第9話
学会会場では騎士達が倒れているテロリスト達の捕縛と人質の保護に走り回っていた。
全員生捕りにする事が出来て被害者も無し。
正に理想のフィナーレと言えるのかも知れない。
でも、そんな結果論など僕には関係無い。
万人が納得する結果などで納得出来るほど僕はお利口さんでは無い。
僕はナイトメアスタイルに変身して隣の部屋に入った。
「ミカン。
派手に頼むよ」
「ん」
ミカンが魔力で爆弾を生成して投げる。
壁が爆破されて僕達のいる部屋と学会会場が繋がった。
僕は爆煙に紛れて中に入る。
そして全員が呆気に取られている内にテロリストのリーダーを刀で串刺しにして仕留める。
更にリリーナを押さえつけていた2人にナイフを投げて絶命させ、爆煙が消えると同時に三人の死体を蒸発させる。
こいつらだけは僕の手で消さないと気が済まない。
僕の身内を、リリーナを傷つけた奴を絶対に許さない。
「ナイトメア!?」
僕の姿が顕になると誰からでも無くナイトメアの名を叫ぶ声が聞こえる。
それと同時に会場がパニックになった。
『動くな』
全員が僕の言霊でピタリと動かなくなる。
「ミカン。
後の処理は任せた」
「ん」
ミカンに残りのテロリストの処分と騎士達の足止め任せる。
僕にはもう1人始末しとかなくてはならない奴がいる。
僕はそいつを真っ直ぐ見定めてから跳ぶ。
そしてアポロ目掛けて刀を振り下ろした。
「はっ!」
気合いで僕の言霊から抜け出したアポロが剣で受け止める。
すかさずガラ空きになった腹を蹴ってぶっ飛ばす。
アポロはそのまま壁を突き破って屋外に飛ばされて床を転がった。
こいつは許さない。
こいつはあの時リリーナを本気で見捨てやがった。
あの時、密偵達を動かせば全てを救えたと言うのに。
そうすればリリーナが傷つく事が無かったと言うのに。
何が国の為に死ねるのなら本望だ?
それがこの国の在り方だとしても。
それが貴族としての生き方だとしても。
それが正義なんて僕は認めない。
そんな物の為にリリーナを死なせたりしない。
そんなの絶対に間違っている。
もしアポロが王となり、それが正義として罷り通る国となるのなら。
僕は僕の美学に反しようとも、今ここでお前を消す。
お前が王になる可能性をこの世界から奪う。
「消えろ」
立ち上がろうとするアポロに向かって馳せるが、その間に割って入って来た密偵に刀を受け止められた。
両サイドからは他の密偵が迫る。
僕はもう片手に刀を生成して目の前の密偵を真っ二つにして、両サイドから迫る密偵達を刀で貫く。
その密偵達は最後の力を振り絞って僕の手首を握り締めて動きを止めようとした。
そしてアポロが立ち上がり様に剣を突き出す。
それを蹴り上げて弾き飛ばしてから、密偵事刀を振り切った。
僕の刀がアポロを真っ二つにする直前、別の密偵がアポロの身体を後ろに引っ張って場所を入れ替わる。
当然の如くその密偵が代わりに真っ二つとなった。
僕は邪魔な死体を蒸発させてから丸腰のアポロに切り掛かる。
密偵がすかさずアポロの左手にまるで黒子の様に盾を渡した。
その盾によって刀は阻まれる。
次の瞬間には右手に渡されたアポロの剣が迫る。
それはもう片方の刀で受け止めた。
「そうやって下の者を犠牲にするのがお前の正義か?」
「正義かどうかなど考えた事など無い。
ただ俺は国を背負う者として常に決断をしてるだけだ」
「その決断が無駄な死を積み重ねる事になったとしてもか?」
「無駄な死などにはしない」
アポロが僕を押し返す。
少し離れた僕に数人の密偵が迫る。
「これでも無駄では無いと言うのか?」
僕は回転切りで全員を切り裂く。
一瞬にして数人の命を散る。
「これが無駄じゃないとでも言うのか?
そんな馬鹿げた話など無い」
「俺に託して散って行った命を俺は忘れない。
自らの命によって未来の沢山の国民が救われる。
そう決断した者達を無駄などと言う事を俺は許さん」
「元より許しなど得ようとは思っておらんよ。
だから何度でも言ってやる。
無駄な死だと。
そしてその決断をする者達は愚か者だ」
僕は一瞬で距離を詰める。
それに合わせて振られたアポロの剣を左手の刀で弾き飛ばす。
それから右手に持った剣を振りかぶる。
アポロを守ろうと密偵達が動き出した。
『ひれ伏せ』
密偵達が一斉に地面に叩きつけられる。
アポロは防御しようと盾を出した。
だけどそれは無駄な事だ。
2度も同じ手では僕は止められない。
僕は刀に魔力を凝縮させてオーロラ色の刃を生成する。
そのまま盾もろともアポロを一刀両断した。
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