第二十九話 白仮面の集団
メタルレイスの華幻の目がスリープ状態から突然起動し、赤い光を放ち始めた。鋭敏なセンサーが近づく足音を捉え、足音のリズムに合わせて緊張が高まっていく。
「まずいわね。何かの集団がこちらへ向かってきているわ」華幻はつぶやきながら、焔が蹴り飛ばした毛布をやさしく整えた。周囲の静けさが迫る気配の中で、生身の人間であれば不安の波に飲み込まれるところだ。
ルキアたちの方に目をやると、熟睡しているのがわかった。
「ルキアさん、ニックさん」華幻は二人の肩を少し強めに揺り動かしてみたが、ルキアとニックはまったく起きる気配がない。華幻の頭に焦りが浮かんだ。
「今、私が動いて戦いが始まったら、全員が死んでしまうかもしれないわ」華幻は冷静に状況を分析していた。刻々と敵の影が迫る中、メタルレイスである華幻が驚きや畏怖を感じているとは考えられなかったが、頭脳の中では冷徹に分析している。
山道を吹き抜ける疾風のように、あっという間に十人ほどの白仮面の集団に囲まれた。
華幻は、攻撃しようとすれば、すぐにでも行動に移せたのだが、熟睡している仲間たちのことを考えると、動くべきではないと判断した。
インディアンのような衣装を身にまとった、頭に羽飾りのついた白仮面の女の子が、寝ているニックに槍の穂先を突きつけた。軽く頭を槍の穂先で小突いた。
「おい、起きろ!」声をかけると、ニックは寝ぼけ眼をこすりながら、ゆっくりと目を開けた。槍の先端を見て飛び起きたニックは、白仮面に描かれた赤色の模様を見ると大声で叫んだ。
「なんだ? 天狗がいるじゃん!」その声に反応して、寝ていたルキアと焔が、目を覚ました。何の騒ぎかと初めはキョロキョロしていたが、事件の渦中に自分たちがいるのだとすぐに気づいた。ルキアは冷や汗をかきながら、自分の武器にそおっと手を伸ばそうとした。
その瞬間!
白仮面の集団の一人が素早く動いて、ルキアの武器を遠くへ蹴り飛ばした。
「何が天狗だ。立ち入り禁止区域に侵入しただけでは飽き足らず、我らの戦いの仮面まで侮辱するとは? お前たちこそ、なぜここにいる!」白仮面の奥で、女の子の目が光り、鋭い目つきと尖った槍の穂先を四人に向け、敵意をむき出しにしている。声には怒りが込められており、一言一言が鋭く胸に突き刺さる。
「それに、どうしてメタルレイスを連れているんだ!」女の子は鋭い槍をニックから華幻の方へ向けると、構え直した。その目には疑念と不信感が浮かんでいた。
「やめてよ。母さんは、何も悪いことしてないよ?」焔は怯えた声で訴えた。焔は華幻に向けられた槍の穂先をどかそうと必死だった。焔は、恐怖と不安が混じり、幼い目に涙を浮かべていた。
「メタルレイスが人の母親であるはずがないだろう。」白仮面の集団の一人が冷たく言い放ち、焔の方にも槍を向けた。ルキアは咄嗟に説明しようと思ったが、その場の空気は重く、疑念は容易に晴れそうになかった。
「やはりこいつら、怪しいですね。村へ連行して長老の前で口を割らせましょう」集団の一人が、物騒な言葉を口にした。ルキアたちは両手を縛られ、心の中の驚きと不安は隠せない。目隠しをされた表情からも、その感情が表れていた。
その後ルキアたちは、白仮面の集団にアキホカ村へと連行された。未知の場所へ向かう不安に怯えながらも、ルキア達は視覚以外の感覚を頼りに、周囲の変化を感じ取ろうとしていた。心の中で何が待ち受けているのかを考えてみたが、答えは見つかるはずもなかった。
アキホカ村の長老の部屋に到着すると、全員の目隠しが外され、手を縛っていたロープが
ルキアたちは、何が起こるのか全く分からないまま、ただその場に正座させられていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます