第12話 パーティー結成?

講習を終えて階段を下りると、一階は冒険者の人達で賑わっていた。


改めて見ると、同性同士のパーティーが多く、ベテランっぽい雰囲気の冒険者は男女ペアでいる人達が目立つ。


冒険者ギルドは将来の伴侶を選ぶ出会いの場としても機能しているってわけか。


この中におっさんが混ざるのは明らかに場違いだな。さっさと退散しよう。来るのは早朝を狙ったほうが良さそうだ。


ギルドを出てとりあえず街の入口方向へブラブラ歩く。


まずはちゃちゃっと薬草クラッシュを終わらせて、街の周りでも散策してみるか。


「おじさ〜ん」


このあたりで薬草がよく採れる場所でもあれば収入が安定するんだが。


「おじさんってば!」


またコテージに戻ることがあるかもしれないし、移動手段も調べておきたい。


そういえば御者の老人もこの街に住んでいそうな雰囲気だった。元世界でいうタクシーのようなものなんだろう。今度、会ったら聞いてみるか。


「グンジー!」


ん? 俺?


振り返ると、何時ぞやの女子二人が息を切らして立っていた。


「あれ、君たちは」


「ちょっと、なんで無視するの〜!」


「いや、ごめん。この街に知り合いなんていないから別の人が呼ばれてるのかと思った」


「もう。ギルドで二階から降りてくるのを見かけたから追いかけてきたのに」


「そうだったのか。考え事をしながら歩いてたから気が付かなかった。すまん。何かあった?」


「あの、突然で申し訳ないのですが、グンジーさんにお願いがありまして」


頭を掻く俺にルミナが恐縮した表情でそう言うと、サイラが続ける。


「グンジーって収納スキル持ちだったよね?」


「ああ、持ってるよ」


サイラの顔が少しほころぶ。


「実は私たち行きたいところがあって、グンジーにも着いてきてほしいんだけど」


二人の話によると、駆け出しの頃に何度か行動を共にした収納スキル持ちの冒険者がひどいやつだったらしく、預けていた物を全て盗まれてしまった事があるらしい。


貴重なものは預けていなかったそうだが、ダンジョンで獲得した魔石やアイテムなどをごっそり持ち逃げされ、トラウマになっているという。


「特に予定はないし構わないよ。でも俺だって会ったばかりなのに信用できるの?」


「直感ってやつ。昨日話してて悪い人じゃないと思ったの。若い子よりグンジーくらいのほうが何となく信用できそうだし」


俺くらいというのはおっさんのほうがってことね。確かにこの子達を騙してまで金を稼ぎたいとは思わないな。


「そうか。そう言ってもらえるのは嬉しいな。で、何をすればいいんだ?」


「すごく簡単だよ。私達が倒したモンスターの魔石やアイテムを収納袋に入れて運んでくれればいいだけ」


確かに魔石は石なだけあって結構重量がある。

ブルースライムの小さな魔石でも一つ一つは小石程度だが、20個もあるとズシッとした重みがあった。

いくら力自慢のサイラといっても大量の魔石を長距離運ぶのはかなりしんどいのだろう。


「分かった。協力するよ」


「ありがとう!馬も使ってみたんだけど、費用がかかるから結局取り分は変わらないんだよね」


「なるほど。収納スキルがこんなに需要あるとは思わなかったよ」


「詐欺なんて日常茶飯事だし、信用できる良いポーターを探すのは一流冒険者になるには必須なんだよね。もちろん報酬は払うからね。分かりやすく三等分でどう?」


「運ぶだけでそこまでしてくれなくていいよ」


「ん〜ん。できればこれからもたまにお願いしたいし、わたし計算苦手だから」


サイラは恥ずかしそうに目線を外し指で髪の毛をくるくるとしている。

栗色のショートヘアが陽に照らされキラキラと風になびく。その仕草にはまだ幼さが垣間見れた。


均整のとれた目鼻立ちに少しあどけなさの残る小さな顔。昨日は暗くてあまり分からなかったが、こうして見ると二人とも文句のつけようのない美少女だ。


運ぶだけなのに三等分と言われては断る理由がないな。報酬としては充分過ぎる。


「分かった。貰いすぎな気もするけど、とりあえずそれでいこう」


様子を伺っていた二人の顔が笑顔になった。


「じゃあ、さっそく出発しよ!」


「え、今から?」


「そうだよ? すぐが無理ならグンジーの都合に合わせるけど。私達はいつでも大丈夫だから」


傷薬を作るくらいしか予定はないから別にいいか。一瞬でできちゃうし。


だけど、ダンジョンってもっと準備を整えて臨むもんなんじゃないのか? まぁ、荷物を運ぶだけなんだけど。

二人は慣れてそうだし、とりあえず水だけ多めに持ってれば大丈夫かな。


「了解、俺もオーケーだ」


こうして急遽、俺達は(俺は?)ダンジョン攻略へ向かうことになった。


魔石ダンジョンとも呼ばれる『ファビアス洞窟』は比較的弱い魔物が大量に湧いて出るので、初級冒険者の魔石集めと鍛錬には最適らしい。


ここらへんで知らない人はいないくらい有名なダンジョンなんだとか。


ダンジョンとは魔物達が密集して棲息しているエリアの総称で、明確な区分けはなく洞窟であったり森であったり場所も様々だ。


人も魔物も自分のテリトリーに侵入してきた者には容赦なく攻撃を加えるし、お互いの資源を求めて侵略も行う。


そのへんは俺の知ってるダンジョンや異世界と同じだからすんなり理解できる。


二人もトレーニングのためにファビアス洞窟へはよく行っていたようだが、強くなるにつれて魔石の回収量が増え運搬手段に行き詰まり、最近は足が遠退いていたそうだ。


ポーターには、どんなに持っても疲れないスキルやスペース拡張機能のあるマジックバックなど、いろいろと種類があるらしい。


ただ、容量や利便性に制限のあるものも多く、ポータースキルの一番人気は異空間が使える『収納』スキル。


昔やってたゲームだとインベントリなんて皆使えて当たり前だったけどな。


俺の場合はポーターになるためのスキルというよりギフトに付随したおまけ。

しかし、今のところギフト以上のチートスキルだ。


どうやら二人は収納が俺のギフト能力だと思っているっぽい。他の人には言わないでと念押しされたが、ギルド受付のシスカさんには言ってしまったんだよね。



【魔 力】304

【能 力】筋6 知5 速5 器12

【スキル】収納Max、生活魔法1

【ギフト】クラッシュ&ビルド

【素 材】

コリーナ草2kg/水3kg

オレンジの木205kg

【持ち物】

アーモンド 3粒

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