第21話 物の怪達の活性化

 ある日を境に、闇に潜む者達が活性化をする。

 封印されていた者が、確かに解放され、その力を増していることが分かった。


 古の時代、妖怪の側にも幾多の導くもの達がいた。

 その者達が歩くだけで、周囲で妖魔が生まれた。


 阿久良王や酒呑童子、茨木童子。

 天狗に、ろくろっ首、山姥。

 大百足や狐たち。


 それらは、あるものは倒され、あるものは封じられた。


 だが今、それが一つ復活をした。

 その者は、単体で暴れること無く、知恵を使い組織を手に入れ、封じられた所を探す。

 

「鬼火か、こんな所で何をしてんだ」

「やかましい。さっさと出せ」


 そこは静かな山中。轟々と水が落ちる滝の裏。


 裏の洞は週の岩場を絶えず水が流れる。そんな場所で周囲を石で囲まれ、彼は出られなかった。

 そして長き封印で、もう少しで消滅をするくらいまで弱っていた。


 先ずは、手足として使える鬼達を解放する。


 彼は、手下を増やし、日本中へと手を伸ばす。


 各家がいるため、気配封じの呪符を張り密かに仕事を行う。


「封じられた時間が長かったからな、変われば変わるものだ」

 茨木童子は車の後部座席で、食事を楽しんでいた。


「あにき、お願いですから、外から見えないようにしてくださいよ」


 さっき、パーキングに寄ったときに、EV充電スタンドの所で、暇を持て余していた女性。声をかけたら、付いてきた。


 そのすぐ後、彼氏らしい男が探していたが、見当たらなかったようだ。


 この子は、二十代半ば。

 魅入られ、すぐに茨木童子といたし始めてしまう。

 そう、身長百八十程度。

 筋肉はしっかりして金属のよう。


 髪の毛がツンツンに立ち、その中に角を隠していた、切れ長の目を持つ色男というのが正解だろう。

 抱えられ、脱がされ下から突かれながら、順に食われていく。

 痛みはなく快楽のみ。


 目の前で、自分の腕が美味しそうに食われる。

 血がすすられ、彼女は命を失うまで喜んでいた。


「昔は食える肉が少なかったが、以外と食えるところが多い。だが少し油が多いな」

 そんなリポートを聞きながら、前の席で男二人が震える。


 防弾の大型の車。


 そんな車が、不釣り合いな山中へと進んでいく。


 積み上がった岩。

 それをぽいぽいと、捨てる。

 十メートルほど下の石棺に、鬼童丸が封じられていた。


 無論干からびて死に絶えているようだ。

 先ほどの食いかけを乱雑に放り込む。

 滴る血が、ビシャっとその干物に飛び散る。


 だがそれが、しみ込むにつれ、うにょうにょと動き始める。


「起こすなら、贄もきちんと用意しろよ」

「起こして貰って文句を言うな」

 這い上がってきたのは、小学生くらいの男の子。

 角は上手に隠しているようだ。


「まあ来い、仕事だそうだ」



「うーううぅ。ううぅ」

「火祭。試験中に吠えるな」

「へーい」


 そう、学校には定期試験がある。


 流石に一同、寝て……


 颯司は寝ていた。

 当然解答用紙はすでに埋まっている。

 次に寝たのは、意外なことに雫。

 その次が、陸斗。


 残念ながら、朱莉はずっと唸っていた。


 そんな時、ふと血の匂いを風が乗せてきた。

 だがそれは薄く、あっという間に消える。


 その女は、モデルのような男を見つける。


 彼氏の方は、土産を見ている。

 少しだけ話をして連絡先を交わそう。

 そんなことを考えてしまった。

 だが、間近で目を見た瞬間魅入られる。


 躊躇することなく車に乗る。

 中には、子供がいたが気にならない。

 女は、動き出した車の中、抱きつきキスを求める。

 流れ込む甘美な唾液。


 その時、尻の方では子供が、スカートをまくり上げ、下着をおろす。

 出てきた穴に、小さな腕を突き込む。


 甘美な刺激。女は刺激を感じながら、体のなかから融かされ吸われていく。

 

 まあ死に方としては最悪だが、本人的には満足だろう。死ぬほどの快楽を享受出来た。



 そして、死にかかりが此処にも一人。


「お願いでございます、何でも言うことを聞きます。何度目か分からないけれど、一生のお願い……」

 そう、試験は午前中のみ。


 家で勉強をして、夜に備えようとすると、朱莉が付いてきた。

 中学になり、始まった行事。

 定期試験の午後は、颯司の後ろをくっついていくのを、風物詩とでもするつもりなのか、朱莉が付いていく。


「あっ、皆さんお帰りなさい」

「ただいま。久しぶりの勉強会だ」

「後でお茶をお待ちします」


 今もまだ、地下での特訓をやっているため、静は不在。

 修行中の若い衆が、家のことをやっているらしい。


「静さんは特訓?」

「うん、アマンダの体が五十代のオッサン並みだから、タコにするまで頑張るらしい」

「うわー、訓練無しで成人するとそうなるんだ。怪我をするよね」

「うん、そう言っていた」

「そうだ、勉強教えてくれる代わりに、柔軟手伝ってあげる」

「それいいな、手伝ってもらおう」

 陸斗が話に乗ってくる。


「あんたは太り過ぎ、丸焼きにすれば痩せるわよ」

 最近見たことのある、円柱の炎。


「あれなら痩せそうだな」

 そう言いながら、各自対応方法を頭の中で考える。

 もうこう言うのは癖になっている。


 だが、一時間後には、皆仲良く寝ていた。

 いつもの様に。

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