VS魔王軍(第2戦)

青い空、碧い海、白い砂浜、まぶしい太陽、冷たいデザートにキンキンに冷えたアルコール。

魔王軍と黒魔団の対抗戦はその舞台を南のビーチリゾートに映して今開始されようとしていた。


とはいえ、誰が好き好んでバカンスを楽しむ場所でバトルをしようと思うだろうか?

その回答は浜辺にあった。

浜辺に立ち並んだビーチパラソルの作り出す涼し気な空間の下、ビーチチェアで気持ちよさそうに寝そべっている女性陣が見える。


その周りでは、真夏の日差しの下ウエイター服に身を包んだシュウ一人が、甲斐甲斐しく彼女たちの世話を焼いている。

黒魔団の中でダントツに家事スキルの高い彼が、ああもこうもなく強制的に従事させられているのだ。


「シュウ、チョコパフェが食べたい」

「畏まりました、セラお嬢様」

「オレにも同じものを、バケツでな。それとロックのスコッチをジョッキで」

うつ伏せで寛いでいる真っ赤なビキニの魔王ゼパルースが、当たり前のようにオーダーする。

「ちったあ遠慮しろよ、ルース。敵だろお前」

「固いこと言うなシュウよ。今回オレは休みだ。こんなところまできて汗臭い野郎どもとやってられるか!」


「お前たちの相手はホレ」

ゼパルースは波打ち際の方向に顎をしゃくる。

「あ奴らで十分よ」

その先には魔王軍の紋章の入った揃いのブーメランパンツを穿いた屈強な魔人の一団が、やる気満々でウォーミングアップしている。


「あたい大ジョッキで冷えたエールが欲しいな」

オレンジのチューブトップと食い込みがえぐいボトムにサングラスのクメールが手を挙げて注文する。

「あたしわぁ、大盛アイスねぇ。フルーツたっぷりでお願い。ベルにはちっちゃいのねぇ」

ピンクのフリル多めのセパレートで、寝っ転がって魔導書を読んでいるミーナが続く。

日ごろ運動しないため、まるっきり日光にさらされていない白い肌が目に眩しい。

横では同じデザインで白の色違いを着たベルが団扇でミーナを扇いでいる。

「私はミルクたっぷりのアイスコーヒーを頂いてもいいでしょうか」

黒髪黒目によく映える白の控えめなワンピースを着たユキがおずおずと訊ねる。

「テキーラサンセットをダブルで頂戴な、シュウさん」

布面積の少ない黒のモノキニを妖艶に着こなすシナモン姉さんは目のやり場にとても困る。

「ワタシもお願いしてもいいですか?」

ユキとおそろいで黒のワンピースを着たトーカがおずおずと訊いた。

「いいとも、何でも言ってみな」

「メロンソーダフロートを、一度飲んでみたいです」

「かわいい注文だなあ。あっちのねーちゃん方に聞かせてやりたいぜ、全く」

「「「「あ”!?」」」」

「タダイマゴヨウイイタシマス。シバシオマチクダサイ、オジョウサマガタ」

棒読みで答ると、シュウは頭の中で注文を反芻しながらサービステントへそそくさと退散したのだった。


「コキ使ってくれるぜ、ウチのお姫様方は。まあしゃーない、汗臭い野郎どもと漢祭りやるよりはマシだし」

手早く注文された品と作ると、端からストレージに放り込んでいく。

全てを作り終え、一息ついて自分用に淹れたコーヒーを飲む。

真夏でも熱いコーヒーを飲むのが、コーヒーに対する彼の流儀だった。


対抗戦の会場を眺める。

まったくもって、ビーチでまったりするのにお誂え向きのロケーションだ。

何の因果であくせくしなきゃならんのだろうねぇ、と黄昏ていると、ふと視界の端に

選手控え用テントの中にいる、ひどくうなだれた4人が目に入った。

対抗戦が始まる前から、心が折れているのがありありとわかる哀愁漂う背中をしている。

「今日のバトルは、ビーチフラッグ、ビーチバレー、ビーチラグビー、ビーチフットサル、ビーチレスリングのビーチ近代5種か。あいつら五体満足で帰って来るといいけどなぁ・・・」


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