第4話 ギフト考察
転生二日目。
今日は朝から雨だ。この世界にもやはり夜があり雨も降るらしい。
その後、小屋の入口にすだれを作り、床にはゴザを敷いてみた。
昨日は五時間も昼寝したというのにいつの間にかまた就寝。灯りがないというのは何とも不便だ。
しかし、昨日の小屋作成のおかげかステータスが上がっていた。
【魔 力】192
【能 力】筋5 知5 速5 器9
【スキル】収納LvMax
【ギフト】クラッシュ&ビルド
【素材】
コリーナ草2.6kg
魔力は100近く増えた。
器用さも4上がって9になっている。これでよりクラフトしやすくなりそうだ。
夜明けとともに清々しい朝を迎え今日も張り切ってクラフト活動!
となる予定だったのだが、夜中から降り始めた雨は屋根の亀裂を伝わり屋内に侵入、我が家は完成半日で雨漏り被害に見舞われている。
仕方ないので、ハンモック作りの時に残ったコリーナ草を使って直径ニメートルほどの大きな葉っぱを作成し、カーポートのように小屋裏に設置した。
三角屋根内側の亀裂部分は小石をビルドして補強完了。
とりあえず雨漏りはしなくなったが、寝床として敷いているゴザが水浸しになっているので、寝れなくなってしまった。
せっかく雨風を凌ぐために作った小屋なのに思ったようにはいかないもんだ。
貴重な水を確保するため、巨大葉っぱは先端へ雨水が集まるようデザインした。小屋裏から傾斜をつけて入口付近に湧水の如く流れてくる。これで一時的に喉が潤った。
食料は昨日の散策中にたまたま見つけたオレンジ二つ。見た目も味もほぼ前世で食べていたものと変わらず美味しかったのだが、大きさはメロンくらいあった。
枝から垂れ下がり手の届く位置にあったので運良くゲット。
収納に入れてもオレンジと表記されていたので、言語能力スキルの翻訳機能が俺の分かりやすい言葉を選んでくれているようだ。
あの少年には本当に感謝しかないな。
「あ〜、それにしても暇だ」
外は雨だし、屋内も水浸し。
小石を使った彫刻遊びにも飽きてしまった。
二メートル四方の小屋の中には車やロボット、アニメキャラクターなどのミニフィギュアが並んでいる。
練習用(半分は趣味)に拾ってきていた小石で数時間は潰せたのだが、それもすぐに飽きてしまった。
自分の想像力を超えるものは作れないので、どれもクオリティが低い。まずはデザインセンスを磨く必要があるな。
「雨が止まないと外には出づらいし」
今更、濡れるくらいなんともないとはいえ、雨が振り出したことで気温が急激に低下している。
防寒といったら掛けゴザくらいしかない俺にとって雨の中の外出はなかなかハードルが高い。
「暇だ」
何かできることはないものか。
異世界に来て素晴らしいスキルを得たにもかかわらず、雨ごときに為す術がないとは。
何気なく、すだれの隙間から外を眺める。
葉から落ち続けた雨水で地面は水たまりになっていた。そんな光景を見ているうち、俺はふと気になった。
「水はどうなんだろう?」
石と草がクラッシュできることは確認した。
しかし、液体は?
一応やっておく必要があるな。
俺は巨大葉っぱの先から流れ落ちている雨水に手を伸ばす。
クラッシュと念じると、雨は手の中で蒸発し収納袋へと流れ込んだ。正しくは蒸発ではなく消失?
濡れていた手は一瞬乾いたが、またすぐに次の雨水の洗礼を受ける。
素材欄には水5gが追加されていた。
次に手を裏返して甲に水を当てながらクラッシュしてみると、手の甲の水には変化なし。
下を向いている手のひらからは水蒸気のようなものが立ち昇っている。
「クラッシュできるのは手のひらに触れたものだけか」
確かに体に触れたものが全てクラッシュしてしまったら服も着れないもんな。
「ということは」
俺が床に敷いたゴザに手を当て濡れている部分に触れると、ゴザから水蒸気が上がり巾着袋に収納されていき、すぐに乾かすことができた。
クラッシュとビルドの同時発動。
クラッシュした瞬間にビルドも行うことで水の素材だけを分離できたようだ。
頭の中では雨水だけを蒸発させるイメージをしたのだが、現象としてはおそらく草と水を同時にクラッシュし、草だけをまたゴザにビルドするという過程を経たのだろう。
それなら地面も同じか。
俺は一旦ゴザを退けて地面に向けてクラッシュ&ビルドを繰り返した。
やはり思った通り水分が消失し、粘土のようだった土はサラサラの土に変化した。
もう少し早く気付いていたら、あんな劣悪な環境を耐え忍ぶ必要もなかったのに。
クラッシュ&ビルドを繰り返し小屋の中の雨水は一掃された。
そうこうしているうちに雨も幾分弱まってきたようだ。
「ふう、これで雨漏り問題は解決っと」
雨が止んだら今度は昨日と逆方向を散策してみよう。今は何と言っても食料不足が課題だ。
たまたま運良くオレンジをゲットできたものの、毎日採れるとも限らないし、まだ体が動くうちに少しでも備蓄して置かなければこの先が危ぶまれる。
転生初日は少年が体力を回復してくれていたので、あまり気にしていなかったが、スキルに気を取られ過ぎたな。
ゲームみたいにすぐ豚とか牛とかに遭遇するものかと思ったが、現実はそう甘くないか。
ビシッ!
それなりの快適さを取り戻しウトウトしていると、天井からなにやら怪しげな音が。
上を見るとさっき補強した三角屋根中央部分に亀裂が走っている。
「またか」
眠い目をこすり、俺はすぐに応急ビルドを施す。
ビシッ!
直したばかりだというのに天井にはまたも亀裂が走る。
「これはちょっとやばいか?」
俺が慌てて外に飛び出すと、小屋はガラガラと音をたてて崩れ落ちた。
「マジっすかぁ。張り切って地面をクラッシュしすぎたかなぁ」
いつかこうなるとは思っていたものの、想像以上に早い幕引きにショックが大きい。
そんな気持ちとは裏腹に朝焼けの中、雨はいつの間にか止んでいた。
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