学力検査

勉強合宿の初日、朝ご飯を終えた冬と稲は、早速学力検査を受けるために集合場所へと向かった。施設内の大きなホールには、他の参加者たちも集まり始めており、緊張感と期待が混じり合った雰囲気が漂っている。ホールの前方には、試験官たちが待機しており、教官の一人が説明を始めた。


「これから皆さんには、学力検査を受けていただきます。検査は筆記試験と実技試験の二部構成です。まずは筆記試験を行いますので、各自指定された席に着いてください。」


冬と稲は指定された席に座り、配布された試験用紙と問題集を前に、試験開始の合図を待った。筆記試験は、数学、理科、社会、そして英語の四科目にわたっており、それぞれが60分の時間制限付きで行われる。冬は少し緊張しながらも、鉛筆を握りしめ、稲のほうをちらりと見やった。稲はすでに集中モードに入り、問題に目を通していた。


試験が始まると、ホール全体に静寂が訪れ、紙をめくる音と鉛筆が走る音だけが響いている。冬は問題を一つ一つ慎重に解いていき、時折ペンを止めて考え込む。稲はさすがの速さで問題を解き進め、余裕すら感じられる表情で筆を進めていた。


筆記試験が終わると、次は実技試験の時間だ。実技試験は、教官との質疑応答や参加者同士のディベート形式で行われる。参加者たちはテーマごとに分けられたグループに所属し、それぞれのテーマについて議論し合うことになった。


冬と稲は同じグループに入り、テーマは「科学と人間の未来」についてだった。教官がテーマを発表すると、冬は少し戸惑いを見せたが、稲がすかさずフォローに入った。「大丈夫、冬。自分の考えをそのまま伝えればいいから。」


ディベートが始まると、各自が自分の意見を述べ、他のメンバーの意見にも耳を傾ける。稲は冷静に論理的な意見を述べ、時折冬に視線を送りながら、彼女の考えを引き出すように問いかけた。冬は最初こそ緊張していたが、次第に自分の意見を述べることに慣れていき、議論の中で徐々に自信を取り戻していった。


教官たちは各グループのディベートを見守り、適宜質問を投げかけて議論を深めていく。冬が自身の意見を述べると、教官の一人が鋭い質問を投げかけてきた。「その意見は興味深いですが、それに対する反論としてはどのように考えますか?」


一瞬戸惑いながらも、冬は少し考え込んでから、しっかりとした声で答えた。「そうですね、その反論も確かに一理ありますが、私は…」と、自分の意見を補強する形で答えを続けた。その姿に稲は微笑み、彼女が成長しているのを感じていた。


実技試験が終わると、参加者たちはホールを後にし、次のセッションまでの自由時間を楽しむことになった。冬と稲は、緊張の糸が少し解けたのか、笑顔でお互いを見つめ合った。「意外と楽しかったね」と冬が言うと、稲も笑顔で答えた。「そうだね。良いスタートが切れたと思うよ。」

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