第6話 決意
川から戻り決意した。
このサバイバル生活は気に入っているが、せっかく転生したのだから魔法やスキルについてもっと知りたいし、異世界の文化も体験してみたい。材料や情報も少なすぎる。
ということで俺は街を探すことにした。
何の宛もないし、あるのかすら分からないが、長期戦になってもいいように出来る限りの準備は整えていこうと思う。
まずはオレンジ。
先日の木まで来てみたものの手の届きそうなところに実は成っていなかった。
俺は一か八か再度木材クラッシュにチャレンジ。
オレンジの木に手を当てクラッシュと念じる。
「うわ!なんだ?いてて!」
触れていた木が無くなり、頭上から葉っぱとオレンジが降ってきた。
「木だけクラッシュしたのか」
目を閉じると、素材に【オレンジの木1200kg】が追加されている。魔力は150ほど減って50になっていた。
今までは魔力が足りなかったんだな。
葉っぱは使い道があるか微妙だが、とりあえず近くのをざっとクラッシュしておく。
オレンジの実は割れていないものをそのまま収納し、割れてしまったものはクラッシュ。
持ち物にオレンジの実15個、素材に5kgが追加された。
近くにはアーモンドの木もあり両手に収まらないぐらいの実が取れた。ほんのり甘く濃厚で美味い。これはクラッシュする必要もないので、そのまま収納しておく。
あとは魔物と遭遇した時の武器作りか。欲しいのは剣と盾。素材はさっきのオレンジの木を利用して
「ビルド」
【オレンジの剣】と【オレンジの盾】の出来上がった。
魔力も増えたが、器用さが上がったからかスキルを使う時の消費量も減っている気がする。
道中はどんな魔物が襲ってくるか分からないからな。少しでも戦闘訓練はしておきたいし、魔物についても知っておきたい。
人食いワニには勝てそうにないので、一番安全なスライムで練習することにした。
以前飛び出してきた茂みのあたりにさしかかると、前方に一匹のスライムを発見。
攻撃しなければ襲ってこないが、今回は攻撃するから奴もやり返してくるだろう。
「できれば一発で仕留めたいところだが」
まずはゆっくり近づいて右上から袈裟斬り。
スライムの一部が削り取られ、地面に落ちる。
その程度で勝てるわけもなく、スライムも反撃してきた。俺めがけてジャンプからのプレス攻撃。
俺はそれを避けながら盾で払い落とす。
そして、また袈裟斬りを左右に打ち込む。
スライムは三角おにぎりのような形になり、最初よりもだいぶ小さくなった。
切られて飛び散った部分は地面に落ちるとすぐに溶けて消えてしまう。残念ながら食用にはできなそうだ。
最後に留めとばかりに頭上から真っ直ぐ下へ剣を振り下ろすと、透けて見えていた真ん中の丸いものが割れ、スライムは溶けてなくなった。
最後に残ったのは青白く輝く小さな石だった。
収納してみると【ブルースライムの魔石】と書かれている。
「魔石か」
ファンタジー系の物語に良く出てくるあれだな。魔物達のエネルギー源になっている核のようなものだろう。
その後も俺はスライムを倒し続けた。
スライムはプレス攻撃のほかに粘液を飛ばしてくることがある。剣に付くと切れ味が極端に落ちるので何度か作り直しながら攻防を続ける。
途中で気になってステータスを確認すると筋力と器用さが上がっていた。
どうやら自分の行動によって能力が上昇するらしい。
そうだ。
モンスターをクラッシュ&ビルドしたらどうなるんだろうか?
俺は新たに現れたスライムにこっそり触れてクラッシュを試みる。
触れる程度では攻撃とみなさないのか、スライムは抵抗することなく粒子となり巾着袋に吸い込まれた。
魔物クラッシュ成功。
ステータスの持ち物欄には【ブルースライムジェル】と【ブルースライムの魔石】が追加されている。
モンスターは倒すとアイテムを落とすことがあるのだが、さきほどまで二十体ほど倒して二つのブルースライムジェルを落としたからこれで三つ目だ。
背後にいたスライムをもう一匹クラッシュしたところ、またブルースライムジェルを獲得。クラッシュで倒すとアイテムのドロップ率が上がるのかもしれない。
その代わり魔力は結構消耗している。
そんなに連発はできないな。
そうこうしているうちに陽も落ちてきたので拠点へと帰還した。
家の瓦礫とハンモックは記念に残しておこうと思うが、数日間の努力の結果が粗末なハンモックと瓦礫だけというのはなんとも寂しい。
ここはやはり今できる集大成としての何かを残しておきたいところだ。
というわけで俺は寝る前に最後の魔力を振り絞りコリーナの木をクラッシュした。
オレンジの木に比べると魔力消費が少なく、器用さが上がったおかげで残り少ない魔力でも1tほどの素材を獲得できた。
翌日。
スライムとの格闘に疲れて日没とともにぐっすり寝た俺は体力も魔力も全回復。
今日はもう少し木材を増やして前回よりも大きな(四畳半くらい?)のコテージを建設しようと思う。
まずは通気性を良くするために床下は1メートルくらいの土台が必要だろう。ウッドデッキなんかによくある感じ。
脚と筋交いを均等に配置しながら、上に板を置くイメージだ。
デザインは自由自在だから一枚板にもできるが、ここは雰囲気を出すため等間隔に隙間を開けたウッドデッキスタイルにする。
5メートル四方くらいのデッキをイメージして、
「ビルド」
素材は少し丈夫そうなオレンジの木を使っておいた。
「よし。良い感じ」
次は肝心の居住スペース。
コリーナの木の素材は2t。
3mくらいの長さの丸太にビルドして組んでみよう。一辺十本ずつくらいか? 丸太同士の設置面と四角はしっかりとくっつけておく。
「入口は引き戸にして、風が通るように小窓もつけて」
俺は頭の中で完成形をイメージしていく。
脳内シミュレーションは完成した。
これほどの大きさのビルドは初めてだから緊張するな。失敗したらやり直しに時間がかかってしまいそう。目の前にある土台の上にコテージを思い描く。
「まずは壁から。ビルド」
袋の中から大量の粒子が勢いよく噴出され、あっという間にコテージの壁が出来上がる。
そして次に屋根、扉、窓の順に続けて作成していき、各部のジョイントを確認。
「完成だ!」
俺は土台に設置した階段を登る。
全体的の見た目はイメージ通り。穴が空いてるだけだが、小窓もちゃんとできている。
可動部分にあたる入口の引戸は大きさの微調整が難しかったものの、何度か試すうちにうまく収まった。
まだ中に何もなく殺風景な室内ではあるが、綺麗な山小屋のような仕上がり。コリーナの清涼な香りとオレンジの甘い香りが合わさりなんとも癒される。
「ベッドくらいは作っておこうかな」
残りの木材を使ってベッドの骨組みを作り、草素材で袋を作って、中に残りのオレンジの葉を敷き詰めてみた。簡易的な敷布団の完成だ。
明日は夜明けとともに出発だ。
行く宛はないが、とりあえず川沿いを歩きながら川下のほうへ向かってみる。理由は街が形成されているとしたら水源に近い場所が選ばれると思ったから。
それに人が住むなら山の上より麓に近いほうが自然だろうという漠然とした勘だ。
さて、今できることはやったし、そろそろ寝るか。
俺は新品ベッドに寝転がり、葉を配合して柔らかさがアップした掛けゴザで眠りについた。
【魔 力】5
【能 力】筋6 知5 速5 器12
【スキル】収納Max
【ギフト】クラッシュ&ビルド
【素 材】
コリーナ草2.1kg/水9kg
オレンジ実4kg/オレンジ木200kg
【持ち物】
オレンジの実 15個
アーモンド 50粒
ブルースライムの魔石 22個
ブルースライムジェル 4個
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