第15話 換金作業
バドコリーナに着いた俺達は、まず魔石とアイテム換金のため冒険者ギルドへと向かった。
夕方近くの時間帯とあってギルド内は冒険者達で賑わっている。
入口の扉を開けると早速、若者達の視線が突き刺さる。
若い男女パーティーでさえ珍しいのに、オヤジに美少女二人というのはまずギルドで目にしない光景なのだろう。
俺達はコリーナ草で作った袋三つに魔石を詰め、一袋ずつ肩に担ぎながら受付カウンターへと運ぶ。
こんな面倒くさいことをするのはもちろん収納スキルを悟られないようにするためだ。
「買い取りお願いします」
「はい。ではこちらにお出しください」
二人の時は多くても100個が限界だったようだが、今回はその3倍以上。数十メートル運ぶだけでも一苦労だ。
受付の広いカウンターは魔石で埋めつくされた。
「すごい量ですね。運ぶだけでも大変だったでしょう。あ、あなたは確か……、そういうことですか」
全てを察したような顔をしているシスカさん。
俺は口に指をあてそれ以上喋らないようジェスチャーする。
シスカさんは軽く頷き、奥から数名のスタッフを呼んで検品作業を始めた。算盤のようなものをパチパチと弾き手際よく数を確認していく。
「はい、出ました。買取金額は合計57000Gです。よろしいですか?」
他の冒険者達がどうなのか分からないが、前世の感覚でいくと二時間の労働にしては稼げたほうではないか?
「いい?」
「もちろん」
「てことは、三等分だと、え~と、え~と」
「三人で分けるなら、19000Gですね」
計算に苦戦しているサイラを見て、シスカさんがニコッと微笑み金額を教えてくれる。さすが落ち着いていて品のある大人の女性といった雰囲気だ。
その後、俺達はドロップアイテムを売りに商業ギルドへ。ガビのおやっさんは休みのようだ。
ファビアスジュエルだけは売らずに預かっていて欲しいと言われたので、残りを査定してもらったところ2500Gと思っていたよりも残念な結果に。
結局アイテムは売却せず、俺は15000Gとドロップアイテムを受け取ることにした。
最後、サイラに「信じてるから」と念を押され、二人は手を振りながら去って行った。
初日からなかなかハードな一日だった。
さて、それなりに懐も潤ったし今日は食堂で夕飯を食べて宿屋に泊まってみるかな。
□
翌日
素泊まり食事無しの宿しか空いていなかったので、昨日は部屋に入ってすぐ寝てしまった。
夜明けとともに目が覚め、俺はすぐに薬草粉末の納品へ向かう。早朝にも関わらず、ギルドはすでに開いていた。
おやっさんは昨日いなかったくせに何故か俺が二人と来たことを知っていた。
いろいろと聞かれたが、たまたま荷物運びに付き合わされただけだと説明し、3000Gを受け取ってギルドを後にする。
続けて隣の建物、冒険者ギルドへ。
シスカさんが相変わらずフレンドリーな笑顔で出迎えてくれる。やはり早朝なだけあって、まだ冒険者は誰もいなかった。
「おはようございます」
「冒険者ギルドへようこそ!」
シスカさんは誰かを探すように俺の後ろをチラチラと見やる。
「一人ですよ」
「あ、そうでしたか。探してるの気づいちゃいました?」
「そんなに珍しいですかね。おっさんと若い子が一緒にいるのって」
「冒険者パーティーを組むのが珍しいんですよ。特にあの子達は実力、ルックスともにこの街では結構な有名人ですから。それに男性はもちろん女性冒険者ともほとんどパーティーを組んだことがないんです」
「パーティーというか。まだ一回手伝っただけですけどね」
確かに異世界から来た俺が見ても美少女であることは間違いない。
そんなシスカさんもそこはかとなく品があり大人の色気漂うかなりの美人さんなのだが。
「シスカさんも冒険者だったんですか?」
「昔はそうでしたよ。私は早熟型だったので今となっては魔力もだいぶ衰えてしまいましたけど。もう少し続けてても良かったかなぁ。旦那がしつこくて早く結婚しちゃったから家計が大変なんです。はは」
余計なことを聞いてしまったか。
こんな綺麗な人とずっと一緒にいたら結婚したくなる気持ちも分からんではないな。
「でも、気を付けてください。くれぐれもどちらかを不幸にするようなことはしないでくださいね」
「ど、どういう意味ですか? どちらも不幸になんてなりませんよ」
「収納スキルいいですよね。もう少し早く出会えてたらなぁ」
「え? いまなんて?」
「いえ、何でもないです。それで今日はどうしました?」
小悪魔的な表情で急に話題を変えるシスカさん。結構S気質な人なのかも。
「えぇ、それが実は最近まで記憶喪失になっていたらしく昔のことを全然覚えていなくてですね。いまいろいろ思い出している最中なんです。とりあえず、この付近の地図みたいなものはないですか?」
至れり尽くせりなギルドなら冒険者用のガイドマップみたいなものがあるんじゃないかと思ったんだが。
「地図ですか。ありますよ。500Gです」
有料なのか。結構いい値段するんだな。
「1、2、、はい。500G」
「お買い上げありがとうございます。それと地図を購入されたなら、二階の図書室もオススメですよ」
「おお、図書室! 本を借りてもいいんですか?」
「申し訳ありませんが、貸し出しはしていませんので閲覧のみになります。皆さん購入された地図にいろいろ書き込んで利用されてます」
印刷技術があまり発達していないこの世界で書物は貴重品なのかもな。でも、これでだいぶ理解が深まる。
「分かりました。ありがとう」
購入した地図にはフリクションペンのようなものがオマケで付いてきた。間違えたら反対側で軽く擦ると消すことができる。500Gの価値は充分ある代物だった。
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