第6話 揺れる決断
夏休みの終わりが近づくにつれ、真由美の心はますます不安定になっていた。亮の告白を受けてから数日が経ち、彼女は自分の気持ちと向き合おうとしていたが、答えはまだ見つからないままだった。学校が再開すれば、今のように自由に亮と会える時間も減ってしまう。真由美は、その前に亮ともう一度真剣に話をしなければならないと思っていた。
その日は、真由美が提案して再び秘密基地に集まることにした。真由美は亮にとっても、自分にとっても、特別な場所で話したかったのだ。彼女は、秘密基地での時間が、心を整理する助けになると信じていた。
森の中を歩きながら、真由美は自分の心の中で何度もシミュレーションを繰り返していた。亮にどう言えばいいのか、何を伝えるべきなのか。そのすべてが頭の中でぐるぐると回り、心拍が速くなるのを感じた。
秘密基地に到着すると、亮はすでにそこにいて、ベンチに座りながら何かを考えている様子だった。真由美が到着するのを見て、彼は少し緊張した笑みを浮かべた。
「お待たせ、亮君」真由美は少し息を整えながら言った。
「いや、俺も今来たところだから」と亮は答えたが、その声は少し硬かった。
二人はしばらくの間、何も言わずに並んで座っていた。風が木々の間を通り抜け、葉がささやくような音が静けさを包み込んでいた。真由美はその静寂が、次に何を言うべきか考える時間をくれているように感じた。
「亮君…私、あの日のことをずっと考えていたんだ」と真由美はゆっくりと口を開いた。
亮は彼女の言葉に耳を傾け、真剣な表情で彼女を見つめた。「うん、俺も考えてた」
真由美は深呼吸をし、心の中の迷いを押し殺して続けた。「私、亮君の気持ちにどう応えればいいのか、本当に悩んだの。私も、亮君と一緒にいる時間が好きで、特別だと思ってる。でも、それが恋愛感情なのか、まだ自分でも分からなくて…」
その言葉を聞いた亮は、少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに真剣な目をした。「そっか…正直な気持ちを言ってくれてありがとう、真由美」
亮のその言葉に、真由美は少しほっとした。彼が自分の率直な気持ちを理解しようとしてくれていることが、心に安らぎをもたらした。
「私、亮君が大切なのは間違いないんだけど…ただ、まだ自分の心の準備ができていないみたい。友達としての関係が壊れるのが怖くて…」
亮はその言葉を受け止め、しばらく考え込んだ。そして、静かに答えた。「真由美の気持ち、分かったよ。俺も、無理に答えを求めるつもりはない。だけど、君が迷ってるなら、ちゃんと待つから」
「亮君…」
「君がどんな答えを出すにしても、俺たちの関係は変わらないよ。これからも一緒に過ごしたいし、君が考える時間が必要なら、俺はそれを待つよ」
亮の言葉は真由美の心に深く響き、彼女は目に涙が浮かぶのを感じた。彼が自分のことをどれだけ大切に思ってくれているのか、今やっと理解できたような気がした。
「ありがとう、亮君。私、ちゃんと考えるね。そして、必ず答えを出すから…」
真由美の言葉に、亮は優しく微笑んだ。「それでいいよ。君が自分のペースで考えればいい」
その後、二人はいつものように何気ない会話をしながら、秘密基地での時間を過ごした。真由美の心は少しだけ軽くなり、亮との時間を楽しむことができるようになっていた。だけど、彼女はまだ心の奥で何かを探し続けていた。それは、自分の本当の気持ちを見つけるための時間だった。
夕暮れが迫る中、二人は秘密基地を後にした。森の中の道を歩きながら、真由美は空を見上げた。茜色の空に、一筋の飛行機雲が長く伸びていた。その雲が、まるで彼女の心の迷いを象徴しているかのように見えた。
「夏が終わる前に、私も答えを見つけられるかな…」
真由美はそう心の中で呟きながら、亮の隣を歩いた。二人の間には、変わらない友情と、これからどうなるのか分からない未来が広がっていた。夏の終わりは近づいていたが、彼らの物語はまだ終わっていなかった。
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真由美の心の迷いと亮の優しさが交錯する中で、二人の関係は新たな段階に進もうとしていた。夏の終わりまでに、真由美がどんな答えを見つけるのか、その決断が二人の未来を大きく変えることになるだろう。
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