第2話 秘密の計画

夏休みが始まって一週間が過ぎた頃、真由美と亮は再び海辺で顔を合わせた。二人は夕日の中で交わした約束を果たすため、計画を立てることにしていた。亮は真由美の家の近くに住んでおり、気軽に「ちょっと行ってくる!」と出かけられる距離だった。


この日は真由美の部屋で集まることになった。真由美の部屋は、小さな窓から庭が見える穏やかな空間で、机の上には何冊かの小説とノートが積まれている。二人はベッドに腰掛け、何か新しい冒険について話し合い始めた。


「じゃあ、どうする?まずは何をやってみる?」亮が興奮した様子で尋ねた。


「うーん…秘密基地って言ってたよね。でも、どこに作るの?」真由美は少し考え込みながら答えた。


「それが問題だよなぁ…森の中とかどうかな?昔、探検したことがあるんだけど、隠れ場所にはピッタリの場所があったんだ」


亮は目を輝かせて提案したが、真由美は首をかしげた。


「でも、森の中はちょっと怖いかも。私たちだけで行くのは危ないんじゃない?」


「うーん、確かに。でもさ、それも含めて冒険じゃない?それに、森は誰も来ないから本当に秘密基地になると思うんだ」


亮は真由美を説得しようとしたが、彼女はまだ不安そうだった。しかし、その反応を見た亮は、何か思いついたようにニヤリと笑った。


「じゃあ、こうしよう。まずは下見をしに行こう。もしもヤバそうなら、別の場所を探せばいい」


その提案に、真由美は少しだけ安心したようで、頷いた。


「わかった。でも、ちゃんと安全に気をつけようね」


「もちろん!俺がちゃんと守るからさ!」亮は自信満々に答え、真由美は思わず笑ってしまった。


翌日、二人は朝早くから森へと向かった。蝉の鳴き声が響く中、草木が生い茂る小道を進んでいくと、次第に日差しが遮られ、涼しさが増してきた。森の中は薄暗く、足元には小さな生き物たちが動き回っている。真由美は少し緊張していたが、亮の後ろ姿を見て、心を落ち着けようとした。


「ここだ!」


亮が突然足を止めた。目の前には、木々に囲まれた小さな空間が広がっていた。木の根が複雑に絡み合い、地面には柔らかな苔が生えている。外からはほとんど見えないようになっており、隠れ家としては完璧だった。


「ここなら、誰にも見つからないよ」亮が誇らしげに言う。


「すごい…本当に秘密基地みたい」真由美はその場所を見渡しながら、心の中でわくわく感が高まっていくのを感じた。


「ここを二人だけの場所にしようよ。何か困ったことがあったら、ここに来て相談するとかさ」


亮の言葉に、真由美はしばし沈黙した。そして、ゆっくりと頷いた。


「うん、そうしよう。ここなら、誰にも邪魔されないし、安心して話せるね」


二人はその場所を「秘密基地」と名付け、ここから何か特別なことを始めようと決意した。真由美の心には、亮と一緒に過ごす時間がもっと増えていくことへの期待が膨らんでいた。


その日、二人は森の中で秘密基地の計画を練りながら、今まで以上に親密な時間を共有した。これから始まる冒険に胸を躍らせながら、彼らはこの夏が永遠に続けばいいのに、と願わずにはいられなかった。


---


新たな秘密基地を得た二人は、この場所を舞台にどんな物語を紡いでいくのか。夏の青空の下、彼らの絆はさらに深まっていくのだろう。

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