第2話 スキル確認

とりあえず、まずは収納スキルの把握から始めよう。


俺は目の前の草を抜き、貰った袋に収納してみた。すると、長さ1メートルほどの草が小さな袋にスルスルと入っていく。


【持ち物】コリーナ草1個


目を閉じると、先ほどの【ギフト】の下に【持ち物】が追加されている。


「なるほど」


目の前に生えていたコリーナ草という草を一本収納したわけだ。


次にユニークスキルのほうを試してみる。


クラッシュ&ビルドというのだから、【壊す】と【作る】の二つの操作ができるということだよな? それとも二つの効果が同時に発動?


俺はコリーナ草に向けてクラッシュと念じてみた。


しかし、少し待ってみても何も起こらない。


「ビルド」


念じながら口に出して言ってみても、やはりダメ。


「クラッシュ」

「ビルド」

「クラッシュ&ビルド!」


コリーナ草は俺の思いなどどこ吹く風といった様子でゆらゆらとそよいでいる。


ビルドは何かを作り出すわけだからおそらく素材となるものが必要なんだろうけど、クラッシュもできないのはなぜだ?


やり方に問題があるのか?


俺は試しに足元に落ちている小石を拾いクラッシュと念じてみた。


すると、小石は一瞬にして俺の手の上で細かい粒子へと変化し袋へと吸い込まれた。


「おぉ!」


予想外の展開につい声が出てしまったが、少し分かってきたぞ。


クラッシュは触れていることがトリガーになるんだ。

足元に落ちている枯れ葉を拾い上げ同じようにしてみると、やはり枯れ葉も手の中で細かい粒子に変化し収納された。


ということは、コリーナ草にも触れてみればいいわけね。俺は目の前に生えている草に手を伸ばし触りながらクラッシュと念じる。


やはりコリーナ草は粒子となり収納袋へ吸い込まれていった。


「そういうことか」


目を閉じると表記が変わっている。


【魔 力】95

【能 力】筋5 知5 速5 器5

【スキル】収納Max

【ギフト】クラッシュ&ビルド

【素材】

コリーナ草103g/石15g

【持ち物】

コリーナ草1本


スキルを使ったからか、魔力がさっきよりも少なくなった。


クラッシュすると粒子になり単位表記が変わるようだ。


コリーナ草はクラッシュすることで【素材】のコリーナ草に変化した。これがクラッシュの能力。

となると、ビルドはこの素材を使うってことだよな。


「とりあえず何か作ってみよう」


俺が再び目を閉じると素材のコリーナ草が点滅している。少し右に意識を向けると今度は石素材が点滅した。


頭の中で球体をイメージしビルドと念じると、素材から石がなくなり、持ち物に小石が追加された。


俺は目を開き収納袋から小石を取り出す。


「できた」


さきほど拾ったゴツゴツした小石は綺麗な球体の小石に変化している。


なるほど。イメージしたものに変化できるのか。

それなら草の方はどうだろ?


目を閉じコリーナ草が点滅していることを確認。


「草だから細長くしてみよう。草から作れそうなもの。縄とかロープとか?」


【コリーナ草100g → 縄1m】


すると、瞼に文字がポップアップされてきた。

チュートリアル付きとはなんとも良心的。


ビルドと念じると草素材が3gになり持ち物に縄が追加される。


収納袋から取り出してみると、出てきたのは雑草を1本にねじり上げたような長さ1メートルほどの縄のようなものだった。


「イメージしたのとは少し違う気がするけど、とりあえず成功だな」


クラッシュ&ビルドの使い方はだいたい分かったぞ!


持ち物のコリーナ草もクラッシュしておこう。


そしたら、まずはこの草たちを使って休憩できる場所を作ってみようかな。

キャンプの寛ぎアイテムといったらハンモックでしょ。縄が作れるならハンモックもいけるはず。


頭の中でハンモックをイメージ。


1本がだいたい100gだったから100本くらい取っておくか。


幸い草は大量に生えているし、まずは片っ端からクラッシュだ。


俺は周りの草を両手で交互に触れながらクラッシュして袋に収納していく。


十分ほど単調な作業を繰り返していると、周囲にあった草はきれいになくなっていた。


「ふう、こんなもんか」


目を閉じるとコリーナ草は9.8kgになっている。見慣れた単位に変換してくれているので量も分かりやすい。


それではいよいよ、ハンモックのビルドを始める。

オペ風に両指を上に向け、目を閉じハンモックをイメージ。

人がいたら絶対やらないことも誰にも見られてないから気兼ねなくできるね。この開放感がたまらない。


「ビルド」


掛け声とともに出来上がったのは長さ3メートルほどの大きさのハンモックだった。


「すごい! まるで高速3Dプリンターのようだ! でも、ちょっと大きすぎたか」


そういえば、大きさの調整はどうすればいいんだ? 頭の中だと大きさをイメージしづらいな。

人が寝てるところをイメージするとか?


出来たハンモックを一旦クラッシュ。


試しに自分がハンモックに横になって寛いでいる様子をイメージしながらビルドしてみたが、出来上がったのはハンモックと足を組んで寛ぐ藁人形だった。


「だめだ。クラッシュ」


うーむ。


もしかしたら、ステータスは目を閉じないと見えないけどスキルは関係なかったり?


俺は目を開けたまま出来上がった時の大きさを地面にイメージしながらビルドしてみた。


すると、袋から足元に向かって粒子が吹き出し、みるみるうちにハンモックが形成されていく。


足元にはイメージした通りちょうど良いサイズのハンモックが出来上がった。ビルドの時に目を瞑る必要はなかったんだな。


【魔 力】45

【能 力】筋5 知5 速5 器5

【スキル】収納Max

【ギフト】クラッシュ&ビルド

【素材】

コリーナ草4.1kg

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