第三十五話 ネザンを討つ者たち
「それにしても、よく頑張ったね。本当に魔女になったんだ。知らない仲間もいるだろうから、みんなを改めて紹介するよ。」こういう時、なぜかニックが仕切りたがる。
「村の長老で、フォノンのお父さん。そしてシャーマンでもある長老の奥さん、ナイラ。フォノンの娘、チノと妹のアイラ。忍びの血を引く焔と、その母親の華幻。わたしニックと、クラヴィスが大好きな一年大人に近づいたルキアくんだ。」相変わらずのニックの調子のよさに、一同は少し呆れ顔を見せた。
「チノって名前、『炎』から取ったの?」
「クラヴィス、よくわかったわね。」チノは尊敬の眼差しでクラヴィスを見た。
「以前、本で読んだことがあって。フォノンという名前の由来は確か『熊』ですよね。ナイラさんは『涙』でしょう。長老さんは……?」クラヴィスは不思議そうな顔をした。
「ん? わしか? わしの名前か? 『長老』じゃ。だから長老なんじゃ。」
「え? もしかして、長老って名前なの? なんだか、よくわからないけど……。」ニックは呆気にとられてポカンとしていた。
「ところで、ルキア殿。あなたの名前の由来は『光』ではないの?」ナイラが意味深な表情でルキアに尋ねた。
「どうしてそれを?」
「私には見えるんじゃ。」ナイラは水晶玉に手をかざし、呪文を唱えた。
「生まれた時に、鋭い光が差し込んで額を貫き、アザができたと、父からの手紙に書いてありました。それで、ラナティスの言葉で『光』を意味する名前にしたと……。」ルキアは答えた。
「わしも伝説の『光の器』について読んだことがあるが、もしかすると、本物の『光の器』はルキアかもしれんな。ルキアには大切な役目があるようじゃ。」ナイラは穏やかに言った。
「僕の役目?」ルキアはナイラに尋ねた。
「緑色をした大きな何かが見える。それだけよ。」
「村の掟とはいえ、ネザンを倒すべき時が来ているのかもしれん。」長老は悔しげに言った。
ナイラのようなシャーマンは、金属化してゆくこの世界では大変希少な存在だという。食糧事情にも問題が多くなり、片っ端から機械に頼ることで、人間に本来備わっているはずの鋭い感覚――第六感――を消し去ってしまったのだ。
自然と調和していた頃の人間は、感覚が鋭く、世界の真実を見抜くことができる『第三の目』と呼ばれる心の目を持っていたという。ナイラが古文書で読んだ話では、『第三の目』は正確にはこめかみ辺りにあったらしい。純粋な心を持った者の心眼で見抜く真実は、鈍った者の目には決して映らない。
「こんな世界になってしまったのも、ネザンを迎え入れたアキホカ村の責任じゃ。太古の遺産の技術は村から出してはならんのじゃ。」長老は表情を曇らせた。
「だから、よそ者など信用するなといったんじゃ。」村の老人たちが口を揃えて言った。
「部族から出た問題は、部族で解決するというのが村の掟じゃ。ネザンを倒すのは一筋縄ではいかんじゃろうが。どうか、お主らの力を貸してくれまいか?」長老は真剣な表情でルキアたちに頭を下げた。
「長老さん、頭を上げてください。僕たちがこうして宿敵である百と、ネザンに関係するアキホカ村にたどり着いたのも、すべて必然だったんです。」クラヴィスとニックの方を見ると、二人は無言で頷いた。
「仲間も賛成してくれています。僕らも百とネザンを倒すのに協力します。」ルキアたちは戦う決意を固めた。
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