幕間ー新歓パーティー
ミーナには連絡を入れていたので、拠点に帰ったときはすっかり日が暮れていたが、依頼の無事完了と新しい仲間の歓迎パーティーの準備を整え、ミーナとベルがシュウたちを迎えてくれたのだった。
「みんな、お酒は行き渡ったよねー」
クメールが声を張り上げる。
「なんでお前が仕切るんだよ」
シンが文句を言うがそんなことはだれも気にしない。
「遠征も何とか乗り切ったし、仲間も2人増えた。みんなお疲れ、乾杯!」
「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」
景気づけの一杯を一気に飲み干すと後は無礼講だ。
各々勝手にやり始め、開始早々カオス状態に突入した。
そんな中でもベルが甲斐甲斐しく給仕をしている。
主人に似ず本当にいい子だ。
「ねえ、あなたたちのこと教えてくれないかなぁ」
ミーナとクメールは既にユキとトーカにロックオンしている。
エイコーとケイが物凄く心配そうな表情で遠巻きに見ている。
「私はエイコー様のサポートスキルのユキです」
「ワタシはマスターのサポートスキルのトーカです」
「「どうぞよろしくお願いします」」
2人はガチガチに緊張して自己紹介する。
この二人には決して逆らうなシンとケイから言い含められていたのだ。
「あたいはワーキャットのクメール、メルでいいよ。そんでこっちが魔女のミーナ。この店兼拠点のオーナー」
「メルはぁ、現役最強のとぉっても強くてかわいいハンターでシンの奴隷さん。でもシンとメルはとぉってもラブラブなのよぉ」
「キャッ、照れちゃう。でもあんただってシュウといい感じじゃん?」
「あたしたちはぁ、そんな関係じゃないわよぉ。清く正しいお付き合いってヤツ」
「ドロドロ真っ黒な関係じゃなかったの?まあいいや。それよりあなたたちはどうなの?」
と予備動作なしにユキたちに振る。
「エイコー様に尽くすために生まれたスキルですので、それ以外の感情はありません」
「マスターのお役に立つことのみがワタシの存在意義です」
「固ったいわねー、二人とも。そんなんじゃご主人様は喜ばないわよお」
「そうそう。せっかくぅ、いいモノ持ってるのに残念ねぇ」
「さあさあ二人とももっと飲んで。あんたたちの胸の内を洗いざらいぶちまけなさい」
「あたしはぁ、トーカちゃんとケイの馴れ初めが聞きたいわぁ」
「あたいも聞きたい。それとユキ、あんたエイコーとはどうなの?その後進展した?」
「そんな、私恥ずかしくて言えません」
「初心なのねぇ。可愛いわぁ」
「ワタシはマスターのお手伝いをしていただけで、他には何もしていません」
「う~ん、何かが違うのよねえ。きっと二人とも生まれたばかりで、まだ色々と未発達なのよ」
「それじゃぁ、あたしたちでぇ、教えてあげなきゃねぇ」
「手取り足取り?」
「教科書も使ってねぇ」
ミーナの手には薄い本が何冊か抱えられている。二人は顔を見合わせて、ウフフフ…と黒い笑みを漏らすのだった。
ミーナとクメールが不埒な計画を練っていた時、当のスキルの持ち主であるエイコーとケイといえば、二人でスキルの検証をしていた。
今のところサポートスキルを発現しているのはこの二人しかいないので。当然の成り行きだった。
2人のサポートスキルの特性など細かく比較すると、共通点が浮かび上がってきた。
サポートスキルとはいっても、どうやら本体のユニークスキルとは独立して行動できるようだった。
当然といえば当然で、サポートスキルの役割は、持ち主がユニークスキルを効率的かつ効果的に運用するためのガイドであり、条件を整える助手のようなものだ。
本体を起動しなければ行動できないのであれば、運用に支障をきたしてしまう。
最悪の場合、持ち主がスキルを行使できないうちに死亡する場合も有りうるのだ。
行動面では、独立して行動可能なのであれば、顕現に際しての制限もない。
一種のアバターともいえるユキとトーカには、エイコーとケイの嗜好が色濃く投影されていることは言うまでもない。
彼らが生身の人間と同様に、サポートスキルと交流を持ちたいと望んだ結果、二人には基本的な生理機能が備わっていた。当然飲食も可能である。
とはいえ、根本的には彼女らは、持ち主たちから供給されるマナによって自身を維持していることに変りはは無く、その点では妖精族に近いのもがあった。
彼女たちの状態はを表すとすると、力の顕現が一番近い状態であり、実のところそのことが彼女たちにとって大きな不満の種だった。
しかし、能天気な持ち主たちはそのことを全く知る由もなかった。
肉体を持たないサポートスキルとはいえ、顕現している時にダメージを受ければ、消滅してしまう危険性もある。
そのため緊急時には顕現を解いて、二人の持つアンカーに避難することで危険を回避できる仕様になっていた。
シュウの腕時計やシンのタブレットと同様、エイコーのスマホとケイの白衣にも不壊の属性が付与されている。
それをやったのは使者で間違いないだろう。
ただ、スキルが事物に依存するとは考え難い。
その目的だけに付与されたと考えるのは早計だろうが、彼らには知る術はなかった。
パーティーがお開きになり、ユキの時と同様に、トーカはケイと同室だととミーナに宣告された。
家主権限の乱用である。例によって同じドタバタが繰り返されたがここでは割愛しよう。
黒魔団が9人になった。
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