第17話 ステータス強化

街に来て一週間が経った。

最近は一番の課題である能力値アップに励んでいる。


図書室で調べたところによると、ギフトを付与された冒険者は魔力の消費と回復を繰り返すことで魔力の最大値と各能力が強化される。


能力が上がる時は力が漲るような、体温が数度上昇したような感覚になる。


能力には筋力、知力、速さ、器用さの4種類があって、魔力をどう使用したかによって各能力値がアップする。


その瞬間は筋力なら胸、知力なら頭、速さなら足、器用さなら腕が熱を帯びる。


魔物を斬りまくれば筋力が上がるし、魔法を使いまくれば知力が上がる。


物理系冒険者は筋力と速さが上がりやすく、魔法系は知力と器用さが上がりやすい。器用さは高度な魔法を覚えるために必須のようだ。


俺みたいな生産系は器用さが上がりやすいのだが、器用さだけでは戦闘にあまり役立たないので、魔法を覚えたり弓を練習したりと生き抜くために魔物と戦う術も身に付ける人がほとんどらしい。


魔力は使えば使うほど上昇し、上限に達するとしばらく停滞。二十代後半からは逆に減少し始め、三十路を過ぎた頃にはほぼなくなるのが典型的なパターン。

ただ、上限やレベルアップのスピードにはかなり個人差があるとのこと。


【持ち物】の表記は収納スキルによるものらしく、サイラとルミナには見えないそうだ。


【素材】とおおよその重量が表記されるのはギフトによるもので間違いないだろう。


と、まぁこんな感じ。


感覚的に魔力は1時間で1割程度回復するから、寝る前は魔力を空にして常に全回復しないよう心がけると効率が良いそうだ。


ファビアス洞窟から帰って一晩寝たら魔力は563まで増えていた。


ステータス上げの方法としては基本に忠実に魔物駆除がメイン。


スライムにもいろんなタイプがいて、ブルー、レッド、グリーン、ピンク、ブラックの順に討伐難易度が上がっていく。


ブルー以外は好戦的なので、飛びかかってきたところをスナップを利かせた平手打ちでクラッシュ。


が、基本戦術となる。

今のところ戦術はこれしかない。


端からみたら武闘家タイプと勘違いしてもらえるのではないかと勝手に思っている。


スライム達はクラッシュの瞬間、水風船が割れたようにその形のまま粒子となり霧散しながら巾着袋へ吸い込まれていく。


「これがなかなか気持ちいいんだよなぁ」


今は『こども魔物図鑑』的にいえば討伐目安が魔力500のグリーンと700のピンクを中心に狩っている。魔力は目安であって俺のほうが低いからといって勝てないわけではない。


ただ、一度だけ900のブラックに挑んでみたところ、クラッシュはできたものの一匹で魔力がほとんど無くなってしまった。


魔石やアイテムのことを考えると自分の魔力に近い魔物と戦うのが結果的に一番効率が良さそうだ。


とりあえず俺は魔法や武器は使わずクラッシュ専門でいこうと思う。


日中は街近くの森でそんなスライム狩りと薬草摘みや果実採集を行い、夕方にはギルドに行って売却換金の日々。金もそこそこ貯まってきた。


日没以降は宿屋で装備の製作に勤しんでいる。

商業ギルドで全身甲冑を購入しリメイク。練習も兼ねてオーダーメイド防具を思案中だ。


シーカーシリーズも悪くないんだが、超近接戦法の割に肉体も装備も無防備過ぎるので少しでも防御力のあるものにしたい。


分厚くすると重いし、面積が小さいのも不安になる。どんな体勢でもクラッシュが繰り出せるように可動域も確保しなければならない。


作っては実戦を繰り返し、なるべく薄く、かつ顔からつま先まで全身を覆える理想的な形を追求する。


ただ、どうしても重さだけはいかんともしがたいんだよなぁ。やっぱり筋力や速さも鍛えるべきなのかな。


「さて、本日の成果は」


ステータスを確認すると昨日よりも器用さが1上昇していた。


トレーニングを始めて一週間の成果は速度1アップ、器用さ3アップ。速度は平手打ちを繰り返したことによるものだろう。


そういえばサイラが身体硬化は冒険者の必須スキルだと言ってたな。


スキルの種類については今度図書室で勉強するとして、あの人なら習得方法を知ってるかもしれない。



「もちろん知ってますよ!お教えしましょう!」


翌日早朝。


早速、俺はギルド二階に赴き、生活魔法を教わった講師のライオネルさんを訪ねた。


アポなし早朝訪問だったにも関わらず、部屋を覗いてみるとすでに中央のリクライニングチェアでうたた寝中だった。


そんな彼に申し訳なさげに声を掛けると、心良く教えてもらえることに。


「では右手を出して下さい」


「はい。これもまたスキルの種ですか?」


「そうです。スキルの習得にはいくつか方法があって、ギフトから派生するパターン、魔法と同じく継承によって習得するパターンなどがあります」


「といっても、全ての人が何でも覚えられるわけじゃないですし、習得しても相性によっては低レベルのまま伸ばせないなんてスキルもありますけどね。生活魔法や身体硬化は万人スキルなので誰でも使えると思いますよ」


「使ってみないと分からないか。スキルは誰からでも貰えるんですかね?」


「『継承』スキルを持っている人からなら可能です。これが不思議と若い冒険者には備わらないようでして、魔力の衰えとともに自動的に覚えるスキルなんですよねぇ」


周りに優秀な元冒険者がいたら最高だな。環境によってもかなり有利不利が分かれそう。


「年齢とともに魔力が無くなるとスキルなんかも見えなくなるんですけど、習得したスキルはそのまま残ってるんです。魔力がないので自分では使えませんが、優秀な冒険者達は現役でたくさん稼いだ後、引退しても継承ビジネスで儲かる。くぅ~、羨ましい!」


大袈裟に悔しそうな表情を浮かべるライオネルさん。

しかし、そんなライオネルさんも昔は腕の良い冒険者だったとシスカが言っていた。


俺からしたら三十そこそこで金の心配もなく、暇つぶしに仕事ができるライオネルさんのような生活は相当羨ましいのだが。


ボランティア精神溢れるこのような人が近くにいてくれたのは運が良かった。


その後、商業ギルドへ日課の薬草粉末納品へ。


ついでに継承スキルのことを何気なく聞いてみると、ガビさんは元々生産職の冒険者だったらしい。


薬草から傷薬を作るには普通『精製』というスキルを使うようなのだが、俺は当然持っているものと勘違いされていたようだ。


是非、継承してほしいと懇願したところ教えてもらうことができた。


これでやっと『薬草粉末』ではなく、本物の『傷薬』を作れるようになった。なんか変だと思ったんだよな。


まだレベルが低くて魔力消費量が大きいが、このスキルを使うことで鉄鉱石から【鉄】を取り出せるようになったのは大きな収穫だった。

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