第5話 再襲撃
数日が経ち、乃斗は不安な日々を過ごしていた。家の周囲から妙な物音が聞こえる夜が続き、深きものたちが再び彼の命を狙っていることを感じていた。彼はショットガンを肌身離さず持ち歩き、「エルダーサイン」の本を何度も読み返していた。
本の中には多くの呪文が記されていたが、特に「破壊」の呪文に乃斗は目を留めた。説明によると、この呪文を唱えると、相手に激しい頭痛を引き起こし、顔や手が腫れ上がり、体液が絞り落とされることで視力を奪う効果があるという。
「もしものときのために覚えておかないと…」
乃斗はその呪文の言葉を何度も唱えて、発音を体に染み込ませた。言葉を声に出すたび、部屋の空気が僅かに変わるのを感じた。まるで、呪文そのものが彼の中に力を宿しているかのようだった。
その夜、乃斗はいつものように本を読みながら眠りに落ちた。しかし、深夜に不意に目を覚ました。外から這いずるような音が聞こえてきたのだ。彼は息を潜め、音のする方向に目を向けた。窓の外に、不気味な影がうごめいているのが見えた。深きものたちだ。彼らが再び現れたのだ。
乃斗はショットガンを手に取り、破壊の呪文を唱える準備をした。彼の心臓は激しく鼓動していたが、恐怖を振り払うように冷静さを保とうと努めた。
「ここに入ってきたら…」
窓が激しく叩かれ、ガラスが割れる音が響いた。乃斗はショットガンを構えながら呪文を唱えた。その瞬間、彼の手のひらが微かに輝き、呪文の力が解き放たれた。窓から侵入してきた深きものに光が触れると、彼らは突然苦しみ始めた。
深きものたちは頭を抱え、激しい頭痛に苦しみながら呻き声を上げた。彼らの顔や手は見る見るうちに腫れ上がり、体液が滴り落ちて視力を失っていく様子が見て取れた。彼らの動きは鈍くなり、やがて地面に崩れ落ちた。
「これが…破壊の呪文の力か…」
乃斗はその光景を見て、呪文の強力さに驚きを隠せなかった。同時に、この力が自分を守るための唯一の武器であることを強く実感した。だが、安心する暇もなく、さらに多くの深きものたちが窓の外に現れた。
彼はもう一度ショットガンを構え、弾丸を次々と撃ち込んだ。深きものたちは弾丸を受けて倒れていったが、それでも次から次へと押し寄せてくる。
「これじゃキリがない…!」
乃斗は再び破壊の呪文を唱え、彼らの動きを封じようとした。呪文の効果が発動すると、深きものたちは再び苦しみ始め、動きが鈍っていった。だが、呪文を唱えるたびに乃斗の体力も限界に近づいていくのを感じた。
「もう…これ以上は…」
彼は倒れそうになりながらも、必死で自分を奮い立たせた。その時、耳元でかすかな声が聞こえた。
「よくやった、少年。だが、これはまだ始まりに過ぎない。これからが本当の試練だ。」
その声は、どこかで聞いたことがあるものだった。乃斗はその声の主が誰なのかを思い出そうとしたが、意識が薄れていく中で、それを知ることはできなかった。彼はそのまま深い眠りに落ち、次の戦いに備えて体を休めるしかなかった。
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