第9話 勉強会 part2
松村さんとの図書室での勉強会が始まって早くも一週間が経った。
今日も図書館で松村さんと勉強をし、俺は松村さんを家に送っていた。
これまでの自分を考えれば、クラスのマドンナとのそんな関係なんて考えてもいなかったし、この生活はいつまで続くのだろうか。
だいぶ彼女ともフランクに話せるようになったが、松村さんはこの前はいいとは言ってくれはしたものの本当に俺みたいなやつと大切な高校生活の放課後を費やしてもいいのだろうか。
「ねぇ、聞いてる?」
「あぁ、ごめん。何だっけ?」
「も~、私の妹の運動会がもうすぐあるって話だよ」
「俺たちのテストが終わった週の土曜日だっけ」
「そう!がんばって応援しなきゃ。咲音も幼稚園最後の運動会だし」
「妹ちゃんのことホントに好きなんだね」
「うん!」
そんな話をしていると、いつの間にか松村さんの家に到着していた。
「いつも送ってくれてありがとね」
「いや、それはこっちのセリフだよ。毎日のように勉強教えてもらって感謝しても仕切れないよ。これで来週のテスト出来る気しかしない」
「気を抜いたらダメだよ~。最後まで頑張らないと今までの頑張りが無駄になっちゃう」
「そうだね」
「あっ、お姉ちゃん!おかえり」
家の前で会話していたのが聞こえたのか、松村宅から咲音ちゃんが出て来た。
「咲音、ただいま。あっ、紹介するね。私の妹の咲音で~す。可愛いでしょ~」
松村さんは俺に自慢げに咲音ちゃんを紹介してきた。
実を言うと咲音ちゃんとは、あったことがあるのだがそれはまだ知られていないはずなので俺は始めましての振りをして咲音ちゃんに挨拶をする。
「はじめまして。お姉ちゃんのクラスメイトの田原です。よろしくね」
「お姉ちゃんの妹の松村咲音です。よろしくです」
そんな可愛らしいセリフで挨拶を返してくれた咲音ちゃんは、右手を握手を求めるように俺の方に出して来た。
「今、幼稚園で握手が流行ってるらしいの。だからしてあげて」
俺は松村さんにそう言われ、幼稚園の流行というものは分からないなと思いながら咲音ちゃんと握手を交わす。
俺が握手の手を離そうとすると、何故か咲音ちゃんは俺の右手をしっかりつかんで離してくれない。
「咲音ちゃん?」
俺がそう呼びかけると、咲音ちゃんは俺の右手をそのまま自分の頭の上に持って来て乗せた。
すると、咲音ちゃんは何故かとっても笑顔になった。
そんなに頭を撫でて欲しかったのだろうか。
「咲音、そろそろ家に入るよ~。田原君もまた明日ね」
「はーい」
「うん。またね」
―――――――――――
日を跨いだ日曜日の朝から、俺は松村家に向かって歩いていた。
なぜこの陰キャ不衛生な俺が松村家に御呼ばれしたのかというと、それは昨日の勉強会の帰り道に話は遡る。
▼
「田原君突然なんだけど明日暇?」
「明日?まぁ、テストも近いし勉強しようかと思ってたくらいだけどどうして?」
「明日家来ない?」
その提案に俺は歩いていた足を止めてしまった。
「あ、いや変な意味はないよ。ただ、咲音がまたあのお兄ちゃんに会いたいってうるさいから。それに勉強するなら私が教えてあげるからさ」
「咲音ちゃんが…。なるほど、それなら行かせてもらおうかな」
▲
そう言うことである。
俺は松村家に到着し、インターホンを鳴らすと家の中から「お兄ちゃんが来た!」と可愛らしい声が聞こえドアが開かれ、咲音ちゃんが出て来た。
「おはよう、咲音ちゃん」
「おはよう、ひ…。お兄ちゃん!」
「田原君いらっしゃい。上がって上がって」
「お邪魔します」
「咲音はリビングに居て、後でお話しできるから」
「は~い」
俺は松村さんに付いて、家に上がり階段を上る。
女子の家に上がるのは、元カノ以来だなと一瞬思ったが、女の子に会っているときに別の女の子のことを考えるのは失礼だなと思い考えるのを辞める。
クラスのマドンナである松村さんはどんな部屋をしているのだろうか。
先を歩く松村さんがかちゃりと扉を開き、中に招き入れられる。
女の子の部屋に入るのが初めてというわけではないが……緊張する。どことなく良い匂いが漂ってる気もするし。
悟られないよう、静かに深呼吸する。他意はない。
「ちょっと待ってて、お茶持ってくるから」
あまりじろじろ見るのは行儀が良いとは言えないが……。
この可愛らしい部屋は松村さんの趣味かな。
「どうした?」
「いや、女の子らしい部屋だなぁと」
「あんまり見ないでね、恥ずかしいから。それじゃあ早速勉強始めよっか」
カリカリ……。
カリ、カリカリ……。
部屋に響く、シャーペンの芯とノートの表面が擦れる音。時計の長針がカチカチと歩く。
カーペットの上でぺたん座りし、テーブルに教材を広げる俺達。
二人用ではないためか少し窮屈だが、使えなくもない。
最近は勉強会のお陰で学力が付いて来て、分からないところが出てきたら松村さんに聞くというシステムに変更し、それぞれが自分の勉強に打ち込む。
(ふ~)
そんな中、俺は自分の勉強がひと段落して顔を上げ時計を見ると、そろそろ昼の12時を迎えようとしていた。
そんなに時間が経ったのかと時計と、集中が切れてお腹が空いていることを実感して再確認する。
グ~~
お腹がの音が鳴った。
でも俺じゃない。
俺は音が聞こえた方に、顔を向けると赤面させた松村さんと目が合った。
――――――――――
この度は数ある作品の中から
「迷子の妹を送り届けた着ぐるみの中の人が俺だと気づいたクラスのマドンナがぐいぐいやって来る」
を読んでいただきありがとうございます!!!!
思い切って書き始めた作品のため、どうなるか分かりませんが頑張って書きたいと思いますので、続きが読みたい!など思った方はぜひ、★やコメント、♥などを付けてくれると嬉しいです。
今後こうなって欲しい、かわいいなどコメントを残してくれると嬉しいです。
みっちゃんでした( ´艸`)
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