第2話
せっかくの休み。
しかも僕だけ特別な休み。
更にはアンヌが居ると言う特典付き。
これは有意義に使わないと勿体ない。
「ご馳走様でした」
アンヌが朝食を食べ終えて行儀良く手を合わせた。
「やっぱりヒカゲ君のお料理は美味しいですね」
「大した物は作って無いよ」
「今度お料理を教えて下さいね」
「今度と言わずに今すぐでもいいよ」
「そうしたいのは山々なのですが、もう出ないといけませんので」
「えー、アンヌどっか行っちゃうの〜」
「はい。
急に押しかけてしまって今晩の宿も決まっていませんので」
「ここに止まったらいいよ。
むしろずっと住んでもいいよ」
「それだとヒカゲ君の迷惑になってしまいますから」
「そんなのいいよ。
迷惑なんてなにも無いよ」
「それにヒカゲ君にエッチな事されそうですし」
「そんなのするに決まってるじゃないか」
「そこは否定しなさい」
「えへへ〜」
「そうやって笑って誤魔化すのは悪い癖ですよ。
直しましょう」
「はーい」
僕は手を挙げて元気よく返事をする。
アンヌは疑わしそうに見てるけど、僕はニコニコ顔で誤魔化しておく。
「でもさアンヌ。
他所で泊まるなんてお金勿体ないよ」
僕は理論的に攻めてみる。
なんとしてもアンヌには泊まって欲しい。
そしてもっとセクハラしたい。
「大丈夫ですよ。
私は結構稼いでいますから」
「セキュリティ的にも僕と一緒の方が安全だよ」
「セキュリティのしっかりしたホテルに泊まります」
「それでも僕と一緒の方が安全だよ」
「ヒカゲ君と一緒だと違う意味で身の危険を感じます」
「……」
「なんで黙るのですか?」
「そんな事あるよ」
「なんで否定出来ないんですか!」
くそ〜
理論的には勝てない。
でもここで諦める訳にはいかない。
こうなったら次の手だ。
「ヤダヤダヤダ〜
アンヌ泊まってよ〜」
「ちょっとヒカゲ君!?
そんな子供みたいに駄々こねるなんて、何やってるんですか!」
「だって〜
アンヌが出て行くって言うんだもん」
「出て行くって言われましても、私はここに住んでる訳では無いので」
正しく正論だ。
駄々を捏ねてもダメなら最終手段だ。
「うわーん。
やっぱりアンヌは僕の事嫌いになったんだ〜」
「なんでそうなるのですか!?」
「ぐすん。
だってアンヌは僕が嫌いだから出て行くんだ」
「嫌いじゃないから泣かないでください」
「でも出て行くんでしょ?」
「そもそも出て行くって言うのが――」
「やっぱりアンヌは僕が嫌いなんだ〜」
「わかりました、泊まります!
しばらくここに滞在します!」
「やったー」
やっぱり最後の決め技は泣き落としだな。
アンヌは優しいから効果覿面だ。
「そのかわりエッチな事はダメですよ」
「え?」
「なんですか?
その『え?』は?」
ジトーとした目でアンヌが見てくる。
そんな目で見られたら興奮しちゃうよ。
「ヒカゲ君はエッチな事しか考えて無いのですか?」
「てへっ」
「やっぱり貞操の危機を感じるので辞めます」
「ヤダヤダ。
嘘だよ〜
嘘だから泊まってよ〜」
「ならエッチな事しませんか?」
「……」
「ヒ・カ・ゲ・君」
「……我慢する」
「はっきり返事出来ないのなら――」
「え〜
頑張って我慢するからさ〜
お願いだよ〜」
「もう、仕方ないですね」
「やったー
アンヌと同棲だー」
「同棲とは違うと思うのですが……」
アンヌはため息混じりにそう言うと、出掛ける準備を始めた。
「えー、アンヌ出かけちゃうのー」
「はい。
エルザのお見舞いに行こうかと。
私の所為で大怪我したような物ですし……」
「それは違うよ。
悪いのは間に合わなかった僕なんだよ」
「そんな事無いですよ。
私はヒカゲ君にとても感謝しています」
「えへへ〜」
「エルザのお見舞いにヒカゲ君も行きますか?」
「行くー
アンヌとデートだー」
「お見舞いをデートなんて不謹慎ですよ」
「えへへ〜
じゃあお見舞いの後デートしよ〜」
「それならいいですよ」
「やったー
デートだー
最後はホテルに行こう」
「行きません!」
「朝までたっぷり気持ちよくしてあげるね」
「さっきまでの泊まりのくだりいらないじゃないですか!!」
「えへへ〜」
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