第9話
遂に来てしまったガオの誕生日。
遊び倒した日々も今日でお終い。
楽しい日々ってなんでこんなにすぐに終わってしまうのだろうか?
不思議で仕方がない。
まあ、なんにせよ最後にして1番のメインイベントといこうでは無いか。
スタジアムの中心には大きなダイヤモンドの原石。
その近くで仁王立ちで待ち構えるガオ。
観客席にはこの一戦を見ようと集まった国民達が集まっている。
会場の全員が僕が来るのを今か今かと待ち侘びているに違いない。
僕はナイトメアスタイルに変身してスタジアムに隕石の如く着地した。
轟音と共に土柱が上がると同時に会場から割れんばかりの歓声が上がった。
てっきりアウェイだからブーイングでもされるのかなと思っていたのに、むしろ歓迎ムードなのにはビックリだ。
「来たかナイトメア!
待ち侘びたぜ!」
「猛ける獣皇よ。
此度は御招待して頂き感謝する」
「おうよ。
俺様は来てくれた事に感謝するぜ」
「ではその原石は頂いて行く」
「おっと、そうはいかねぇ。
それは俺様に勝ってからだ」
ガオが構える。
それと同時に魔力が高まっていく。
前よりも凄まじい魔力が溢れ出ている。
僕も短く息を吐いてから気力を巡らせて身体強化を行う。
そしてお互いに同時に動く。
次の瞬間、僕達の拳はぶつかり合っていた。
その衝撃に空気が震えて、客席から大きな歓声が上がった。
純粋に楽しんでいる感じだ。
「針の筵になるかと思って来たのだがな」
「俺様達獣人は強い奴に敬意を持って接するのさ」
迫るガオの爪を躱してボディーに拳を叩き込む。
それに怯む事無く来るガオの爪を紙一重で避けて距離を取った。
はずなのに、もう目の前までガオが来ている。
再び迫り来る爪を躱し拳を叩き込もうと前に出た所にガオが合わせて爪を突き出して来た。
拳を緩めてガッチリと組み合うようにして止めると同時に、反対の爪が来たから同じように止めた。
お互い一歩も引かない押し合いに発展する。
そうなると天性のフィジカルの差からして分が悪い。
「これが狙いか?」
「そう言うこった。
お前の攻撃は速ぇ。
とても避けらんねぇ。
なら受け止めてパワーで押し切る」
「肉を切らせて骨を絶つという事だな」
「なんだそれ?
そんな難しい事言われてもわかんねーが、このまま押し切ったら俺様の勝ちって事でいいよな!」
ガオが更に力を込めて押して来る。
ズルズルと押されて両足の跡が真っ直ぐと伸び始めて来た。
ガオが徐に大きく口を開けた。
鋭い牙が僕の首を狙っている。
僕は後ろに倒れ込んで避けると同時に巴投げの要領でガオを真上に思いっきり投げ飛ばした。
そしてすぐに立ち上がってリボルバーを生成して上空のガオに銃口を向ける。
「ガォー!!!!」
押し潰されてしまいそうなガオの雄叫びが衝撃波となって僕にのしかかる。
それを振り切って後ろに大きく飛ぶと同時に僕がいた所の地面をガオの飛び蹴りが砕く。
ガオ目掛けてリボルバーを発射するも華麗な横ステップですり抜けて一瞬で距離を詰められた。
そしてガオが振り上げた右腕を振り下ろした。
が、それは空振りに終わる。
ガオが上空に逃げた僕を見上げた。
「人間って空を飛べるのか?
知らなかったぜ」
「コツさえ掴めばそんなに難しい事では無い」
「俺様も飛んでみたいものだぜ」
ガオがジャンプして真っ直ぐ突っ込んで来る。
だけど直線的な動きだから簡単に避ける。
僕はそのまま原石の元に降りて手に取った。
「しかし一方的に飛ぶと言うのはフェアーでは無いな。
せっかくこんな舞台を用意して頂いたのにルール違反とも言える」
本当は肉弾戦だけのつもりだったんだけどね。
ガオは今までの戦いから学んでしっかり対策を取って来てたわけだ。
武器も使わされて空まで飛ばないと危なかったって事は僕の完全敗北だね。
「気にする事は無いぜ。
そんな事を言ったら俺様の方が圧倒的に有利な条件で始まってるんだ」
「いやいや。
ここは大人しく負けを認めよう。
だが、これは参加賞として頂いて行くぞ」
僕はダイヤモンドの原石を掲げる。
太陽の光が当たって更に綺麗だ。
「おいおい。
それは俺様に勝ったらくれてやるって言ったはずだぜ」
「予告状に書いたはずだ。
頂くと。
勝ち負けなど関係無い。
俺は悪党だ。
欲しい物は奪う。
そして逃げる」
「なるほどな。
第二ラウンドは追いかけっこってわけだ!」
ガオが土埃をあげて突進して来る。
僕は上空に飛んで逃げる。
はずだったのに上空からダブルセイバーが回転しながら僕目掛けて飛んで来たから避ける。
「逃がさない!」
僕が避けたダブルセイバーをキャッチしたクリファが突っ込んで来た。
素早く刀を魔力で生成して受け止める。
「これは煌びやかな巫女よ。
どうした急に」
「ガオーン陛下の用意した舞台に出るのはお門違いだと思って見ていた。
だけど逃げるとなるなら話は別だ!
お前は今、ここで殺す!」
「おいおい。
そんな熱烈なアプローチなんてされたらときめいてしまうではないか」
クリファは無言で絶え間ない連撃を繰り出して来る。
片手に原石を持ったままでは若干押され気味になってしまうほどの連撃だ。
僕は刀とダブルセイバーがぶつかった瞬間に魔力を爆破させて距離を取る。
「いいだろう。
何人相手でも俺のする事は変わらん。
逃げるのみだ」
僕は反転してスタジアムを飛び出した。
後ろからクリファが。
地上からガオが追いかけて来る。
勝負には負けたけど逃げ切ってやるぞ〜
なんたって僕は逃げるのが得意だからね。
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