第33話 憂鬱

 雫は悩んでいた。

 昨日のこと……


 ちょっと目を離した隙に、アマンダが颯司のおち…… 下半身で遊んでいた。

 雫も昔は遊んだことがある。


 修行の後、風呂へ入っていたときに、やはり自分にない物は気になり見せ合いっことか……


 今思い出すと恥ずかしい記憶。


 自分でもまじまじ見ないところを、陸斗も……

 いえ、颯司は見ている。


「何が歌麿よ。颯司もあんな事で元気にしちゃって……」

 話を聞けば、いわゆる事故だが、颯司も抵抗せずにあんな……


「男の子だし、興味があるのよね」

 そう言ってうじうじと。


 あれを見たのが、朱莉なら昨夜のうちに、颯司の部屋へと突入をしただろう。


 そう、この年頃は、身体的にも精神的にも不安定。

 あと一年もすれば、人によっては難しい漢字で文章を作ってみたり、妙なポーズを考えたりし始める年頃だ。


 その頃、アマンダも悩んでいた。

 ボスにあんな事を……


 最後にボーイフレンドとしてから、何年?

 ここへ来て、肉体的充実があったけれど、目の前にあんなのがあると。

 年を考えると、まだ成長をするだろう。

 それで、あれ。


 見たのは、そんなに幾つもはないが、比較的アマンダの周りはオープンな環境だった。ビーチでは水着も着ずにうろついたし、トップレスは当たり前。


 うーむ。

 昨夜は、ボスのあれのせいで、二時間ほど一人で……


 こんど、私は忍術を習っているし、御礼として、ボスに教えるとを言うのも良いわね。アマンダの目が光る。


 アマンダは気楽にそんなことを考えたが、雫に知られれば闇に葬られる危険性を思いつかなかった。



 そして、役野 和希やくの わき彼女は、やはり気になり、あの浮浪者を探していた。

 経緯はどうであれ、彼らから解放された。

 そのおかげで、少し前向きになることができていた。

 カウンセリングは受けている。


 そう被害者であることは、学校にも知られ、親も当然知った。

 でも、目立たなかったクラスで目だち、正義感を持った女の子達と友達となった。

 彼女達の欲したものは情報。

 無理矢理だろうが、彼女は経験者。

 そう興味のあるお年頃。


 やりたい盛りの男子は、退けてくれるし便利。

 中には居たのよ、考えのない男が。

「おまえ、肉便器をしていたんだって? 俺にもやらせろや」

 私にそんな事を言った瞬間、周りで皆が立ち上がる。


「ギルティ。先生を呼んできて」

 そう言って数人がその男子を捕まえ、先生が駆けつける。

 男子は、停学か反省文。


 そんな事が数回。

 私は、エロ男子ホイホイと呼ばれた。


 でもあの日々よりはマシ。

 そして、悲しい目をしたあの人を思い出す。


 数日だけ暮らした。

 必要なことを聞いて、出て行ってしまったけれど、どこに居るのだろう。


 

 その彼の中身は、タワマンの上で鬱々と考え事。



 そして、颯司も困っていた。

 昨日の感覚、あれは一体?

 温かく包まれた。

 気持ちが良かった。


 ちょっと目の前にあるものが気になっていたときに、下半身で感じた。

 多分なにをされたのかは、雫が見ていたはず。

 だけど、聞くのはだめな気がする。

 いや大丈夫かな? 



 そんな、もやもやした青春を、颯司達が送っていた頃。


「またやられたのか?」

「はい」

 鬼達は姿を潜めていたが、車で組織の人間が動くとすぐに奴らがやって来る。


 そうNシステムと一般に言われている自動車ナンバー自動読取装置や、交差点で信号の上に設置されたカメラ、その情報が速やかに共有されていた。


 仕方が無く、出会い系アプリを使い君を食べちゃうぞとやっていたが、すぐに捕まる。

 そう、生身で出歩くとすぐに感知された。


 打つ手がない。


「仕方が無いいくぞ」

 そう彼らはとうとう、竜脈からの力があふれるこの地を離れて、都会へと移動する。


 そこでも、すぐに見つけ出されたが、餌は多かった。


「うわあ、格好いいお兄さんだ」

「なんだ俺に興味があるのか?」

「うーん。うん」

 そんな子が意外と多い。


 若く好奇心が高い女の子達、彼女達は、自身を餌として差し出すことになった。


「こら逃げるな」

 とうとう、茨木童子も追い詰められる。

 人間形態をやめて、本来の姿に戻ったのに、すでに腕は切り飛ばされた。

 落ちた腕を、すぐに拾いくっ付けようとしたが、その拾うために伸ばした手を切られてしまった。

 地に落ちた腕はいきなり燃え上がり、もう使えない。


 鬼火を放ちながら応戦するが、奴らの方が火力が強い。


「畜生ここまで力を取り戻し、あと少しのとこで……」


 そう鬼達は、意外と早く対応されたために、力が完全では無い。


 悔しさの中で、滅されていく。

「この恨み、忘れるなぁ」

 恨み言を言いつつ、燃えてしまう。


「終わったな。しかし、妙に美形な兄ちゃんだと思ったら鬼だったとは」

「ああ、だけど、身から出る匂いで分かっただろう?」

「犬じゃあるまいし、分かるかぁ」


 彼ら父親達も、幼馴染みであり軽口をたたける相手だった。


 そんな、平和な日本で、闇の底に恨み辛みがたまり、ガシャドクロが復活しようとしていた。


 これには、鬼達の餌となった本人や、周りの恨みその辺りも大きく影響をした。

 いま、地の底から凶悪な者達が這い出してきた……

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