第8話

出来た〜

出来たよ〜

このブレスレットは会心の出来だ。

流石アンヌのデザインだ。

凄くセンスがいい。


「ダイヤモンドみたいな硬い物をあんな簡単に加工出来るなんて、ヒカゲ君は凄いですね」


出来上がったブレスレットをマジマジと見ながらアンヌが感心していた。


「僕にかかれば簡単だね」

「ダイヤモンドの原石を見せられた時はてっきりプロに加工をお任せすると思ったので、かなり凝ったデザインにしたのですが……

ここまで再現出来てるなんて本当にビックリです」

「えへへ〜

アンヌに褒められちゃった」

「今度から難しい加工はヒカゲ君にお願いしようかしら?」

「いいよ〜

アンヌのお願いならなんでも聞いちゃうよ」

「ふふふ。

では今度お願いしますね」

「はーい」

「それでヒカゲ君。

そのブレスレットはプレゼントですか?」

「そうだよ」

「誰にプレゼントするのですか?」

「僕がプレゼントするわけじゃ無いよ。

ガオが初恋の人にプレゼントするんだって」

「それは素敵ですね」

「そうだよね〜」

「初恋が実るといいですね」

「前途多難みたいだけどね」

「そうなのですか?」

「それがね。

なんかお互いめんどくさい事に囚われてるんだよね〜」


本当にめんどくさいよね。

皇帝だからとか、巫女だからとか。

僕にはとても耐えられない。

だから悪党なんだけどね。


「それは大変ですね」


アンヌに詳しく話してあげるとしみじみと言った。


「その竜人族の里は実際はどういう所なのでしょうか?」

「さあ。

僕も行った事無いからわからないや」

「ヒカゲ君なら行けるのでは無いのですか?」

「まあ、行こうと思えば行けると思うよ」

「そうですか。

なら安心ですね」


なにその笑顔。

超可愛いんですけど。


「なにが?」

「ヒカゲ君ならきっと余計な柵を壊してくれますね」

「ん?

確かに僕は壊すのが得意だけど……

それってどう言う意味?」

「ヒカゲ君はとっても優しい子ですから」

「僕は優しく無いよ。

アンヌが優しいからみんな優しく見えるんだよ」

「そんな事ありませんよ。

ヒカゲ君は友達思いで、友達の為に一生懸命になれる優しい子です」

「僕に友達なんていないよ」


一体誰の話をしてるの?

もしかして寝ぼけてるのかな?


それにしてもアンヌは可愛いな〜

ずっと見ていたいよ。


「ところでヒカゲ君の初恋の相手は誰ですか?」

「え?

僕の初恋?」


僕の初恋か〜

それは多分義姉さんだな。

なんたって義姉さんは凄く可愛くて、凄く美人だからね。

それでいてこんな僕に超優しいんだよね。


あっ。

でもあれは夢路の時の初恋になるのか?

こっちの世界に産まれてからの初恋となると……


「僕の初恋の相手はアンヌだよ」

「えっ!?

私ですか!?

またまた。

そうやって揶揄うんですから」

「冗談じゃないよ。

本当にアンヌだよ。

と言うか今でもアンヌの事大好きだよ」

「あんまりお姉ちゃんを揶揄ってはいけませんよ」

「本当だよ〜

本当なのにな〜

だってアンヌは超可愛いし。

僕にとっても優しいから」

「そう言われると照れてしまいますね」


アンヌが恥ずかしそうに頬を赤く染める。

その仕草も超可愛い。


「照れてるアンヌも超可愛い」

「もう、ヒカゲ君ったら。

……ちなみに私の初恋の相手はヒカゲ君ですよ」

「本当に?

やったー。

って事は相思相愛だね」

「ふふふ。

そうですね」

「じゃあチューしていい?」

「それはダメです」

「えー

なんで〜?」


アンヌが僕の唇に人差し指をあてて微笑んだ。

あまりの可愛いさにキュンキュンしちゃう。


「ヒカゲ君がいい子にしてたらキスしてあげますよ」

「そんな〜

一生無理じゃん」

「そんな大袈裟な」

「大袈裟じゃないよ〜

僕がいい子になる事なんてあったら世界の終わりだよ」

「そうですか……

では世界が終わるまでキスはお預けですね」

「そんな〜」

「私の為に頑張ってはくれないのですか?」

「わかったよ」

「ならいい子に――」

「今から世界を終わらせるね」

「ダメです!

なんでそっちになっちゃうんですか!」

「だって世界が終わったらチューしていいんでしょ?」

「違います!

なんでそっちになるんですか!」

「世界終わらす方が簡単なんだもん」

「ヒカゲ君なら本当に世界を終わらせちゃいそうです」

「出来るよ。

試しにやって来てあげようか?」

「いりません!

まったくもぉ〜

キスまでの道のりは長そうですね」

「そんな事ないよ。

今すぐ世界終わらせてくるから」

「行かなくていいです!

なんでいい子になるって選択肢が無いのですか?」

「それはね。

僕が産まれた時から、いや産まれる前から悪党だったからだよ」

「本当に仕方ない子ですね。

でも私は信じてますよ。

ヒカゲ君が本当は優しくていい子だって事を」


そんな事無いよって言おうと思ったのに、アンヌのあまりに優しい微笑みに何も言えなかった。

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