第7話 侵略
海辺の町で人が消える。
そんな話が流れてくる。
「海の方は怖いわね」
「泳いでいなくっても、釣り人とか消えるみたいよ」
ニュースや新聞、暑くなってくるとそんな話が増えてきた。
私たちは、気にしていなかったが、お父さん達は大騒ぎだったようだ。
「日本へちょっかいを出すとはな」
「古来の
祭家の広間で、深刻な会議が開かれていた。
「各家だけでは無く、分家筋にも連絡をして、警戒をしてくれ。この前からニュースになっている海辺の怪異。これが気になる」
「「「「はい」」」」
そうして連絡の来た、
当然水の家系。
雫とは遠縁で、従姉妹でも無い。
彼ら達もアルバイトを行っていた。
「
颯人は松風家。
「文句ばかり言っているから、遅いんだよ」
風を纏い加速する。
海が変で、海坊主でも居るんじゃ無いかと話が出ていた。
一応、国外の者達が関与している可能性とも聞いている。
彼らは元気に走っていた。
海の上を。だが、突然超高圧の水流が彼らを襲う。
探査はしていた。
なのに気が付かなかった。
そして油断もあったのか、颯人は右腕を肘から先持って行かれた。あわてて空中で掴む。
「くそう。
後ろにいた彼は、斜めに体が切れていた。
そうすでに即死。
危険だが、颯人は彼の体を掴み、風を全身に纏い高速で現場を離れる。
その背後で、そっと浮いてきたのはシーサーペント。
日本の近海には居ないはずのモンスターだった。
全長は、二十五メートルほど。
かなり小型のものであり、本来持っていない赤い石が額に埋め込まれていた。
「シャオリーベンめ、見られたか」
そいつはボンベを背負い、背中に張り付いていた。
沖合の仲間に無線で連絡を取る。
他の国とは違い、闇組織が強く入り込めなかった所。
雑魚は別だが、妖魔などは力と物を人に与える事がある。
それは国が何かを成すときに、非常に便利な力となる。
そう、時には人を意のままに操り、時には痕跡を残さず殺め、国を裏から操ることもたやすい。
だが日本の者達は、影に潜み覇権を取らない。
「せっかく神から与えられた力。使わないとは非常に勿体ない。力の使い方を我らが見せてやる。その後はコマとして働けば良い」
この男、自国の組織を裏からまとめて、のし上がった。
軍団の中には妖魔も従え、鬼まで使役している。
そして、ご機嫌な彼は他国にまで手を伸ばしてきた。
組織が持っていた秘伝。
そいつを奪い去り、自分の物として利用し、彼に死角はなくなった。
そいつは、残酷無比な行為から『無慈悲な鬼』と呼ばれていた。一般的には『冷酷鬼』本名は知らない。
だが彼は、四属性を使いこなす非常識さを持つ。
「気にするな行け」
わざわざ組織のトップがやって来る。
それは、彼の性癖とも言える趣味のせい。
悲鳴を上げ、泣き叫ぶ者を切り刻むのが趣味。
水圧を調整して血を流させず体の肉をそぐ。
冷酷鬼の名の通りに……
水の中に意図的に温度の違う層を作ったり、泡にくるまったり。
色々と、存在をごまかす方法はある。そのため、二人の探査はごまかされ、
それは、組織を本気にさせる。
静かでおとなしい人は、以外と怒らせると怖いものである。
冷酷鬼は、まだ短い己の人生で、知り得なかった現実を知ることになる。
彼が自国で馬鹿にして切り捨てた歴史。こちら側では千年。その積み上げられた知恵は、とてつもない物だと。
「ご子息は残念だった」
「いえ、愚息の思い上がりか、力不足です」
「命令は通達された。犠牲を無下にはしない。少しお待ちください」
葬儀の列席者。
その会場の近く、そう五百メートルくらいは、烏を始め、ドブネズミさえ逃げ出した。
武道に覚えの無いのもでも、その何かは皮膚を刺激し、その下を何かが這いずり回るような違和感を覚えた。
闇の底を覗くような、通常ではあり得ないような殺気。
数日内に、入り込んでいた者達は探し出され消えていく。
能力を持つ者は特殊な波長を体から出す。
それを感知するからくり箱。
そして、闇を走る使い魔達。
あらかじめ、入国をしていた者達が確保していたアジトが、次々と発見されていく。
その異様さに、流石に気が付き、本国を任せて居た、四人の沃素使いを招集する。
火鬼、水鬼、土鬼、風鬼。
それが、組織の終わりの始まりとなる。
「くっ。ばかな俺の火が乗っ取られた。使えない」
火鬼があわてて逃げようとするが……
騒動を起こし、敵組織をおびき寄せようと、一般の市民を攫い、冷酷鬼さながらに痛めつけようとした。
だがすぐにアジトは発見され、あっという間に囲まれる。
涙を流し、裸で転がされている女の子は、非現実な世界を垣間見てしまうことになる。
その日彼女は、学校の帰り友達三人と帰宅途中。
クレープ屋で、イチゴの乗ったクレープを買い求め、いつもの様にお気楽に帰っていた。
だが、住宅街の路地。白昼の町中で、白いワンボックスが前を塞ぐ。
ドアが乱暴に開き、頭から袋をかぶせられる。そしてあっという間に攫われた。
残された鞄と、地面に落ちた囓りかけのクレープ。
それを、烏に似た何かや、ネズミに似た何か達が見ていた。
念話が飛び交う。
そうその時から、彼らは見られていた。
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