第2話

結局僕はリリーナに連行される事になった。

こいつ本当に僕のベットに潜り込んで一晩中腕をホールドしてやがった。

しかも全裸で二の腕は胸の谷間に、手は太ももでしっかり挟んでやがった。


そのせいで動けないし、腕から指先まで柔らかい感覚するし、すぐ隣で美人な顔で可愛い寝息立ててるし。

あんなので寝れるか。

あれはもはや拷問だよ。


そして今は馬車の中。

リリーナと2人っきり。

夏にぴったりな涼しげなワンピースを着こなしている。


「ねえリリーナ。

いくら夏とは言え胸元見え過ぎじゃない?」

「なに?

そんなに気になるの?」

「そりゃあ気になるよ」

「昨晩全部見たのに?」

「君が勝手に見せたんだろ」

「昨日は暑い夜だったわね」


リリーナがわざとらしく頬を赤らめながらモジモジしだす。


「ヤった雰囲気を出すな。

夏なんだら暑いのは当たり前だろ」

「なによ。

昨晩は何もしてないってわけ?」

「してないよ」

「あんなに無防備な私に?」


何故かリリーナがゆっくりとにじり寄って来る。


「してないって」

「私には興奮しないとでも言うつもり」

「したわ。

だから一睡も出来ずに寝不足なんだよ」

「寝不足って。

一晩中起きて何をしてたのかしら?」


近い近い近い。

もう顔が目と鼻の先まで来てるって。


「ずっと我慢してたの。

あれは拷問だよ。

人殺しだよ」

「何も我慢すること無いのに」

「そりゃあするよ」

「言っとくけどこの旅行中はずっと私と同じ部屋だからね」

「なんでそんな事するんだよ。

僕を殺す気?」

「違うわよ。

私はこの旅行中に決める気だから」

「何を?」

「私のお父様は凄く奥手だったらしいわ。

そんなお父様を落としたお母様のテクニックは凄かったみたいよ」

「わかったよリリーナ。

この話はここで辞めよう。

それがいい。

僕の勘がそう言っている」

「そのお母様から色々テクニック教わって来たの」

「聞きたく無い聞きたく無い。

なにが悲しくて婚約者の両親のそんな話聞かないといけないんだよ」

「正直娘として少し引くような事もあったわ」

「ならそこで踏み止まろうよ」

「でも私は最後まで全てマスターしてきたわ」

「なんでやねん」

「当然全てはこの旅行の為よ。

沢山誘惑するから覚悟してね」


そのまま唇を奪われた。



ホロン王国の西の端にあるアークム領から南都までは距離がある為馬車で1日で行く事が出来ない。

必然的に途中で一泊する必要がある。


と言うわけで南部に入る直前の町で一泊する予定になっていたらしい。

リリーナのやつ、本当にホテル一室しか取って無かった。

しかもダブルベット。

せめてツインベットにしろよ。


もちろん僕は別に取ろうとしたけど、満室って言われた。

なんか難しい学会があるらしく、偉い学者がいっぱい来てるんだって。


「絶対知ってたよね?」


部屋に荷物を置いた時にリリーナに尋ねる。


「学会の事?

当然よ。

だって私も参加するもの」

「え?

リリーナが?」

「これからのホロン王国を担う選りすぐりの学者が集まる学会よ。

貴族達もその内容は気にしてるから結構集まるのよ。

今年はお父様が参加出来ないから私が代わりに聞いて来るように言われてるの。

だからごめんね。

明日の日中は一緒に居て上げられないの」

「そうなの?

やったー

自由だー」

「なんで喜ぶのよ!」


リリーナのボディーブローが僕を襲った。


「なにするんだよ。

痛いじゃないか」

「喜ぶのはおかしいでしょ!」

「だって1人なら殴られる事無いし」

「それはヒカゲが殴られる事するからよ」

「僕が自由が好きなの知ってるでしょ?」

「知ってるわよ。

でも私と居る方がもっと好きなのも知ってるわよ」

「そんな事無いよ」

「またまた〜

照れちゃって」

「照れ隠しじゃなくて本心」

「ヒカゲったら私の事好きで好きで仕方ないんだから」

「そう言う話を聞かない所は嫌い」

「私も愛してるわよ。

この世で1番」


なんでこんなに会話が成り立たないんだろう?

もしかして僕があっちの世界に戻ってる間に言葉変わった?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る