第15話 二つの恋?

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▼松村陽菜視点▼


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転校生がやって来てはや3日。

私は田原くんに恋愛相談をしてからまだ彼とまともに話せていない。

彼と話そうとしてもいつもそばには向井くんや転校生の西原さんがいて話しかけようにも話しかけられない。

それにこれは気のせいかもしれないけど、目が合っても逸らされたりとどこか彼に避けられているような気もする。


(なんか嫌な感じがするなぁ)


田原くんが転校生と話したり、楽しそうにしていたりするのを見ると何故か胸がゾワゾワしてくる。


(咲音にも急かされてるし、どうにか話に行かないとなぁ〜)


そんな風に考えながら歩いていると、教室から勢いよく出てきた人とぶつかってしまった。


「ごめんなさい」

「松村さん!?ごめん、大丈夫?」


その声に顔を上げると、向井君が心配そうな表情でこちらを見ていた。


「あ、うん。なんでもないよ」

「どうしたの、なんか元気なさげだけど」


松村さんは慌てて微笑み、さりげなく話を逸らそうとしたが、向井君は納得がいかない様子で少し首をかしげた。


「もし何かあったなら、話を聞くよ」

「えっ?」

「最近、輝とあんまり話してないから、どうしたのかなって思ってさ。前は一緒に勉強までする仲だったのに」


私は一瞬戸惑った。

田原君と仲がいい向井君がこんなふうに気にかけてくれるのは嬉しいけれど、彼に恋愛相談をするのは少し抵抗があった。田原君のことをどう思っているのか、自分の気持ちを正直に話すことができないからだ。


「ありがとう、向井君。でも、本当に大したことじゃないから、気にしないで」


私はやんわりと断り、気を取り戻して自分の席に戻ろうとした。

しかし、その瞬間、田原君が西原さんと笑いながら教室に入ってくるのが目に入った。

二人の様子はとても親しげで、まるで何年も前からの友達のように見えた。

その光景を目の当たりにすると、胸の中に不安と焦りが混じった複雑な感情が湧き上がってきた。

私は思わず視線をそらし、胸の中で何かがざわめくのを感じた。


(どうしてこんなに不安になるんだろう。田原君が誰かと話しているだけで、こんなにも……)


咲音の言葉が頭の中でリピートする。

何か行動を起こさなければと感じつつも、心の中で不安と葛藤が渦巻いていた。

これ以上、彼との距離が広がる前に、自分の気持ちをしっかりと伝えたいと松村さんは強く思うようになった。


(もう一度、彼にちゃんと話しかけてみよう。避けられていると感じても、私が勇気を出さなきゃ、何も変わらないんだから)


彼女は心の中で決意を固め、次に田原君と二人きりになれる機会を探そうと考え始めた。

が、そんな決意むなしく何の進歩もなく家に帰ってきてしまった。

挑戦はしようとした。だけど、最後の一歩を踏み出す勇気が出てこなかった。


(あぁ、もう!何で私はこんななの!)

「お姉ちゃん、おかえりなさ……」


自分のことが嫌いになりそうだった。

私は、玄関から自分の部屋まで一直線に向かい、鞄を投げて置きベッドにうつ伏せにダイブする。

枕に顔を当て「わー!」と思いっきり叫び自分に対するストレスを発散しようとするも、不完全燃焼。

そんな時、部屋の扉をノックする音が聞こえて来た。


「お姉ちゃん?大丈夫?」


咲音は心配そうな顔で部屋に入って来た。


「お姉ちゃん、怖い顔してる」

「咲音……」


私は顔を上げ、ベッドの上に座り直した。

咲音が心配そうな顔で私を見つめているのを見て、少し胸が痛んだ。


「ごめんね、咲音。ちょっとだけ、疲れちゃっただけだから……」


咲音は小さく頷いたが、私の言葉を信じきれないのか、ベッドの端に座り、じっと私の顔を見つめてきた。

まるで、私が本当のことを話すのを待っているかのように。


「また話せなかった。田原君と話したいんだけど、最近、彼が私を避けてる気がして……。それに、他の子と仲良くしてるのを見ると、何か胸がモヤモヤして……」


何故か私は心の内を咲音に話し出していた。

咲音は私の手をそっと握りしめてきた。

その小さな手の温かさに、少しだけ心が和らいだ。


「咲音ね、この前幼稚園の先生に聞いたんだ。好きってどんな気持ちなのか」

「どうして?」

「この前お姉ちゃんがお風呂で言ってたから、咲音聞いたんだ。そしたら、『隣にいていつも楽しい人』って言ってた」


私はそう言われ考えてみる。

隣にいていつも楽しい人。

田原君も、中原君も隣にいる時いつも私は笑っていた気がする。

そして実感する。


私は二人共を好きになってしまったのだと。


「ありがと、咲音」

「お姉ちゃん、元気になった?」

「うん。咲音のお陰」

「咲音偉い?」

「偉い偉い。今日の晩御飯は咲音の好きなオムライスにしてあげる」

「オムライス!やった!」


飛び跳ねる咲音の横で私は決意を固めるのだった。



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この度は数ある作品の中から


「迷子の妹を送り届けた着ぐるみの中の人が俺だと気づいたクラスのマドンナがぐいぐいやって来る」


を読んでいただきありがとうございます!!!!


こんなにも読まれるとは思っておらずびっくりです。続きが読みたい!など思った方はぜひ、★やコメント、♥などを付けてくれると嬉しいです。


今後こうなって欲しい、かわいいなどコメントを残してくれるとモチベが上がります。


みっちゃんでした( ´艸`)

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