第十六話 後悔
屋根裏部屋へと上がった二人はすぐにベッドに横になった。
クラヴィスは、疲れていたのか横になるとすぐに寝息を立てていた。なかなか寝付けなかったルキアは隣でスヤスヤ寝ているクラヴィスを起こさないように屋根裏部屋の窓から小さなベランダにでると座り込んだ。
ルキアがそっと布団を抜けた気配を感じたクラヴィスは、布団を根け出しベランダへでた。
月夜の下で夜風にあたり、真剣な顔つきをして、しゃがみこんでいた。戸惑いながらもルキアの隣にしゃがみ込むとそおっと声をかけた。
「マグナおじさんのこと、考えてたの?」
「うん。もしあの時、僕が街に残っていたら、父さんは助かったかもしれない。僕がもっと強ければ、四ツ目の百なんて倒せたんだ。父さんが何と言おうと逃げ出さなければよかったんだ」ルキアは、膝を抱え込みながら肩を震わせ咽び泣いている。
「もし、あの時ルキアが街に残って戦っていたとしても、無駄に命を落としただけよ。マググナ叔父さんを討った相手に勝てたと思うの?」
「そうかもしれないけど…………」
「悪いけど、玉砕戦法なんてだめよ。生き残る方が先決じゃない。マグナ叔父さんは、ルキアの額のアザの意本当の意味を知っていたのよ」
「だから、どうしても僕らを街から逃がしたかった」ルキアは唇をかみしめた。
「仮に私たちがあの場所にいなかったとしても、マグナおじさんなら、最後の一人になっても戦い抜いたはずよ」
「ルキアのことだからどうせ一人で仇を取ろうと思っているんでしょ?」クラヴィスはそっとハンカチを差し出すと、ルキアは俯きながらハンカチを受け取った。
「うん。でも、怖いんだ。これからどうやって『四つ目の百』を倒すんだよ。あんな化け物を相手にするなんて、自分から死地へと向かうようなものだよ」ルキアは珍しく弱音を吐いた。
「ルキアのいう通りかもしれない。でも、どうしていつも一人で抱え込もうとするの? 私もニックもいるじゃない。それに、初めて私を見た時の、あの口ぶりは私の母さんについて何か知ってるわ。だから、私の敵でもあるわ」
「クラヴィスは、だんだん強くなってくな」
「魔女になるつもりだしね」クラヴィス嬉しそうだった。
「みんなで束になって戦えば、必ず仇を取れると思うわ」いつもと違う気迫のこもったクラヴィスの言葉に、ルキアは心が揺れた。
「そうだったね。僕は一人じゃなかったね」ルキアは父の仇である『四つ目の百』を探し出して必ず倒すと心に誓った。
「よかったぁ」
「なにが?」ルキアが尋ねた。
「だって、わたし。ルキアって絶対に泣かない人だと思っていたから。初めてルキアの泣いているとこ見れたし、なんか得したって感じ」クスクス笑っている。
「あのね。それって悪趣味っていうんだけど」
ルキアは、クラヴィスが貸してくれたハンカチで涙を拭うと、思い切り鼻をかんだ。
「それとね。そのハンカチ返さなくて………いい」
「ツァローニさんの言う通り、ラナティスの街を離れることにするよ。どうにかして『四ツ目の百』を探し出すよ」ルキアがいった。
「わたしも、ラナティスの街から離れた方がいいと思う。わたしは、ツァローニの元で魔女修行をして、魔女になるわ。魔女になったら必ず合流するから。魔女になれば、父さんの失踪や母さんについて、何か分かるかもしれないし」
「ニックは大丈夫なのかな? 企業秘密とか言ってたね」クラヴィスの口元がゆるんだ。
「あいつの生命力は『太古の昆虫ブリーゴ』並みだから、必ず生きてると思うよ。明日はニックを探しながら西へ向かうよ」ルキアは褒めた。
「うん。ニックの方も、わたし達を探してたりしてね」
「そろそろ寝よっか」
「うん」
二人は部屋に戻ると、布団に入った。
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