第3話 夕立の秘密
真由美と亮の「秘密基地」での日々が続く中、夏の空は変わりやすく、午後になると突然の夕立が降り始めることが多くなってきた。そんなある日の午後、二人はいつものように秘密基地に集まり、何か新しいことをしようと話し合っていた。
「今日は何をしようか?」亮が木の幹に寄りかかりながら尋ねた。
「うーん…まだ何も決めてないけど、何か作ってみるのはどう?」真由美は周りを見渡しながら言った。
「何か作る?例えば何を?」
「うーん…例えば、この基地をもっと快適にするために何か飾り付けをするとか、ベンチを作るとか?」
真由美の提案に亮は目を輝かせた。
「いいね!それなら、この木の枝を使ってベンチを作ろう。きっと座り心地がよくなると思う」
二人はその場で作業を始めた。亮は木の枝を切り出し、真由美は落ち葉や小石を集めて装飾を考える。二人が一緒に作業する姿は、まるで本当に秘密のプロジェクトに取り組んでいるかのようだった。
しかし、作業が進むにつれ、空が急に暗くなってきたことに真由美が気づいた。
「亮君、ちょっと待って…空が変だよ」
彼女が指さす方を見ると、黒い雲が急速に広がっていた。空はすでに雷の音で震え、雨の匂いが風に乗って漂ってきた。
「やばい!これはすぐに降るぞ!」亮は作業を中断し、真由美を促した。「早く戻らないと!」
しかし、亮の言葉が終わるか終わらないかのうちに、突然の豪雨が二人を襲った。森の中はすぐにびしょ濡れになり、道は泥で滑りやすくなっていた。二人は慌てて森を抜けようとしたが、雨は容赦なく降り続けた。
「走ろう!」亮が叫んだが、真由美は足を滑らせ、ぬかるみに倒れ込んでしまった。
「真由美!」亮はすぐに駆け寄り、彼女を起こそうとしたが、二人とも泥まみれになってしまった。
「大丈夫?」亮が心配そうに尋ねると、真由美は少し苦笑いを浮かべた。
「うん、大丈夫。でも、これじゃあ家に帰れないね」
二人はしばらくその場で雨宿りをすることにした。大きな木の下で雨を避けながら、二人は息を整えた。亮が持っていたタオルで真由美の顔を拭き、泥を落とそうとするが、効果はあまりなかった。
「ごめんね、俺のせいでこんなことに…」亮は少し申し訳なさそうに言った。
「ううん、私こそごめん。もっと早く気づいていれば…でも、なんだか楽しいね、こんな冒険みたいなこと」
真由美は亮に微笑みかけた。その笑顔を見た亮は、安心したように笑い返した。
「そうだな。これも夏の思い出だよな。こういうの、忘れられないと思う」
雨音が二人の周りを包み込み、しばらくの間、何も言わずにその音を聞いていた。雨が徐々に弱まり、遠くの空に虹がかかり始めた。
「雨、止みそうだね」真由美が虹を指さして言った。
「本当だ。でも、もう少しここにいようか。なんだか、この場所がすごく落ち着くんだ」
亮の言葉に、真由美は静かに頷いた。二人は泥だらけになりながらも、その場から動こうとせず、夕立が止むのを待っていた。
この雨の中で過ごした時間は、二人の心に深く刻まれた。秘密基地だけでなく、ここでの一瞬一瞬が、真由美と亮にとって特別なものになっていく。
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夕立が過ぎ去った後、二人は再び夏の日差しを浴びながら森を後にした。彼らの絆は、確かに雨と共に強くなっていた。そして、夏はまだ始まったばかり。これからも二人を待ち受ける冒険が続くのだろう。
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