第6話

巨大なドラゴンの羽ばたく音が唸りをあげる。


「なんなのこいつ?」


シンシアの呟きに当然ドラゴンは答えない。

代わりに大きな口を開く。

僕はダッシュでシンシアを抱えて横に飛んだ。

すぐ後にドラゴンの口から吐かれた魔力の籠ったブレスが地面にぶつかり大爆発を起こす。


その爆風を背中でモロに受けて吹き飛ばされる。

空中で向きを変えて今度は壁に背中を強く打ちつけた。


「っぐ」


あまりの衝撃に意図せず声が漏れる。


「シンシア大丈夫?」

「何言ってるの!?

ヒカゲこそ大丈夫なの!?」

「僕?

僕は平気だよ。

シンシアが無事なら問題無い」

「問題あるわよバカ!」


シンシアはドラゴンの方を向いて魔力で剣と翼を生成する。


「許さない!」

「ちょっとストップ」


僕の静止を無視してシンシアは真っ直ぐにドラゴンに向かって飛ぶ。

だがドラゴンが大きく羽ばたいて出来た乱気流に呑み込まれた。


「キャー!」


悲鳴と共にシンシアの体は不規則に巻き上げられて天井に激突。

そのまま真っ逆さまに落下した。

そのシンシアを食おうと大口を開けて近づくドラゴンの横っ面に僕は超能力で大きな岩をお見舞いする。

その後シンシアの下に滑り込んでシンシアをキャッチした。


「シンシア大丈夫?」

「う〜

ヒカゲ……逃げて……」

『おやすみ』


意識が朦朧としているシンシアを言霊で寝かせてからすぐに治療する。


「大丈夫だよ。

目が覚めたら悪夢は終わってるから」


僕はナイトメアスタイルに身を纏ってドラゴンに殺気をぶつける。


「お前。

俺の大切な者を傷つけたって事は死ぬ覚悟は出来てるんだよな?」


ドラゴンは僕の殺気に怯む事無く大口を開けてブレスを吐き出す。


どうやらこいつには意識という物が無いようだ。


僕はシンシアをお姫様抱っこしたまま空を飛んで躱わすとドラゴンの上に回り込んで脳天に飛び蹴りをかます。

そのまま地面に叩きつけた。


「お前が何者かは知らん。

だが俺の身内を傷つけたお前に生きてる価値など無い」


僕は空中でジャベリンを生成してドラゴンの心臓目掛けて落とす。

そのジャベリンを天井の穴から飛んで来た何か回転した物が弾き飛ばした。

続けて入って来た竜の翼の生えた少女が帰って来たその何かをキャッチする。


あれはファンタジーなんかで見るダブルセイバーだ。

少女はダブルセイバーをこっちに向ける。


「貴様!

龍神様からその足を退けろ!」


銀髪で黄色い瞳の少女は小さな竜のツノが生えている。

お尻からは立派な尻尾も生えている。

最低限の布から覗くスレンダーな身体。

よく見るとなかなかいいか女じゃないか。


「龍神?

こいつがか?」


僕はもう一度ドラゴンの頭を踏み付ける。


「貴様!!」


少女が真っ直ぐ突っ込んで来る。

かなりのスピードだ。

だけどそのまま切り掛かって来るかと思ったらわざわざ僕の後ろに周りこんで切り掛かって来た。


僕は空中に飛んでダブルセイバーを躱わす。

少女はそんな僕目掛けてダブルセイバーを投げた。

回転して飛ぶダブルセイバーも違う方向に飛んで行ったと思ったらUターンして僕の背中から迫る。


それを避けると、前から迫る少女がキャッチすると切り掛かって来た。

っと思いきや、急に起動を変えて僕の顔目掛けて回し蹴り。


なんだろう?

スピードも速いし、身のこなしにも無駄が無い。

なのになんて言うか効率が悪い。

だから簡単に避けられる。


そんな事を考えていたらドラゴンが羽ばたいて空を飛んで、こっち目掛けて大口を開けブレスが吐き出されるた。

僕と少女は別れて避ける。


「おい。

その龍神様とやらがお前諸共殺そうしているぞ」

「龍神様!

怒りをお収めください!」


無駄だと思うよ。

だってこいつに意思なんて無いから。


僕の予想通りドラゴンはその言葉にも容赦なく大きく羽ばたいた乱気流を発生させる。


僕は離れてやり過ごすが少女はモロに巻き込まれる。

乱気流の中、その場で必死に耐えている少女に大口を開けたドラゴンが迫る。


僕はジャベリンをドラゴンの脳天目掛けて飛ばす。

脳天に突き刺さったジャベリンはそのままドラゴンを地面に叩きつけて串刺しにした。

ドラゴンはピクリとも動く事無く蒸発した。


あんなドラゴンにいい女を食わすのは勿体無いからね。


「貴様!

なんて事を!」


少女が僕を睨みつける。


なんかその鋭い視線が唆るな〜

癖になりそう。


「命の恩人にその態度か?

いい女だな」

「黙れ!

私は龍神様の巫女だ!

龍神様の意思とあらばこの身を捧げるのも運命だ!」


少女が猛スピードで突っ込んで来る。

今度は足を狙って横払い。


「それは残念だったな。

お前は俺によって生かされる。

そういう運命だったのだよ」


それを躱して距離を取る。


「私は龍神様を殺したお前を絶対に許さない!」

「元より誰の許しも得ようとしていないさ」

「貴様!

名を名乗れ!」

「俺の名はナイトメア。

悪夢へ誘う者だ」

「ナイトメア。

龍神様を殺した罪。

その命で償って貰う」

「悪いが今は時間が無いのでな。

また今度相まみえるた時、じっくり遊んでやる。

その身体をじっくりとな」

「黙れ外道!」


少女は怒りで顔を真っ赤にしながら突っ込んでくる。

僕は少女との間に魔力で壁を作った。


ダブルセイバーが魔力の壁を粉々に砕く。

その先には既に僕の姿は無い。


「逃げるなナイトメア!

私と戦え!」


少女の叫び声を背に僕は逃げ去った。

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