第二十三話 弾と刃の交錯
「この新型弾、早く試してみたかったんだ。」ニックはポケットからカートリッジを取り出し、グレネードランチャーにスライドさせて装填した。安全装置を外し、発射の準備を整える。重厚な四キロはありそうな銃火器を手際よく扱うニックを見て、ルキアは驚きの表情を浮かべた。
「へぇ、言ってなかったっけ? 親父は元軍人で、銃の扱いくらい覚えておけって教えられてたんだ。」ニックは素早く発砲準備を整えながら、静かに語った。
「なるほど。」ルキアはニックの技術とその背景に感心しつつ、緊張感を保った。
「この攻撃を、奴らの仲間が仕掛けたものだと勘違いしてくれるといいんだけどな。」ニックはアサルトライフルのグレネードを、メタルレイスの頭部に当たるよう慎重に狙いを定めた。
「グレネードの発射と同時に斬り込む。」ルキアは背負った刀を静かに抜くと、刀身がきらりと光った。その動きはまるで戦場に舞い降りた戦士のようだった。
「ルキア、間違っても殺すなよ。あんなやつらでも、同じ人間なんだから。」ニックは真剣な眼差しでルキアを見つめた。
「ああ、わかってる。」ルキアは頷き、静かに刀を構えた。
「じゃあ、始めるぞ。」ニックはアサルトライフルを構え、目標に向け引き金を引いた。
ドンという発射音が響き、ニックの銃からグレネードが飛び出した。少し遅れて、ボンッという音とともに着弾し、煙が立ち上がった。メタルレイスの一体がその場に倒れ込み、周囲に混乱をもたらした。
「お前ら、裏切ったのか!」メタルレイスの叫びが響き、構えた武器が火を吹いた。メタルハンターの一人はあっさり頭を吹き飛きとばされて、その場に崩れ落ちた。
残りのメタルハンター二人は瞬時に散開し、素早く物陰に隠れた。ニックはその様子を見て、嬉しそうにガッツポーズを取りながら、再びアサルトライフルを構え引き金を引いた。
ルキアはニックの援護射撃を受けながら、刀を下段に構え、音もなく切り込んでいく。ルキアの動きは優雅でありながら、致命的なまでに正確だった。メタルレイスは赤い目を光らせ、グレネードが飛んできた方向を探し始めた。メタルレイスはアサルトライフルの硝煙と熱源を感知し、ニックの方へと向かってゆく。
「あれ? 新型弾、ほとんど効果がなかったな。中にアルミの粉が混ぜてあったんだけどな。改良が必要だなあ。」ニックはため息交じりにそう言いながら援護を続ける。
「え! こんな時に、実験してたのか?」ルキアも応戦している。
「こんな時だから、実験したの!」ニックは、グレネードを交換すると、どさくさ紛れに巨大戦車のキャタピラを狙った。
「どうして俺たち、二か所から攻撃されてるんだ?」メタルハンターたちは混乱していたが、小柄な男は切り込んでくるルキアに狙いを定め、発砲した。
ルキアは刀の角度を瞬時に変えて、弾を受け流すと、そのまま小柄な男の懐に飛び込んだ。踏ん張った軸足に体重を乗せ、下から上へと切り上げる。鋭い刀の切っ先が小柄な男の右腕を見事に捉え、右腕はあっさり切断されて、武器の引き金を引いたまま空中へ舞い上がった。
「ダダダ!」引き金を引いたままの銃が、発砲しながら回転している。男は残った左手で、緑色の液体が吹き出す切断面を押さえたまま、うめき声を上げてその場に倒れ込んだ。
「安心しろ、ルキア! こいつら人間じゃない! 何も遠慮しなくていい!」ニックはバリバリと、無差別に銃を撃ち続けながら叫んだ。
メタルレイスがニックの方へ近づくと、ニックは武器を持った腕の付け根を狙い撃ち、次に脚のつなぎ目を標的にした。ためらいなく引き金を引き続け、メタルレイスの動きを封じ込めた。
「キン、キン、カン、ドンッ!」という音と共に、アサルトライフルの弾がメタルレイスの左脚を破壊し、巨大な体がドスンと音を立てて倒れた。周囲には煙と破壊された兵器だけが転がっている。
「なんだか、雲行きが怪しいぞ……。」リーダー格の男は呟きながらも、何か策を思いついたのか、ニヤリと笑った。計画がどう転ぶのか、戦闘の行く先はまだハッキリしない。
戦闘がひと段落つくと、辺りは不気味なほど静寂に包まれた。緊張感が漂う中で、次の動きが予感される。
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