第25話 害獣
古の記憶、封じられたときに刻まれた記憶。
陰陽師か、それとも……
見えないかが、うなりを上げて風が襲ってくる。
それを爪を伸ばして相殺する。
次の瞬間には、足元から、土にまみれた奴がパンチを放ってくる。
見た目は
鎧と剣が土柱を守る。
その戦いの最中、火遣 萌がそっと近寄り、鬼一口の体の中へ炎が撒き散らかされた。
相手を燃やし尽くす黒き炎。
それが、体内から燃やし始める。
「ちっ」
目一鬼はそれを見て、門を開き餓鬼どもを召喚をする。
「グギャ」
「ギャギャ」
人を見ると、いきなり襲い噛みついてくる。
「清深。気を付けて、噛まれると痛いわよ」
「はいはい」
軽く振りまいた感じの水だが、スパンと餓鬼達を切ってしまう。
「さあてと、どこへ行く気だ?」
逃げても追われる。
風魔 導が先回りをしてくる。
逃げられないと思い、目一鬼は鬼火を周囲にばら撒き逃げる。
いや逃げられたと思った。
だが首がいつの間にか切れ、コロンと頭が落ちる。
見えない細さの水流、だが鬼の首をすっぱりと切り落とした。
そう、廃工場の鉄骨の柱まで切れている。
「うっわやべ」
「手加減をミスったぁ。皆逃げて」
確かな手応えは感じたが、切りすぎたようである。
すべては、スレートの瓦礫の下へ埋まってしまう。
二匹は倒したが、まだまだ情報によると居るようだ。
風魔 導は困ったものだと、腕を組み崩れた工場を見つめてる。
「導。早く逃げないと、カッコを付けている間に警察が来るわよ」
「ああ、そうだな。結構派手だからすぐに来そうだ」
皆は、監視カメラを避けながら帰っていく。
「温暖化の影響で、台風はより大型となっている様です。日本でもこの週末はお気をつけください」
「温暖化ってなんだい?」
「えーと、温室効果ガスとか言うのが出てて、地球が暖まっているらしいですよ」
この男、普段あまりニュースなど見ないらしく、詳しくは知らないらしい。
「へぇ、そのガスはなんで増えたんだ?」
「元は産業革命とか言っていたから、イギリス? それともフランスが悪いんじゃないですか?」
「なら人は、地球にとって害獣だな、滅ぼせば良いんだな」
そう言って、笑い始める鬼童丸。
人を囓りながら、酒をあおる。
どうもこのセットが良いらしい。
まあ基本は、躍り食いが美味いとのことだ。
やられつつ、よがり狂い食われる。
きっと鬼の体からは、何か変なものが出ているのだろう。
精製をして売れば、儲けになりそうだが、怖くていえない様だ。
「餌はいないか? 足の付かない要らない人間」
「そりゃお前だろ、身寄りも無いし」
「お前もな、親父に拾われて居なきゃ、公園住まいだ」
「でもそれもどうかと思うな」
「ああ、鬼の餌として食われるしなぁ」
「思ったより、謎の決まり事があるらしいぞ」
「やだやだ。おっあの子美味そうだぞ」
片側の男が指を差す。
「完全にお前の趣味だが、外人さんか。いいな」
「いけ」
公園から、道路側。
歩道へ出た瞬間、後ろからぶつける。
そこに躊躇は無かった。
「引っ張り込め」
手慣れた感じで、結束バンドを使い手足を固定。
そして車は走り出す。
だがその時、カツラの下から、黒髪が見えていたのに気が付かなかった。
「やっと一人。冗談じゃ無しに餌にされそうだ」
「噂が流れて、外出が減ったからな、危ない橋だが警官を狙うか?」
「あいつら最近、軽微な違反じゃ、追いかけてこなくなったんだよ」
「ああカメラもあるしな」
そうして彼らは、文句を言いながら一棟のビル、その地下駐車場へ車を回す。
「よいせ」
普通に手で持ち、ぶら下げていく。
これは、ビル全体がアジトか。
その時風が、吹き抜けた。
そのビルの周りに、人達が集まってくる。
そう、本家の命令に従い彼らは張っていた。
人の少ない時間、流石にこんなのに引っかかるのは、よほどのバカだと言っていたのだが、それ以上に彼らは切羽詰まっていたようだ。
「よいせ」
エレベーターからおろされる。
途端に周囲から聞こえる、「キイキイ」や「ギイギイ」と言う声。
普通なら恐怖するところだが、男達は、閉まってしまったエレベーターを必死で呼ぶ。
遅れれば、自分たちも食われる。
ガシガシと、ボタンが連打されるが、なぜか地下にまで行き、上がってくる。
ドアが開くと、見慣れない連中。
「なんだ、おみゃが……」
騒ぐ途中で、ぶん殴られすっ飛ぶ二人。
「なんだ、雅美。縛られるのが気に入ったのか?」
「うーん。どんな感じかは、気になっていたんだけれど、嬉しくはないわね」
「そりゃ残念」
軽口を叩いたのは、
そして、
皆丁度お年頃で、格好いい。
縛られていたはずの、雅美がふらっと立ち上がる。
風が、彼女の周りを舞い始める。
浄化の風と、鎌鼬と名をつけた風による不可視の刃。
奧側で、檻の前でたむろしていた餓鬼どもが切られる。
そう此処に転がっている奴ら、結構勤勉で、餌をストックしていた。
「さて、こいつらボスの行方を聞かなくちゃな」
「問題は、知っているのかよねぇ」
「そいつらは知らんさ」
「なっ」
背後にいきなり気配が現れた。
そして、翡翠のブロックごと吹っ飛んでいく。
「探していたんだろう? 美味しく食ってやるから、順番にな……」
「このやろう」
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