第64話 修学旅行①-5 晩御飯

ホテルに戻り自分の部屋の荷物を片付ける。

ホテルの部屋割りは何とか部屋の数ともども何とか同じように取れたらしく予定通りのメンバーでの同部屋となった。

メンバー紹介に入ろうと思う。


まずは席替え時のじゃんけんにて俺にいかさまで勝利を収めた男、村中君翔太。

そして体育祭騎馬戦にて俺の騎馬となった3人組、江上圭吾、瀧本聖人、早田周正。

最後にユウベルホテル向井の御曹司、向井隆貴。


この5人に俺を加えた6人が同じ和室一部屋で生活していくこととなっている。


「そろそろ夕食の時間だから、向かおっか」

「そうだね」

「うん」

「そうしよう」


村中君君の提案に3人組が乗り、俺たちは夕食会場へと足を運んだ。


夕食会場の扉を開けた瞬間、全員の足が止まった。

目の前に広がる豪華なビュッフェ。

天井のシャンデリアが煌びやかに光り、長テーブルに並んだ料理の数々が輝いて見える。

天ぷら、お刺身、ジンギスカン、カニ、イクラ丼、北海道名物の数々……そして、隅には色とりどりのデザートコーナー。


「すごい……!」

「これ、全部食べられるかな……?」


隆貴は早くもジンギスカンの香ばしい匂いに釘付けだ。


「お前ら、まだ席にすら着いてないのに目が輝きすぎだろ」


俺は苦笑しながら声をかけたが、正直なところ俺もテンションが上がっていた。

席に案内されると、先生が全員を見回しながら注意を促した。


「みなさん、好きなものを自由に取ってきて構いませんが、取ったものは責任をもって食べましょう。食べ残しは許しまへんよ~。それでは、いただきます!」


「いただきます!」の合図とともに、俺たちは一斉にビュッフェ台へと向かった。

村中君は目を輝かせながら真っ先にカニコーナーに向かう。


「やっぱり北海道といえばカニだよな!」

「いや、お前の皿、カニばっかりじゃねえか」と突っ込む俺をよそに、彼は満足げに皿を持ち帰っていく。


一方で、隆貴はジンギスカンの鉄板の前で足を止めた。


「この焼き加減、最高だな……。この香りはただ者じゃないぞ」

「まるでグルメレポーターだな」

「当然だろ。これぞ本場の味だ。お前も早く来いよ」


そう隆貴に手招きされ、俺もつられて肉を取る。

江上、瀧本、早田の3人組は和食コーナーで盛り上がっていた。


「この煮物、めっちゃ旨そうじゃね?」

「いやいや、まずは刺身だろ!」

「お前ら、食べ過ぎるなよ。まだデザートがあるんだからな」


それぞれ好きな料理を山盛りにした皿を手に戻ってくると、自然とみんなのテンションが最高潮に達していた。


「乾杯!」


グラスを軽く合わせた後、さっそく料理に手を伸ばす。

ジンギスカンの肉は柔らかく、口の中で広がる香ばしい風味がたまらない。

イクラ丼はぷちぷちとした食感が心地よく、海鮮の甘みが舌に染み渡る。


「このイクラ、最高じゃね?」

「カニも負けてないぞ」

「いや、刺身が一番だろ」


瀧本が感動したように言うと、早田がカニで対抗する。さらに江上が刺身だと口を挟み、次第に自分たちの皿の中身を見せ合う謎のバトルが始まった。

そんな中、村中は落ち着いた様子でジンギスカンを一口ずつ味わいながら、ちらりと俺に目を向けた。


「こうしてみんなと食べるのも悪くないな」

「何だよ、その言い方。いつも孤独な食事でもしてるのか?」

「いや、普段は一人で食べることが多いだけだ」


その言葉に一瞬驚きつつも、俺たちの間にある温かい雰囲気が少し特別なものに思えてきた。

デザートタイムになると、また全員がビュッフェ台へと散らばる。

村中君がソフトクリームの機械に挑戦し、勢い余ってこぼしたクリームを見てみんなが笑い転げた。

江上はケーキを片っ端から取ってきて、最後には「食べ切れないかも」と弱音を吐く。


「お前ら、食べ過ぎるなよ。明日もあるんだからな」

「明日になればまた別のうまいもんが食えるだろ。北海道だぞ?」


全員が笑顔で食事を終える頃には、すっかり満腹で動けないほどだった。


「これでしばらくは何も食べなくても生きていける気がする」


村中君が腹をさすりながら言うと、「お前、それはないだろ」と全員が笑い声を上げた。

部屋に戻ると、誰もがそのまま布団に倒れ込みそうな勢いだった。


「……次は温泉だな」隆貴が一言呟くと、全員が疲れを忘れて顔を上げた。


男の考えることは同じなのであろう。

北海道の夜は、まだまだ続きそうだった。



――――――――――


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