第4話 席替えに神様は居るのだろうか

「今から席替えをしまーす」


そんな先生の一言で教室内のボルテージが一気に上がる。

学生にとって席替えというものは、大学生や社会人にとっての合コンと同じようなものであると俺は思う。

隣、前後の席になったのが女の子だと、いい子が来た合コンのように仲良くなって恋仲になってゆく。

逆にそれが男だと分かった瞬間にテンションが駄々下がりである。だから、学園なんちゃらでも歌にされているのだ。

これは女子も一緒だ、と思いたい。


「番号くじは先生が作って来たのでこっから引いてね~。引く順番はと、……村中むらなか田原たはらのじゃんけんの勝った方から」


名指しされたのは教室右前に座る村中翔太むらなかしょうたと左後ろに座る俺だった。

俺と村中君は徐に立ち上がると、それぞれの近い席の人たちが「勝て~」だの「頼む~」だの、いろんな声援を送る。

陰キャの俺もこの時は幾何の声援を受ける。

その際相手の村中君に席が近い隆貴りゅうきが何やらひそひそと伝えているのが見えたが気にしないでおく。


「「さいしょはグー」」


先生の「せーの」の掛け声でクラス皆で、ドリフターズのあの方が考えたと有名な決まり文句でじゃんけんが始まる。

こういう場合は勝った方がいいのか、負けた方がいいのか。

先手必勝ともいうし、残り物には福があるということわざもある。


「「じゃんけん」」


こんなもの悩んでも仕方がないのがじゃんけんなので、俺は自分では分かっていながらもいつも最初に出してしまう手を変わらず出すことにした。


「「ポン!」」


俺が握りしめて出したグーに対して、村中君が出したのはパー。

その結果を見て、クラスメイト達が一喜一憂するなか、俺はニヤニヤしがら俺のことを見る隆貴と目が合った。

アイツ俺のじゃんけんの癖を知って村中君に指示したのか。


「それじゃあ、村中から順番に先生御手製のくじを引きに来い。あと、このくじは回収するから捨てたりぐちゃぐちゃにするんじゃないぞ。席番号はランダムは面倒くさいから、1番が村中の席でそっから、くじ引く順番が番号な~」


その先生の声と同時に、くじの入った箱の前に列ができ始める。

俺はじゃんけんに負け最後なのでみんなの様子を眺める。

1番を引いた奴、真ん中一番前を引いた奴、後ろの席を引いた奴様々出てくる中、クラスのマドンナ松村陽菜まつむらひなの順番が回って来る。

隣がまだ決まっていない男子は、固唾をのんでその席がどこなのかを見守る。


「30番だ!!」


その言葉にじゃんけんの結果の時よりも激しいく野太い悲しみの声がいくつか飛び交った。

30番、それは一番後ろ窓際から2列目。まさに今の俺の座っている席の隣。

前回なら隣だったのにと一瞬思ってしまったが、俺の隣は嫌だろうからと思いそんな思いもすぐに消えた。

そんな男子の心情など知るはずのない女子から、再び声が上がる。


「24番!陽菜の隣だ~」


そして、松村の右隣りが埋まったことで、これから引く男子のモチベーションが下がる。

そこからは別に何事もなくくじ引きが続き、ようやく俺の引く番になった。

引くと言っても箱の中には1枚しか残っていないのだが。

俺は残った1枚の寂しい俺のようなくじを取り出し、開いて書かれた数字を見る。


36


36って、今俺の座っている席のままじゃねぇか。何が席替えだ、席変わってねぇよ。

まぁ、窓際一番後ろを2度引けた俺の運の良さにはびっくりだ。

振られた俺への慰めですか神様さん。


「それじゃあ、1限が始まるまでに荷物の移動終わらせとけよ~」


そう言って先生は教室を後にして、クラスメイト達も移動を開始する。

同じ席のため移動をさせないでいい俺は、窓の外の朝日に目を移し黄昏ていた。

すると後ろから肩をトントンと叩かれ、多分隆貴だと思いながら振り向くとそこには、いつか見た整ってキラキラした顔がそこにあった。


「ま、松村さん!?」


俺はびっくりして咄嗟に声が出てしまった。

そうだった。席が変わっていないということは、この人と隣になるんだ。


「よろしくっ!田原くん」

「よろしく」


何とか声を絞り出す。

この前は、おめかしをした俺だったためまだ普通に会話で来ていたが今の俺は、ださださの陰キャのためこれが精いっぱいである。なぜか、この前のカフェの時よりも神々しさを増しているような気がした。

俺に挨拶してすぐに友達との会話に戻った松村さんと交代して、今度は隆貴が話しかけて来た。


「おい、輝。俺に感謝しろ。それとメシ奢りの話は無しな」

「何でだよ」

「何でって、当たり前だろ。あのクラスのマドンナ松村陽菜の隣の席かつ、窓際一番後ろの席ってラブコメでしか見ないぞ」

「はいはい。そんなお前の席はどこなんだよ」

「聞いて驚け見て笑え。一番前ど真ん中だ!」

「そりゃドンマイだ」


俺は笑みを浮かべて親指を立てると、隆貴はヘッドロックをかけて来たが、すぐに1限開始の鐘が鳴り何とか難を逃れた。


俺みたいな陰キャには眩し過ぎて、それから1日の授業はろくに隣なんて見ることは出来ずに、少し体を窓側に向けて授業を受けた。


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