霧が出るって話をしてたよな?」と、ルキアが訊いた。
「あぁ、言ったよ。金属の都で聞いた話だね。自分の目で確かめたわけじゃないけど」と、ニックが答えた。
クラヴィスは少し考えた後、提案した。「もしその話が本当だとしたら、時間をかけずに百を見つけるためには、バイオプラントの近くで待機して、紅色の霧が現れるのを待って、中心に止まっている巨大戦車を叩くのが最も効率的なんじゃないかな」
「それ、賢いかもね」ニックが感心したように頷いた。
「それから皆で話を進め、バイオプラントの近くで待ち伏せすることにして、戦いに向けた準備を始めることになった。
「チノ。これを持っていきなさい。紅色の霧が現れたら、この信号拳銃で空に向かって合図するんだ。すぐにこちらもプラントへ向かう」フォノンがチノに渡した信号拳銃は、本来、航空機に向かって合図を送るものだが、高地に位置するアキホカ村からなら十分に見えるはずだ。
「わかった。確実に合図を送る」
「それと、これも持っていきなさい」
「
「これは柄付手榴弾というんだ。二つしかないが、火薬があれば何かと役に立つだろう」フォノンが説明する。使用方法としては、まず柄のねじ込み式安全キャップを外し、紐を引き抜くと導火薬に火がつき、三〜四秒後に爆発するから、その前に目標物に投げつけるそうだ。
「百はお前たちが想像している以上に強いぞ。ネザンはさらに強力な存在だ。とにかく、生き延びてくれ」フォノンは、過去に百と戦ったことがあり、その強さをよく知っていた。
「私はツァローニさんを迎えに行ってから、みんなの所へ向かうから」
「紅色の霧が出たら、すぐに信号弾を打ち上げてくれ。父さんたちも攻撃を開始する。それと、プラントの張り込みをするなら、ちょうど良い場所がある。あそこの水は最高にうまいんだ。皆で飲んだコーヒーの味を思い出すな」フォノンは懐かしそうにそう付け加えた。眼下に広がる平野にあるケミカルプラントが一望できる場所を知っていたフォノンは、端末を操作して地図を表示した。ビークルを隠すことのできる木々も多い。以前マグナと立ち寄ったことのある、南に位置する水源地『ラクサルの泉』が、最適だと提案した。
地図には、ケミカルプラントまでの道のりが詳細に示されていた。アキホカ村を出発し、道沿いに進んだ後、つり橋を渡り川沿いを南下すれば、ラクサルの泉に到着する。フォノンは地図を指さしながら説明した。
「このルートなら迷うことはない。道が明瞭でラクサルの泉には簡単にたどり着ける」と、フォノンは自信を持って言った。
皆は地図をじっくりと見つめながら、これからの計画に思いを巡らせた。険しい道を通るわけではないため、安心して準備に取り掛かることができそうだった。
一行は、バイオプラントの近くで張り込むことに決め、早速アキホカ村を後にした。フォノンと村の若者たちは、合図があるまでアキホカ村で待機することにした。
亡霊の探求者 〜亡霊の中に自分自身の影を見る〜 深山 有煎(ミヤマ ウセン) @Tendonworld
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