第6話 女子会とその後

もう6月にも入ろうかという頃。

席替えをしてからも時間が経ち、今の席に皆が慣れ始めて来た頃、俺は最近隣の席を拠点として繰り広げられる松村まつむらさんを含めた3人女子会に貴重な合間の睡眠時間への攻撃を受けていた。


陽菜ひなはずっと彼氏とかいないよね?」

「うん。出来たことないよ」

「好きな人とか気になる人は?」

「それは……」

「何その反応!?」

「それは誰かいる反応じゃん!教えて教えて!」


いつものようにイヤホンをして、音を遮断しようとしたが今日は聞こえて来た内容が内容だったために気持ち悪いかと思われるかもしれないが、寝たふりを敢行して聞き耳を立てることにした。


今まで色恋沙汰の話を聞いたことなかったクラスのマドンナの、しかも最近関わっている子の恋バナなんて聞きたいに決まってんじゃん。


「嫌だって」

「んー、それじゃあタイプの人は?」

「タイプの人?」

「ほら、高身長とか、賢いとかさ」

「ん~、チャラい人はあんまり好きじゃないかな」

「うんうん」

「金髪じゃなくて、黒髪の方ががいいと」


チャラくなくて、黒髪か。

これは俺か?チャラくは無いと思うし、髪は黒いし。

とか、ありもしないことを考えて少し喜んでみる。


「それでそれで?」

「清潔感がある人がいいな」

「清潔感?」

「短髪とか?」

「とか、ちゃんと整えている人」


短髪、清潔感か。

それじゃあ俺ちゃうな。髪の毛は目までかかってるし。


「身長は?高い方がいい?」

「ん~、まぁ、私より高ければいいかな」


私より高ければいいってことは、一応170はある俺は可能性があるな。


「クラスのマドンナでも、あんまり理想は高くないんだね~」

「それが、今陽菜が気になっている人の容姿か~。さぞ、かっこいいんだろうな~」

「……」

「ノーコメントってことは、かっこいいんだ~!」

「きゃ~、顔赤くしちゃって~」


かっこいいってことは、俺じゃないか。

そんな風に俺が、どっかの芸人みたいなツッコミを心の中でしていることなんて露知らず、彼女たちの女子会は進んでいく。


「写真とかないの!?」

「なくはないかな」

「えー。見せて見せて」


「え、かっこいいじゃん」

「どこで出会ったんだよ~」


そんな会話を聞き、確実に俺ではないと確信したため俺はいつも通りイヤホンをして、その後の時間を過ごした。



――――――――――


松村まつむら陽菜ひな視点▼


――――――――――


その日の夜。

私はお風呂に浸かりながら今日のことを思い返す。

もうホントにあの二人ったら、やめて欲しいよ。

あんなに「気になっているの?」「好きなの?」と聞かれてしまってから、彼のことを意識してしまうようになってしまったじゃない。


ひかる

咲音が迷子になった時には助けて貰い優しい一面を見て、偶然たまたま出会った時には咲音と少年のような一面を見た。

カフェで過ごした時は楽しかったし、咲音もあれからまた会いたいと言うくらいには仲良くなっている。


「そう言えば連絡先持ってないな」


それなりに親しくなったと思うにもかかわらず、連絡先を持っていないためまた会うには偶然が重ならければいけないことに気が付く。


「次あった時にでも聞いちゃうか」


咲音のまた会いたいを叶えるためには連絡先は必須だ。


「でも、私から連絡先聞いたらすぐそうやって連絡先を聞いてくるような軽い女だと思われるかな」


私はこれまで恋愛というものに正面から向き合ってきたことない。

告白は何度か受けて来たけれど、どの人もあまり仲良くなっていなかったりで断って来た。

だから、付き合う以前に好きという気持ちがどういうものなのかもあまり理解していない。


「好きって何?」


そんな恋愛初心者の私では永遠に答えの出ない問いをしばらくお風呂に浸かりながら考えていたが、私がいくら考えても意味がないということに気が付いてお風呂から上がった。



――――――――――


咲音さきねの日記▼


――――――――――



今日、ヒカルンお兄ちゃんとまた会ってあそびました。


ヒカルンお兄ちゃんは、みんなのヒーローで、かっこよくてやさしかったです。

あと、かたぐるまもしてもらってうれしかったです。

今日は咲音ばっかりヒカルンお兄ちゃんとあそんだけど、こんどはお姉ちゃんともいっぱいあそんでなかよしになってもらいたいです。

そうしたらまた会えるよね?


またあいたいな。



※咲音ちゃんの幼稚園の先生になったつもりで、返信をコメント欄に書いてね!

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