第6話
負けました。
完全敗北だ。
2人の無慈悲な妹達に僕のアンヌは攫われてしまった。
猛抗議をしたけど全く聞く耳を持ってくれなかった。
もはや問答無用だった。
アンヌの貞操を守ると言う大義名分の前には僕は無力だった。
クリームシチューを食べさせて貰えたのが唯一の救いだった。
せっかくの僕の癒しだったのに……
癒しを失った僕は別の癒しを求めて秘密基地の大浴場へと向かった。
やっぱりここの大浴場は最高に気持ちいい。
一人でのんびりと入っていたら脱衣所に人影が見てた。
スミレだ。
「入ってるよ」
「知ってるわ」
そう言いつつスミレは入って来た。
当然の如くお風呂だから全裸だ。
「久しぶりね」
「そうだね。
久しぶりだね。
それはそれとして、なんでいっつも僕が入ってると入って来るの?」
「ダメかしら?」
「いやダメとかでは無いけどさ」
「ならいいわよね」
そう言ってスミレはゆっくりと近づいて来る。
相変わらず一切非の打ち所がない超絶美人で視線が吸い寄せられる。
スミレは僕の隣に座ると僕の片腕に両手を絡ませて体を密着させて来る。
胸の谷間に挟まれた腕からとても柔らかい感覚が全身を駆け巡った。
「ちょっとスミレ。
当たってる」
「ふふふ。
どこが当たってるの?」
そう言いつつ更に密着して来る。
小刻みに動くにつれて柔らかい感覚が更に鋭敏に感じられた。
「わかってるよね?」
「もちろん。
だって」
更に密着度が上がって行きスミレは唇が触れるんじゃない程耳元に近づいて囁く。
「当ててるのだから」
背筋にゾクゾクと何かが走る。
これはヤバい。
理性が吹き飛ぶ。
逃げないと。
と思ったのにスミレが手も太ももに挟んで来て逃げれなくされた。
手と腕両方から感じられる柔らかさスベスベさが僕の理性をタコ殴りにして来る。
「なんで逃げようとするの?」
更にこの耳元での囁きが追撃して来て、僕の理性はグロッキー状態だ。
「そんなに私と一緒は不満?」
「不満とか無いよ。
だけど……」
「だけど、なに?」
「ちょっと離れない?」
「どうして?」
「どうしてって……
ちょっ」
スミレが胸と太ももを小刻みに動かす。
あくまでも自然に。
でも大胆に。
「スミレ。
ちょっとストップ」
「そんなにいいの?」
「それは……」
「良くないの?」
「いいよ。
凄くいい。
良すぎて良くないから」
「そろそろ私を抱きたくなって来た?」
ヤバい。
これはヤバいって。
なんなの?
なんでこんな事するの?
意味わかんない。
頭が沸騰しそう。
とにかく腕を抜かないと。
「あんっ!」
手を抜こうと少し動かしたらスミレが凄くエロい声を出した。
わざとだ。
絶対にわざとだ。
わざとだとわかっているのに効果は抜群だ。
「急に動かさないで。
乱暴なんだから」
僕の手がスミレの体に更に深く沈んで行く。
その感覚が理性を追い込んで行く。
もうKO間近だ。
「スミレどうしたの?
なんでこんな事するの?」
「ねえ、ヒカゲ」
「な、なに?」
「そろそろ私を抱いて」
「抱かないよ。
わかってるでしょ」
「でも抱きたいでしょ?」
「そんな事は――」
「嘘。
だって体は正直よ」
スミレは僕の下半身にチラッと見てから言った。
「私はきっと抱き心地いいわよ。
その為に努力して来たもの。
あなたが私は超絶美人になるって言ってくれたからよ。
そんな私でも抱きたく無いの?」
「あー、もうっ。
抱きたいよ。
もちろん抱きたい。
抱きたいけど抱かないからね。
それが僕の美学なの。
スミレが一番わかってるでしょ」
「でも私はあなただけの為に努力して来たの。
だから全てあなたの物よ。
好きにしていいのよ。
あんっ!
ちょっとヒカゲ。
そんなに激しく動かさないで」
「動かして無い。
抜こうとして少し動かしただけでそんな大袈裟に言うな」
「あんっ!
そんなに激しくされたら私……
んんっ!」
「なら放してよ。
なんで更に強く締め付けるの?」
「んっ!
んんっ!
あっ!」
「エロい声出すなよ。
てか僕動かしてないよね?
今、自分から動いてるよね?」
「ふふふ。
バレた?」
「そりゃあバレるでしょ」
「もうそろそろ抱きたくて仕方ないんじゃない?」
「本当にどうしたの?
今日はしつこいよ」
「だって今日は本気だから」
スミレが僕の耳に軽く息を吹きかける。
もう全身にゾクゾクが走る。
その様子にクスッとスミレが笑った。
「ギブアップ。
もう無理。
我慢の限界だから勘弁してよ」
「じゃあ抱いていいのよ」
「本当に無理だってば。
美学に反するんだってば」
「私はこれから先あなた以外に抱かれる気はないの。
つまりヒカゲが抱いてくれないと私は女の悦びを知る事は無いわ。
私から女の悦びを奪うって美学に反しない?」
とんでも無く事言って来やがった。
いかにもそれっぽい事言ってるし。
なんかいつの間にかスミレの手がソフトタッチで僕の体の表面を撫でて来てるし。
もうこうなったら逃げるしか無い。
僕は無理矢理腕を引き抜いて脱衣所に逃げ込んだ。
ヤバかった。
もうそれしか言えん。
まだ心臓がバクバクしてる。
「逃げなくてもいいじゃない」
おいおいおいおい。
脱衣所まで追いかけて来たぞ。
なんなのこの執念?
意味わかんないよ。
とにかく逃げる。
それしか無い。
僕は服を持って脱衣所からも逃げ出した。
◇
癒しを求めて行ったのに性欲が溜まるだけって事ある?
ありえないよね?
あれはヤバいって。
リリーナの誘惑もヤバかったけど、それとは違うヤバさがあった。
何が何でも理性を壊す気だった。
いやむしろ殺す気で来てた。
しばらく会わない間に一体何があったの?
これは心を落ち着けないと。
とりあえずこの何も無い森の中で大自然を感じながら心を落ち着かせよう。
「どうして逃げるの?」
「ここまで追いかけてくるの?
っておいっ。
なんで何も着てないんだよ。
ここは屋外だよ」
「そんなに私が嫌なの?」
「嫌とかじゃなくて、ってその前に服着なよ」
「どうしても抱いてくれないのね?」
「一体どうしたの?
スミレらしく無いよ」
「もういいわ。
あなたが身内を抱けないと言うのなら」
スミレの全身を魔力が包む。
そしてその魔力は濃い紫色のボディースーツへと変わった。
あれはスミレの戦闘スタイルだ。
「私はあなたの敵になるわ」
スミレが剣を生成して切り掛かって来た。
僕も慌てて刀を生成して受け止める。
「何言ってるの?
意味わかんないよ」
「だってあなたは敵なら犯してくれるでしょ?」
「するわけ無いじゃないか」
「さあ、私を屈服させて。
ねじ伏せて陵辱して。
思う存分犯して」
スミレの蹴りが僕の鳩尾に入って後ろに飛ぶ。
両足で地面にまっすぐの筋を作りながら着地する。
「犯してくれないと殺しちゃうぞ♡」
なんか目が完全にキマっちゃってるよ。
なんでなんで?
なんでヤンデレ化してるの?
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