第32話 日記

 朱莉は今日も、風祭家の居間でテーブルに向かう。

 この数日、片付けられないテーブルの上。


 そして、今日は絵日記。


 絵に描かれるのは、重なり合う男女。


 昨日私はついに、颯司と一線を越えた。

 窓から差し込む朝陽の中で、重なり合う体、そして彼の手は私の胸に。

 それは、わずかな時間だった、だが、私の体は感動と快感に打ち震える。


 私は起き出す彼を追いかけながら、心からの声が漏れる。

「待って……」

 そう、まだ終わってはいけない。

 此処で彼を引き留めて、続きをしなければだめ、心の中で何かがつぶやく。

「ここは囁くかしらね……」


 スパーンといい音が、私の頭から響く。

「痛いわね」

「痛い、じゃない。何を考えているの? そんな日記、十八禁じゃない」

「えっそう? 朝練をしてさ、丁度朝陽が上がってきたときに、一本負けしちゃってさ。悔しいからもう一本て。ええ、これのどこが十八禁? どこをどう読めばそう見えるの、そんな事ばかり考えているから、そう見えているんじゃないの雫ちゃん。説明をしてよ」


 朱莉はそう言って、ニヤニヤと笑う。


「おおい。宿題の終わっていない朱莉は置いといて、アマンダの指導たのむ。アイツ俺だと胸を押しつけてきたり、足を搦めてくるんだ。昨日は組み合っていて頭突きを躱したらキスされて、力が抜けた隙に投げられそうになったんだよ。勝利に関すことにがむしゃらは良いのだけど、ちょっと、こっちが辛くて」

 本音が口をついてしまった。

 アマンダの魅力的な体は、颯司のオスの部分に刺さる。


 だがその前の言葉が、インパクトが強く、雫は気がつかなかった。

「私が行く。すぐに殺すから安心をして」

 雫がすっくと立ち上がり、ずんずんと道場へ向かう。


「おおい殺しちゃだめだよ、もう登録をしたから、あとで面倒にある」

 特殊な任務が多く、武器も携帯する必要があるため、関係者は国に登録される。


 そのじゃれ合いとも言える姿を見て、朱莉はため息を付く。

「私だってさ、好きで勉強が嫌いなわけじゃないし、ちょっと集中できないというか、他のことの方がおもしろいし、颯司だって、私の気持ち知っているはずなのにさ、幼馴染みだからさって、雫も同じ扱いだし……」

 ハーレムが望みだったら、雫とはいやじゃ無いし、楽なんだけどなぁ。


 将来私は専業主婦で、颯司が稼いで、雫がお風呂掃除とかお料理をしてさ、私はゲーム相手と、その…… 家のために毎日、小作りとか…… うふっ。いいなあそれっ。


 気がつけば妄想が膨らみ、本能のままそれが自動書記で絵日記に書かれる。


 中学生にしては、ませた内容のそれは、提出後に職員室で物議をおこす。


 そして、当然だが、親を呼ばれることになる。

 朱莉の作品が渡され、声を出して、お父さんがその場で朗読。


「ふむ将来を見据えた内容は良し、だがそれだけだ、男として言わせて貰うなら、お前を嫁に貰うのは、颯司君でも無理だろう。それに…… おっと」

 そう言いかけて、お父さんは口を噤む。


「朱莉。色ボケの、ませた頭を冷やせ」

 そう言って、例の水の張られた訓練場。

 あそこで一週間寝ることになる。


「まだ中一だぞ」

 呆れたように言う。


「まあ、女の子は早熟ですから」

 うふふと、笑う。母親明光あかね


「お前も、あんないかがわしい日記を書いたのか?」

 つい聞いてしまった。


「あなた、お口に気を付けて、長生きをしてください」

 本家筋が持つ異能が、はみ出したようだ。

 居間の温度が下がり、今注いでいる御茶が凍り付いてしまう。


 本気だ、殺される。

 剛炎ごうえんは居住まいを直し、謝る振りをして、寝技に持ち込む。


 朱莉の親らしく、夫婦の語らいは肉体で行う様だ。

 まあ寝技だけが奥さんに勝てるらしいし、その技は四十八などとうに超えているらしい。



「なんとなく分かりました、今日のじつは偽物を混ぜること」

「虚実、今日のじつではない」


 真実の中に虚を混ぜたり、虚の中に実を混ぜる。俺達くらいになると、動き始めで先を取りもう相手が何をしてくるのか大体分かる。


 だがまあ、アマンダのように上段からの振り下ろしで、そのまま敵に刀を投げつけ、おっぱいボンバーをしてくる奴は居ない。

 あれも手だが、武器を相手に与えるのはどうだろう。

 柄の部分、つまり持ち手に本人認証でもして、毒針が出ればおもしろいかもな。


 そんなことを考えながら、突っ込んでくるアマンダを闘牛のように躱す。

 その時、横を過ぎながら、アマンダが剣を突き出してきた。

 少し驚きながら、体を回転させて、アマンダの顎先を蹴ってしまう。


「ぶぎゃ」

 そう言いながら、ずべっとこける。


 床でこすれ、道着がズレて半ケツのアマンダ。

「やれやれ」

 直しに行こうと気を抜いたとき、アマンダは海老反り倒立へ。

 そう柔軟を生かした。

 それは良い。

 だが、後ろが半ケツという事は、前もと言うこと。

 足で、挟む感じで颯司の頭を挟みくるっと回転。


 目の前には、アマンダの大事な所。

 頭の後ろには膝にひっかかている道着のズボン。

 アマンダは颯司の頭を、太ももで挟んだ状態で四つん這いなのだ。


 大事な所にかかる颯司の息。

 アマンダの目の前で、颯司の一部が反応をして元気になる。

「おう。歌麿」

 つい覗いてしまう。

 付き合ったボーイフレンドとは違い、非常にハード。

 ついもてあそぶ。


 そして、颯司の目の前ではお尻が揺れ、何か液体が滴ってくる。


 雫が、飲み物を持ってきて、乱入するまでもてあそばれてしまった。

 その事故は雫と颯司、そしてアマンダを巻き込んで、少し内緒を共有することになる。

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